保険金の不正請求疑惑など、そのやりすぎた仕事内容が連日、話題となっている「ビッグモーター」社。しかし、ちょっとやりすぎだなと思う仕事はほかの多くの会社にも存在していた!
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■不動産、運送、葬儀......。多くの業界でやりすぎ!
「ネジやドライバーを使ってタイヤをパンクさせていた」「ゴルフボールをぶつけて車体に傷をつけていた」「店舗前の街路樹が不自然に枯れていた」など、〝やりすぎた仕事内容〟が話題になっている中古車販売大手「ビッグモーター」。
さすがにここまでではなくても、ちょっとした〝やりすぎ〟はいろんな会社であるかもしれない。ということで、さまざまな業界の人に聞いてみた。
まずは、元大手不動産会社の営業マンだった、お笑いコンビ「ぺんとはうす」の世良光治(せら・みつはる)氏。
「ある不動産会社の営業マンは、違法性の高い営業をしていたようです。住宅ローンは購入者が住むために不動産投資ローンよりも金利が安く設定されているんです。
しかし、その会社の営業マンは、不動産投資として物件の購入を考えているお客さんに金利の安い住宅ローンを利用することを勧めていたとのこと。
当然、その物件を建てるのは、住宅ローンを勧めた会社です。これは金融機関との契約違反で不正になる可能性があるということで業界では、かなり話題になりました」
運送業界でも、やりすぎはあった。匿名を条件に話してくれた(以下、同)。
「うちの会社では、お客さんの食品製造工場で使う業務用の水(硬水)をタンクローリーのような大型のトラックで届けているんです。
しかし、その日、本社には軟水しかありませんでした。本社から離れている倉庫に硬水を取りに行っていると、お客さん指定の時間に届けられません。
そこで、同じ水だろうということで軟水を届けました。業務用の大量の水なのでトラックのタンクから、工場のタンクに直接入れてしまいます。だから、お客さんはわからないんです。
それに、そのトラックは硬水も軟水も両方運ぶし、毎回、きちんと洗うわけでもありません。硬水を運んだ後に洗わず軟水を運ぶこともあるから、少しは混ざっているんですよね。それで、その後も硬水の在庫がないときには軟水を届けるようになりました」
出来上がった商品に、味の違いはなかったのだろうか。
美容業界にも、ちょっとしたやりすぎはある。
「パーマやカラーリングが終わった後のシャンプーの最中に、お客さまに『髪が少し元気ないですね』『髪が傷んでいますね』と声をかけて、『髪にすごくいいトリートメントがあるので、おつけしてもいいですか?』と勧めることになっています。
お客さまはたいてい『じゃあ、お願いします』と言ってくださいます。もちろん、有料で1000円くらいなんですが、すごくいいトリートメントではなく、普通のトリートメントです」
次は介護業界だ。
「訪問ヘルパーをしていますが、認知症のひとり暮らしの高齢者のお宅に行くときに、約束の時間よりも遅く訪問して、時間よりも早く帰るヘルパーさんがいました。
利用者の娘さんが見守りカメラを設置したことで、来る時間や帰る時間がわかり、リビングでスマホをいじってサボっている姿が映ったことで手抜きが発覚しました」
葬儀業界からも、ちょっとやりすぎな報告が入っている。
「喪主さまのご依頼を受けて、お通夜や葬儀の後、お食事をしないご住職にはお弁当(1万~2万円くらい)をお渡しすることがあります。しかし、ご住職によっては『次がある』『食事の予定がある』とご辞退することも。そんな余った豪華弁当は、喪主さまに内緒で葬儀会社スタッフのごはんになります。
また、棺(ひつぎ)へのお花入れは祭壇の供花(きょうか)を使いますが、たくさんある場合、お花入れに使われないお花も出てきます。そんな残ったお花で使えそうなものは、次の葬儀にも使っています」
もしかしたら葬儀業界は、SDGsやエコの観点から考えると問題ないということになるのかもしれない......。
■続々、報告されるやりすぎの実態!
ここからは、アンケートでわかった各業界のやりすぎ事件簿を紹介しよう。
「ある物流倉庫で働いていたのですが、お客さまから返品された商品を見た目がキレイで、ニオイを嗅いで汗臭さや異臭がしないものは新品として出荷するという作業をしていました」(流通)
「配送関係の仕事をしているのですが『軽い荷物は放り投げてもいい』という暗黙の了解があります」(流通)
「動物病院で働いていますが、1件当たりの治療費のノルマがあるので、必要のない検査をしています。また、飼い主が見ていないところでのペットの扱いはひどいものだったりします」(動物医療)
「大した容体でもないのに、高い薬を出しています」(動物医療)
「国の補助金で買えるからという理由で、不要なものまで買っています」(非営利団体)
「印刷物などを発注するときは『何かあってはいけない』ということで、かなり多めに注文しますが、かなり無駄になっています」(非営利団体)
「社会貢献ということで、協力会社の用具や設備を無償で使うことを強要しています」(非営利団体)
「見積もりは、計算式に当てはめた簡単なもので、多めの金額が提示されるようになっています」(情報システム)
「納期に間に合いそうもない場合、『安全対策のため納期に間に合いません』という言い訳をしている」(情報システム)
「飲食店ですが、食材費節約のため、豆苗(とうみょう)は一度切って使ったら水栽培して3、4回収穫してから捨てている」(飲食)
「スーパーですが、1日くらいの日付の改竄(かいざん)はよくあります」(小売)
「会社でイベントを開催したとき、当たりくじが入っていないのに景品に『特賞・自転車1台』とあった。さすがにくじを引いているお客さんには申し訳ないと思いました」(教育)
「無料で床下を点検すると言い、持参したシロアリを床下に放して、シロアリ駆除の契約を迫る」(リフォーム会社)
〝やりすぎ〟はお客さんだけではなく、社員へのものもある。
「工場内の敷地を歩くときには決められたルートで歩き、道路を渡るときは他者からわかるような大きな身ぶりで指さし確認を3回行ない、『ヨシ!』と声を出してから渡る。時々、隠れてチェックされていて、違反すると朝礼で名前を挙げられ、反省文を提出させられる」(製造業)
「社長が飼っているリクガメの世話を社員がしないといけないことになっています」(製造業)
「社長が部下の作った資料を床に投げ捨てて、それを拾うためのスタッフがあらかじめ用意されています」(製造業)
今回紹介した〝やりすぎた仕事内容〟は、あくまでも一部の会社が行なっていることなので、くれぐれも業界不信にならないように。
なお、この特集は編集長からの「おまえは最近仕事してないじゃないか。ビッグモーターの記事をやれ! これはノルマだぞ」という〝ちょっとやりすぎ〟のような発言から生まれた企画であることを最後に報告させていただきます。
※記事の一部には、会社などが特定される恐れがあるため、内容を少し変えているものがあります。