観光需要が回復した今夏のお盆休みは、台風来襲予測もあり大渋滞が大きなニュースに(写真はイメージ) 観光需要が回復した今夏のお盆休みは、台風来襲予測もあり大渋滞が大きなニュースに(写真はイメージ)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「休み方改革」について。

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「バカ言うな」。以前、ある番組の企画で商店街の活性化を手伝った。どうすれば復活できるか。行政も力を入れており、人もお金もかけている。

しかし行政の職員に「日ごろ、この商店街を使っていますか」と問うと誰もが無言。そして「昼休みの時間は移動できないので、お弁当で済ませている」とのお答え。商店街活性化は"やってるアピール"だけ。活性化を担う職員が利用しないなら誰も利用しない。バカかと思った。

話を変えるようだが先日、全国知事会の「休み方改革プロジェクトチーム」(リーダーは大村秀章・愛知県知事)から日本経済団体連合会(以下、経団連)に「休み方改革」推進の要請があった。

これから観光やワーケーションがさらに広がる。しかし現状、会社員の休みは夏と年末に集中し閑散期と繁忙期の差が激しい。観光客を迎え入れる側としては、来訪はありがたいものの繁忙期のみ臨時社員を雇い入れるのも困難で、できれば稼働を平準化したい。

そこで日本を代表する経団連加盟企業に、時期を問わず個人が休暇を取りやすい風土を醸成してほしいわけだ。

各種調査を見ても、日本の会社員に与えられた祝休日の日数はけっして少なくない。むしろ先進国では多いくらいだ。

ただ、休みを一斉に取得するため混雑に巻き込まれる。前述の要請文ではさまざまなアイディアとともに先行事例が紹介された。自分の誕生日に休暇を取る「ナイスホリデー」(独り身だったら寂しくならないか)、妊活などの休職制度(「妊活のために休みます」と上司に相談できるのか)等々。

私見ではワーケーションといっても、かなり長い期間でないと仕事ができない。想像してほしいが、観光地に来る一日目は移動、二日目はそわそわして落ち着かず、やっと三日目くらいに仕事を始めるか......となるかどうか。

だから実現可能性は別として、今は限定的にしか認められていない旅費・宿泊費の大幅な損金算入が可能になれば一気にワーケーションは広がるだろう。会社員でも、ふるさと納税のように税が安くなるなら動機が生まれる。どこで働いても成果さえ出せばいい企業であれば自動的に労働の分散が進む。

ところで、月末にわざと管理職を休ませるコンサルティング会社がある。部下も休みを取りやすくなる......といった狙いではない。上司がいなくても仕事がまわるような仕組みづくりのためだ。月末に隠れて働く管理職がいたら人事査定がマイナスにすらなるという。働き方改革が「働かせ方改革」だったように、休み方改革も正確には「休ませ方改革」にほかならない。

冒頭で商店街改革を自分ごとにしない職員の例を挙げた。では「休み方改革プロジェクトチーム」はどうなのだろう。同チームは先行事例集を発表しているが、民間企業の話が多い。都道府県などの行政職員がどれだけ平時に長期休暇を取得しているか、公開したらどうだろうか。

また、私のまわりでは子どもたちと休みが合わないために結局、夏と年末にしか旅行できない家族が多い。この制約を行政の職員から破ってほしい。プライドより、「お前なんていなくてもいいから休めよ」と言われて認められる"ゆるさ"が必要だ。地方にはゆるキャラはいても、"ゆる職員"がいないのだから。

●坂口孝則(Takanori SAKAGUCHI) 
調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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