ゴミ清掃員としても働く芸人の滝沢秀一(マシンガンズ)が、ゴミを回収していて気が付いた事実、それが「金持ちの家から出るゴミは少ない」ということ。長年にわたりゴミを見続けた滝沢氏だからわかる、ゴミに隠された秘密を教えます! みんなでゴミを少なくして、金持ちになろう!
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ずいぶん前の話になりますが、僕の同僚に、見た目はイカついんですが虫が嫌いな清掃員がいたんです。虫を怖がる姿が楽しいからと、彼がゴミ捨て場のゴキブリやウジ虫に驚いている動画を送ってくる友だちがいました。
僕も最初の頃は驚いたものですが、夏はハエが卵を産んだりする季節なので虫がわきやすく、ゴミ回収をしているとよく見かけます。僕の知り合が、生ゴミが入っているゴミ袋が動いて見えたと。何かなと思ってよく見たら、ウジ虫だらけだったそうです(怖)。
中身が入ったままの猫缶をそのまま捨てる人がいるんですけど、これはめちゃくちゃ虫がわきます。缶の中でウネウネ動くウジ虫と目が合ってしまうことがよくあります。
こういった鳥肌が立つような「ゴミ怖い話」はいくつもあります。
暑い中ゴミ回収をしていると、幻を見ることがあります。上半身がなくて足だけで走っている人とか、おばあちゃんがいたので「おはようございます」と言ったら、もういなかったりとか。意識がもうろうとする熱中症の一歩手前の状況でしょう。冬の間はこういった幻を見たことはありません。
ある夏の日に、信じられないスピードで走り去るおばあちゃんがいて、「また幻でも見たのかな」と思ったんですが、近くにゴミが捨ててありました。「幻ではなくて実在したんだ」と思ってゴミを開いたら、そこに信じられない数のアダルトグッズが入っていました。これはこれで怖かったですよ。
■「ゴキブリの巣」に入る恐怖
あと怖いのは、クレーマーみたいな人がいることです。YouTubeが流行りはじめた頃によく動画を撮られました。パトカーとか消防車がコンビニに駐車してる!みたいな動画を撮る人がいますが、あれと同じパターンでしょう。
あるとき視線を感じて振り返ると誰もいない。それでも誰かと目が合ったような気がして、よく見ると家の新聞受けからこちらを覗いている人がいたんです。やっぱり人の視線って感じるんですよね。どこで誰に見られているか分からないって、本当に怖い部分があります。
また虫の話に戻りますが、「ゴキブリボックス」と呼ばれているゴミ集積場がありました。物置くらいの大きさのプレハブ的な集積場がありますよね? そこはちゃんと分別されていないところで、いつでも生ゴミがたまっていたんです。
奥まで行かないとゴミが回収できないので、恐る恐る扉を開けて入っていったら、天井からポトンとゴキブリが背中に落ちてきて大パニックを起こしました。そこら中が虫だらけで、ほぼ"ゴキブリの巣"なんですよ。本当に大変な仕事に就いたなと思いましたね。そこまで汚いと、ゴミを捨てる人も嫌だと思うんですけどね。
■ゴミ回収の同僚の「ゴミ怖い話」
最後にもう一つ、かつて一緒にゴミ回収をやっていた60歳くらいのおじさんの話です。
あるとき「滝沢君はフィリピン行くかい?」と聞かれたので「行ったことないです」と答えると、「あそこは大人のデズニーランドだ。俺はフィリピンに行くためにパチンコもお酒も我慢してお金を貯めて、今月末に久しぶりに行くんだよ」と。
フィリピンの町の地図を見せてくれて「前回はここに行ったから、今度はこっちに行くんだ」と、とても楽しそうでした。
その後、違う清掃員仲間に「○○さんって、フィリピンが大好きなんですね? すごく楽しそうで、話を聞いただけで元気が出ましたよ」と言ったら、「あぁ、まあな......」と、何だか歯切れが悪い。「どうしたんですか?」と問い詰めたら「あれ、全部嘘なんだよ」って。
「フィリピンに行く」というウソを、10年間言い続けてたんだそうです。「酒を我慢してるって言ってるけど昨日アルコールチェックで引っかかってたし、先日はパチンコで5万負けた!とみんなの前で大騒ぎしてた。たぶん、本当は一回もフィリピン行ったことないんだ」って。
なんでそんなウソを? メッチャ怖くないですか? ゴミと全く関係ない話になってしまいましたが(笑)、やっぱり人間が一番怖い、というよく聞く話を実感したエピソードでした。
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
公式X(旧Twitter)【@takizawa0914】
※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。