連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第14回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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雨の日の配達はとても危険。特に自転車での配達となると、事故をはじめとするさまざまなリスクがあるので、自転車を使っている私は基本的に雨が降ったら配達をしません。
ですが、雨の日は「外に出たくない」という方が増え、ウーバーイーツの利用が増えるタイミング。そこで運営側は、昼休みや夕食の時間帯に雨の予報が出ると、配達員にさまざまな誘惑を仕掛けてきます。
まずはこんな誘惑。
1回配達すると、通常の配達料に平均200円が上乗せされる臨時ボーナスがもらえるクエストを配達員に通達します。(雨の確率や降水量によって150円や100円上乗せというパターンも)。
たったの200円と思われる方も多いでしょうが、自転車配達員が1回の配達でもらえる金額は300円程度。そこに200円が上乗せされるので、雨の日はもらえるお金が最低でも1.7倍の500円となるのです。
続いての誘惑は配達料の誘惑。現在、配達でもらえる配送料は、需要と供給のバランスによって価格が変動するシステム(ダイナミックプライシング)が導入されています。つまり、注文件数が少ないのに待機している配達員が多ければ配達料は安くなる一方で、注文が多くて配達員が少なければ配達料はグンと上がります。
そのため、配達員用のアプリをオンにしていると、普段は300円の依頼ばかりなのに、雨の日には600円、700円の依頼がガンガン入ってきます。
前述の通り、これまでは雨の日の配達を避けてきましたが、配達の連載を始めたということで、雨の日に配達するとどうなるのかチャレンジしてみました。
6月下旬。昼間の猛暑のあと、夕立の予報が出ていた日のクエストは1回配達あたり150円のクエスト。対象となる時間は17時30分から22時まで。予報通りドバッと雨が降ったのですが、19時には小降りとなったので配達開始。
予報よりも早く雨のピークが去ったため配達員が増えたのか、配達料が300円の依頼ばかり。でも、「150円のボーナスがプラスされるので、雨予報が微妙にハズれた時のクエストボーナス狙いはアリかな」なんて思いながら運んでいると、20時過ぎに突然雨足が強くなりました。天気予報サイトの雨雲レーダーを見ると、降水量が赤で表示されているすごい雨雲が接近している模様。仕方ないので一旦家に戻ることにしました。
転ばないよう注意しながら自転車を漕いでいると、ポケットの中のスマホがブルっと震えました。そして配達員用アプリの画面を見ると、なんと配達料1500円の依頼。受け取り先の店と配達先を確認すると、ちょうど帰り道で移動のロスがない。
普段は1回300円ほどしかもらえないのに、配達料1500円とクエストボーナス150円の合計1650円の依頼。これは受注するしかありません。さらに店へ向かう途中でも追加の配達依頼が舞い込み、確認するとこちらも1200円の依頼。2配達で2700円+クエストボーナスの計3000円。受注の一択です。
てなわけで、最初の店へ海鮮丼を受け取りに行くと、途中でものすごい量の雨に降られました。体中ビショビショになりながら海鮮丼を受け取り、2軒目のスープカレーの店へ。濡れた時のために持ってきていたバスタオルが役に立たなくなるほど雨を浴びながらも商品を受け取り、なんとか注文先へ届け終えると、表示された配送料金は......。
チップ724円が加算されて3738円! ひとつ目の依頼を受注してから配達を終えるまでの時間はおよそ40分。雨が降っていない時なら500円から600円ぐらいの配達がチップ抜きでも3000円。これは危険を承知でもやってしまう人がいるかもと感じました。
7月後半にもやってみましたが、猛烈な雨の中を1kmほど走る配達で2500円(チップ500円)とか、300mで1000円といったものも。中にはタワーマンションの1階にあるスーパーマーケットから高層階の部屋まで届けるだけで1000円(チップ300円)などもありました。
雨の日はクエストボーナスやダイナミックプライシングだけでなく、チップもつきやすいことがわかり、「雨の日はチップの誘惑もあるな」と思いました。そして気になる稼いだ金額ですが、普段の4、5倍ほどありました。
ガッポリ稼げるチャンスをつかむのか、事故のリスクを回避するのか。雨の日に配達するかどうかの判断は難しいところですが、自転車などの二輪車の方は十分な対策を立ててから配達してください。
●渡辺雅史(わたなべ・まさし)
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。