ウーバーイーツ配達員にとってオイシイ!? 昼や夕方など注文の多い時間帯にたまに舞い込んでくる長距離配達ウーバーイーツ配達員にとってオイシイ!? 昼や夕方など注文の多い時間帯にたまに舞い込んでくる長距離配達

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第15回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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ウーバーイーツの商品は4つの方法で運ばれています。

(1)自転車
(2)徒歩
(3)バイク
(4)軽自動車

徒歩による配達は都心部の一部で始まりましたが、ほぼ見かけることはありません。おそらく時間と収入のバランスが悪いのでしょう。

軽自動車の場合は、巨大なリュックを車内に入れて運んでいるので、ウーバーイーツなのかどうかはわかりません。コストコのような店からリュックでは入り切らないような量の商品を運ぶこともあるそうなので、もしかしたら巨大なリュックよりもさらに大きな保温バッグを使っているかもしれません。雪の多い地方の冬の配達は軽自動車が主力となるそうです。

バイクは現在のウーバーイーツの主流で、都心部、郊外でもよく見かけます。営業車のナンバーをつけなくてもいい125cc未満のバイクを使う方が多いです。

私のような自転車の配達員は、かつてはたくさんいましたが現在は少数派。都心部にちょこちょこいる程度です。ただ、車両登録などの面倒な作業が不要で、簡単に配達の仕事を始められることから「次の仕事が決まるまでのつなぎを」という感覚でされる方が多いです。

そして、配達依頼はAIが割り振っているようですが、こんな感じになっていると思われます。

(1)自転車:配達距離2km未満のもの
(2)バイク:配達距離2Kmから20km程度
(3)軽自動車:配達距離関係なし、長いと30km以上も

徒歩の方には直接話をうかがったことがないのでわかりませんが、配達する時間を考えると配達距離は数百メートルといったところだと思います。

そんなわけで、私の自転車での配達は「配達依頼が届く→1km以内の場所にある店まで料理を取りに行く→注文先へ届ける」の合計距離がMAXで3kmほど、配達にかかる時間が20分から30分程度のものがほとんどなのですが、たまに長距離の依頼が舞い込んできます。

最近だと、ある早朝に舞い込んできた依頼。現在地から5km先の豊洲の吉野家で受け取ったのは牛丼の並1個。そして届け先はウチのすぐ近く。往復10km、50分ほど走って普段の配達料より高めの400円をいただいたのですが、ウチの近くにも吉野家があり、なんなら最初に受注した段階で近所の吉野家で牛丼を受け取れば10分もかからずに届けることができたのですが......。

おそらく、豊洲付近に配達員用のアプリをONにしているバイクの配達員がいて、その配達員が受注する前提で注文者に「豊洲の店で注文した方がいいですよ」みたいなオススメをしたものの、当てにしていた配達員に断られ、早朝のため他の配達員がおらず、私に依頼が来たのでしょう。その日は早朝の注文が少なかったので依頼はありがたかったのですが、往復10kmは正直おいしくないなと感じました。

こんな感じで、バイクの人が受ける前提で運営側が受注したであろう配達依頼が、昼食時や夕食時などの注文の多い時間帯にたまに舞い込んできます。

これまでで最長の距離を運んだ依頼も夕食時でした。おととしの7月に舞い込んできたのは、ふたつの店で料理を受け取り、別々のふたつの配達先に届けるという、配達員の間では「ダブル」と呼ばれる依頼。

依頼を受注すると最初に表示されたのは自転車で数分の日本橋のウナギ屋さん。すぐに店に着いて商品を受け取り、アプリの「受け取り完了」のボタンを押すと、次に出た受け取り先の店は3km先にある浅草のウナギ屋さん。

この日は土用の丑の日。日本橋や浅草にはウナギの名店も多いのでウーバーイーツで注文したのでしょう。15分ほど自転車をこいで店に着き、ウナ重を受け取って「受け取り完了」のボタンを押し、最初の配達先として出たのは7km先の半蔵門。

リュックの中にはすでに日本橋と浅草の店のウナ重が入っているので、遠すぎるからという理由で配達を中止するわけにはいきません。40分ほどかけて半蔵門にたどり着き、なんとかひとつ目のウナ重を渡しました。

そして「1件目の配達完了」のボタンを押すと出てきたのが、12km先の三軒茶屋。汗だくでたどり着いたのは、配達依頼から1時間40分後。注文された方からは「遅い」と言われ、BAD評価をいただきました。

合計22km走ってもらえたのはBAD評価と1500円。1配達300円が当たり前の今の感覚だと「1500円だったらおいしいかも」と思いますが、当時は「これだけ走ったのにたったの1500円かよ! 長距離配達はおいしくないな」と思いました。

ちなみに私が配達を始めたばかりの頃はバイクの配達員もおらず、配達員の数も少なく、ウーバーの運営側もノウハウがつかめていなかったようで、新宿で待機中に5km先の池袋の店で料理を受け取り、続いて6km先の中野の店で受け取ってから、10km先の巣鴨のマンション、さらに10km先の四ツ谷のマンションへ届けるといった、走行距離30km超えの依頼もありました。

でも昔はダイナミックプライシングではなく、距離に応じて配達料がもらえたので、辛かったですが配達に不満はなく、むしろ長距離配達はおいしい案件だなと思いました。

バイクの配達員に話を聞くと10km程度の依頼はよくあり、20kmを超えるものだと一度の配達で3000円を超えるものもあるそうです。ただ、配達料の高い依頼は届け先の周囲に店が少ないため、配達後に再び20km走って元の場所に戻らないと次の注文が舞い込んでこないパターンが多く、結果的に時間のロスとなるので、長距離すぎる依頼は配達員にとってはおいしい仕事ではないそうです。

●渡辺雅史(わたなべ・まさし) 
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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