ウーバーイーツ配達員が交通事故に遭ったら補償はどうなる? ウーバーイーツ配達員が交通事故に遭ったら補償はどうなる?

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第16回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

* * *

ウーバーイーツ配達員にとって一番大きなトラブル、それが交通事故です。

自転車、バイク、軽自動車、徒歩、どの手段の配達でも交通事故に遭う可能性がゼロということはありません。

今回はそんな、配達員が事故に遭ってしまった場合の話です。

配達中、配達員用のアプリにはこんな画面が表示されます。

ウーバーイーツ配達員のアプリ画面左下にある「盾」のようなアイコンが、事故に遭った際などに使う「安全ツール」 ウーバーイーツ配達員のアプリ画面左下にある「盾」のようなアイコンが、事故に遭った際などに使う「安全ツール」

画面左下にある「盾」のようなアイコンが、事故に遭った際などに使う「安全ツール」と呼ばれるもの。このアイコンをタッチすると、こんな画面が表示されます。

通報ツールが整備され、被害者として事故に遭った場合、警察をはじめ各所への連絡がスムーズに行なえる 通報ツールが整備され、被害者として事故に遭った場合、警察をはじめ各所への連絡がスムーズに行なえる

こちらの「110番緊急通報サポート」を押すと、110番につながるとともに、GPS 機能で現在の場所を先方に自動で通報。「乗車状況の証明」は、事故に遭った現場の住所や、その時配達中だったかどうかを証明してくれるものとなります。

現在はこのように通報ツールが整備されているので、被害者として事故に遭ってしまった場合は、警察への通報、運営への連絡、配達中の場合の注文者への連絡などをスムーズに行なうことができます。また、保険会社とも提携しているので自分の入院費や治療費などのサポートもあります。

車やバイクを使った仕事をしている方でしたら「当然」と思われる事故の際のサポートですが、配達員による組合が結成された2019年10月以前は、事故に遭った場合「配達中にトラブルがあった際に連絡するサポートセンターに電話を入れる」しか選択肢がありませんでした。

「サポートセンターに電話できるなら問題ないのでは?」と思われる方も多いでしょう。ですが、このサポートセンターは「商品が足りないと客から指摘があって困っている」「地図アプリが示している場所まで来たけど、それらしきマンションが見当たらない」「5km先まで商品を届けたのに、配達料が1km分になっている(当時は距離に応じて配達料が支払われていました)」などのトラブルも受け付けていた窓口。

多くの問い合わせが行くため、電話しても「ただ今大変混み合っております。しばらくお待ちください」という自動アナウンスが流れてから数分待たされるのは当たり前。その間、リュックの中にある商品はどうしたらいいのか? 警察への連絡は? 相手に対してどう対応したらいいのか? などについては電話がつながらないと始まらず、事故に遭った方は大変なプレッシャーだったそうです。

さらに、ウーバーイーツが日本でサービスを始めた2015年の夏から2019年10月までは運営側の用意する保険がなかったため、個人で保険に入っていない場合は運営、警察、病院、相手側との連絡や、金銭的な交渉をすべて自力で行わなければならず、大変なものでした。

2019年に保険が導入されてからも、しばらくは「交渉特約」のない保険だったため、運営側が対応するのは金の支払いだけ。相手方との交渉から示談に至るまでのすべてを配達員個人が行なうことになり、入院中にあれこれ動かなければならず、苦労した配達員は多かったようです。

また、保険導入当初、因果関係は不明ですが、保険を使った配達員のアカウントが停止(=ウーバーイーツの配達ができなくなる)されるという件が相次ぎ、事故に遭っても保険を使うことを躊躇する配達員もいたようです。

ですが年々、事故に遭った場合のサポートは良くなっています。現在は、相手がケガをしたり、相手の物を壊してしまった場合は上限1億円、自分がケガをした場合は最大50万円、死亡した場合は最大1000万円が保険によって補償されます。

ただ実際、どのような対応をしてくれるのかはよくわかりません。

以前、繁華街でイキった人の靴の先に自転車のタイヤがほんの少し接触。警察が来る騒ぎとなってしまった配達員は、この件を報告した日からアカウントが停止されたそうです。保険の適用うんぬんはわかりませんが、どんな状況であれ、配達員を働けない状況にするようです(ちなみに、この配達員は相手がこちらの電話に一切出ず、ただのイチャモンということが判明したことで配達員に復帰することができました)。

自動車やバイクに乗るときは自賠責保険に加入するのが義務となっていますし、全国32の都府県と岡山市では自転車保険が義務化されています。保険が義務化されるということは、万が一事故を起こしてしまうと金銭的な負担が大変になってしまいます。配達員は自転車、バイク、軽自動車に乗車する時間が多い分、事故に遭う可能性が高いので、もしもの際の保障は充実したものにしていただけると助かります。

●渡辺雅史(わたなべ・まさし) 
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

★『チャリンコ爆走配達日誌』は毎週木曜日更新!★