連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第17回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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ウーバーイーツの配達は配達員用のアプリをダウンロード、運営側に登録の申請や使用車両の登録をして、申請が通れば始めることができます。配達の場所はサービス提供エリア内であれば全国どこでもOK。ただ、配達は登録された車両に限られます。
この配達車両の登録はバイク、軽自動車で配達する場合に必要なもので、自転車配達員の場合は不要です。つまり自転車配達員は、スマホを持って各地へ出かけ、旅先でレンタサイクルを使えば、どこでも配達ができるのです。
「遊びに出かけた先でわざわざ配達しなくても」と思う方もいるでしょうが、旅先配達は普通に旅行へ出かけたら絶対行かないような住宅地や、地元の人が集まる飲食店を行き来するので、発見が多くて面白い。これまで私は金沢、名古屋、京都、大阪、福岡、那覇と、全国6ヵ所の街で配達をしました。
その中から今回は京都での旅先配達の話を。
配達を行なったのは今年2月。本業のライターとしての取材が京都であったので、それを終えた後、1泊延長してチャレンジしました。
宿泊先は四条大宮近くのビジネスホテル。ここに荷物を置き、持ってきた大きなリュックを背負い、レンタサイクルを借りて、17時にアプリのスイッチをオン。5分ほどして入った依頼は四条烏丸あたりにあるレストランから。四条通を東に進んでレストランへ向かうと、目的地の直前でこんな標識を発見。
自転車通行禁止の標識です。こういった標識がある場合でも歩道を通ればOKというところが多いのですが、周囲にはこんな注意がありました。
京都は観光客が多く、歩道には歩行者があふれ、道路も片側1車線で自転車が入ると渋滞が起こってしまうためなのか、古くからの中心街である四条烏丸、四条河原町付近の道路は朝8時頃から夜9時ぐらいまで自転車の通行を禁止しているとのこと。店まであと100mなのですが、通行を規制されているため行くことができません。
どうしようか迷っていたら、ウーバーのリュックを背負った別の配達員が通ったので聞いてみることにしました。
「通りを通行するのはNGだけど横断するのはOKなので、通行禁止の道路を横断して、通行できる1本裏の道に入って、裏通りから店の近くまで行き、通行禁止の通りから少し離れた場所に自転車を停めて徒歩で行けばいい」とアドバイスをいただきました。
ほとんどのエリアは早朝や深夜に規制が解除されるのですが、先斗町通や新京極通など一部の道では24時間通行禁止にしているところもあります。
自転車はバイクと違って一方通行の道も逆走できるので、京都のような一方通行の道が多い街は自転車の配達に適しているのではと思っていたのですが、この後も四条烏丸から四条河原町周辺の店に何度も受け取りに行き、店の手前で自転車を停めては歩いて店まで行くを繰り返したため、結構大変でした。
観光客が増える紅葉の季節。時間帯によっては鉄道やバスが満員でタクシーもなかなかこない。だったらレンタサイクルで巡ってみよう。そんなことを検討されている方は、自転車を借りる手続きをする前に、目的場所周辺の通行規制の有無の確認をオススメします。
さらに今年7月にも京都へ。前回の配達で四条通の規制のことも覚えたので、規制エリアから離れた西院あたりでチャレンジ。最高気温が38度を超える日だったので、日の落ちた19時過ぎにアプリをオンにして、最初に向かったのは西院駅近くの餃子の王将。
ニラレバ炒めの配達を終えるとすぐに次の注文。そして向かったのは餃子の王将の別店舗。ここで受け取った天津飯を渡し終えると、今度は四条大宮駅近くの餃子の王将に。この日は8回配達したのですが、うち6回が餃子の王将からの配達。しかも同じ店ではなく、すべて異なる店舗からの配達。餃子の王将は京都発祥で、京都に店がたくさんあるのは知っていましたが、まさかここまで地元から愛されている存在とは思いませんでした。
意外な交通規制や地元の人々の食事の傾向など、普通に観光していたら見えてこない地元の事情。そんなことを知れるのも、自転車配達員の私にとっては旅の魅力のひとつです。
●渡辺雅史(わたなべ・まさし)
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。