連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第18回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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今年の夏は6月から最高気温が30度を上回る日が出てきて、7月、8月は連日35度の猛暑日。9月も30度を上回る日が多かったですが、10月に入ってようやく昼間の配達がしやすい気温となりました。皆さんいかがお過ごしでしょうか。ウーバーイーツ自転車配達員の渡辺雅史です。
ラジオ番組のオープニングあいさつみたいな感じの書き出しとなってしまいましたが、この夏の配達は本当に大変でした。
ウーバーイーツ配達員のアプリはGPS機能を使います。私のスマホは古い機種だからなのか、GPSを使うとスマホが熱くなってしまいます。そのため今夏は熱暴走が多く、何度もスマホを再起動した結果、配達時間がいつも以上にかかってしまいBAD評価がつきました。
以前、本コラム内「配達はBAD評価との戦い! ウーバーイーツ配達員が一番おびえる瞬間は?」に掲載した画像では100%となっていた私の高評価率ですが、現在はこうなっております。
ここまで評価が落ちたのはふたつの理由があります。ひとつ目はスマホの熱暴走、そしてふたつ目が3件同時配達です。
私が配達員を始めた当初は、一度に運ぶ料理は2件分が最大でした。その場合は、ひとつの店に2件分の料理を取りに行き、ふたつの配達先へ届けるものしかありませんでした。
それが、2件配達でもふたつの店に料理を取りに行き、別々の2件の配達先へ届けるパターンも追加され、2023年3月から始まった3件同時配達で、3つの店に料理を取りに行き、3つの配達先へ届けるパターンが登場しました。
これにより、一度の配達で立ち寄る店や届ける場所が増えたため、料理を届けるまでの時間が大幅に増えました。そのことでBAD評価が増える側面もあると思います。ですが、それよりも私の評価が下がった要因は別のところにあると考えています。
なぜ評価が落ちたのか。それは、配達員がたくさん運んでいるのを店側が知らないことと、運ぶ料理の組み合わせがムチャクチャなことではないかと。
配達する店の中には料理が倒れないようにするため容器に紙製のホルダーをガッチリ噛ませ、さらに紙製の大きな手提げ袋に入れて配達員に手渡すところがあります。
私の使っているリュックは配達員用のバッグの中では最大のものなので、こういった形で渡された料理はひとつならリュックの中に余裕で入ります。ですが2件目、3件目で料理を受け取ると、どうしても紙袋を折り曲げなければならず、お渡しする際に袋に折り目がついてしまいます。
私がよく配達をしている東京の日本橋、銀座エリアにはオシャレな店がたくさんあり、中身の料理が問題なくても包装状態の見栄えが悪いと「プロ意識が足りない」との理由でBAD評価をつけられる方もいます。
現在もひとつの店に2件分の料理を取りに行くパターンの2件同時配達もあるので、その場合は店の方も「この配達員はふたつの料理を同時に運ぶ」と認識してくれているので、小さめの紙袋に変えてくれるなど対応してくれることもありますが、違う店に取りにいくパターンの配達でご配慮いただける店は、私の知る限りありません。
組み合わせで困るのは、熱いものと冷たいものパターンと、匂いがキツイものパターン。上の画像を見ていただけるとわかるように、以前、私は100%近い評価をいただいていました。ですが現在は93%まで落ちています。
この原因と思われるのが、上画面の評価グラフでガクッと落ちている、お盆の時期に運んだ3件同時配達です。
この時運んだものはオシャレな店のサラダ、カフェのソフトクリーム、熱々のカレーと焼きたてナンのセット。
カレーとソフトクリームは倒してしまうとアウトなものなので、バッグの底の部分に入れなければなりません。ですが、そのふたつを入れてしまうと大きな手提げ袋に入ったサラダはリュックの中に入りません。
冬場であれば、多少揺れても中身がこぼれないサラダを自転車のカゴに入れて運ぶこともできますが、30度を超える日にそれをやるのは危険です。
仕方ないので、手提げ袋を折ったり、ナンを置く位置を工夫して収納して運んだのですが、3件の配達が終わって数時間後、評価がガクッと下がっていました。
料理を受け取った順がソフトクリーム、カレー、サラダで、配達した順がサラダ、カレー、ソフトクリームだったので、ソフトクリームは溶け、カレーはソフトクリームの影響で少し冷め、サラダは紙袋が折れた上カレーの香りがついてしまったようです。
料理をいただく方からしたらBADをつけるのは当然のことと思いますが、このような配達の指示があった場合、どのように運んだらよいのでしょうか。運営側に一度うかがってみたいものです。
●渡辺雅史(わたなべ・まさし)
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。