コロナ禍も去り、多くの人々が旅行を楽しむようになってきた。しかし、肝心のホテル予約で思わぬトラブルに見舞われてしまうこともある。中には"詐欺"のような悪質なケースも。安心安全なホテルを見つけるにはどうすればよいのか? 

■高級別荘を予約したのに......

長かったコロナ禍が終わり、日本各地の行楽地は多くの観光客でごった返している。また、多くの国々で出入国の制限がほぼなくなり、円安、原油価格高騰によるサーチャージ高というマイナス要素はあるものの、長期休みに海外に出かける人も増えている。混み合う空港の様子は、コロナ禍以前を思わせる。

こうした旅行需要の回復を後押ししているのが、近年、より便利になったホテル予約サイトだ。かつて、国内の宿泊予約は『じゃらんnet』や『楽天トラベル』など国内の予約サイトが強く、外資系ホテル予約サイトは主に海外旅行で使うといったすみ分けがあった。

しかし、近年は外資系ホテル予約サイトに登録する日本の宿泊施設が急増。今では、そうした予約サイトの"国境"を感じることなく、利用している人も多い。

しかし、最近になって外資系ホテル予約サイトの利用者が遭遇した、いくつかのトラブルをご存じだろうか。

中でも特に大きく注目を集めたのが、千葉県での一件だ。今年8月、外資系ホテル予約サイトで、ある一棟貸しの別荘を予約した利用者が現地を訪ねたところ、その別荘があるとされた場所には一軒の空き家があるばかりで、途方に暮れたという事件だ。

実はこの別荘、ただ場所が違っただけではなく、まだ開業前だったという。さらに、この件で取材を受けた同施設のオーナーは、そもそもその予約サイトには施設を登録してはいなかったと語っている。

この報道からわかる事件の概要は、何者かが、実在する宿泊施設の写真を盗用した「架空のホテル」を外資系ホテル予約サイトに勝手に登録し、客はそれをもとに予約をしたという流れだ。

予約サイトを信じた利用者にとっては"詐欺"に遭ったようなものだ。いったいどうしてこういうことが起きてしまったのか。

■国内サイトと外資系サイトの違い

そもそも、ホテル予約サイトとはどういったビジネスモデルなのか? なぜ直接ホテルに予約を入れるより安くなるのか? 国内外の旅行事情に詳しい航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏はこう語る。

「ホテル予約サイトは、世界各地の宿泊施設を一覧表示し、立地や価格、設備などを比較できます。その利便性から、多くの利用者が集まります。

自社だけで十分な集客ができない宿泊施設は、ホテル予約サイトに集客してもらう見返りに手数料を払う仕組みとなっています(図表1)。

ホテル予約サイトでは、ほかの宿泊施設との価格競争になりますから、施設側は料金を安く設定せざるをえません。それが宿泊料金が安くなる理由のひとつです」

さらに、同じ施設でも、外資系のホテル予約サイトのほうが国内の予約サイトより宿泊料金が安くなるケースもあるという。

「外資系ホテル予約サイトでは、独自にセールを行ない、正規の料金から10%~20%値引きすることもあります。この値引きは宿泊施設との契約にあらかじめ入っているようなんですが、セールを行なうタイミングなどはホテル予約サイトが独自に判断しているようです」

航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗氏 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗氏

このように「お得に泊まれる」外資系ホテル予約サイトだが、その運営スタンスが、前述の事件の背景にあるのではないかと鳥海氏は推察する。つまり、登録される宿泊施設の審査について、国内のホテル予約サイトとは大きな違いがあるというのだ。

「日本を訪ねる海外の観光客が増えたことで、海外のホテル予約サイトは競うように日本の宿泊施設の登録を増やしています。

ただ、国内資本のホテル予約サイトは旅行業法など厳しいルールに縛られた日本の旅行会社が運営しているため、宿泊施設の登録については厳格です。

営業許可証のコピーの提出を求めた上、審査担当部門から電話でのヒアリングが行なわれ、登録の可否を判断するといわれています。そのため、オーナー以外の第三者が勝手に宿泊施設を登録するなんてことは考えられません。

一方、海外のホテル予約サイトはそうした審査の部分が甘く、オンラインで登録申請したら、細かい審査が行なわれることなく、そのまま通ってしまうことがあるようです。それが今回の"第三者による詐欺的登録"につながってしまったのでしょう」

■外資系サイトのその他のトラブル

「登録そのものが第三者によるものだった」とまではいかなくとも、取材を続けると、ほかにも外資系ホテル予約サイトでトラブルに遭ってしまったという声を集めることができた。

まずは東南アジアの都市を旅したAさんの場合。

「外資系ホテル予約サイトで中級ホテルを2泊予約したんですが、地図に示された場所には民家があるだけで、ホテルなんてなかったんです。

近所のコンドミニアムのガードマンに予約確認書のプリントアウトを見せて、片言の英語で聞いたら、彼がホテルに電話してくれて、地図が間違っていたことがわかりました。正しい場所まではタクシーで10分ほど離れていました。こんなミスがあるなんて信じられません」

また、人気のビーチリゾートで休日を過ごしたBさんは、ちょっと怒った様子でこう振り返る。

「繁華街に近い所は夜中までうるさくて眠れないかもと思い、表通りから100mくらい入った所にあるホテルを選んだんです。

ところが、宿泊当日のチェックインで『オーバーブッキングだから、系列のホテルに行ってくれ』と言われてしまって。その系列ホテルはずっと奥にあって、コンビニもレストランも近くにない。部屋はアップグレードされたのか広かったんですが、不便さだけはどうしようもなかったですね。

後で予約サイトの口コミを読んだら、こうしたオーバーブッキングを理由とした系列ホテルへの振り替えがしばしば発生しているようでした。あらためて考えたら、立地のいいホテルをおとりに予約を集め、系列ホテルに送り込むというのが、そのホテルの営業スタイルだったのかも......」

こうしたトラブルに対して、鳥海氏は「国内のホテル予約サイトではありえない」とあきれ顔だ。

「国内のホテル予約サイトは『間違いがなくて当たり前』ですから、地図の場所にホテルがないといったトラブルはまず起こりえません。

また、オーバーブッキングはある程度仕方のないことですが、それを口実に別のホテルに"送客"しているような事実が判明したら、日本のホテル予約サイトは取り扱いをやめる可能性もあるでしょうし、常態化していれば宿泊施設そのものも行政処分の対象となる可能性があります」

■トラブルを回避する方法

では、こうしたトラブルに遭わないためにはどうすればいいのか?

「まず強調しておきたいのが、外資系ホテル予約サイトだからといって、こんなトラブルがいつも起こっているわけではないということです。特に冒頭の『第三者が勝手に登録していた』なんてケースは、超レアでしょう。

ただ、地図の間違いとか、系列ホテルへの振り替えなどのトラブルはあってもおかしくないと思います。それらを避けるためには、やはり自衛が必要です。

まず予約が済んだら、宿泊施設に直接電話やメールで名前と宿泊予定日を連絡し、返事を待ちましょう。これで宿泊施設がきちんと存在すること、予約が確保されていることを確認できます。

次にGoogle マップのストリートビューで現地をチェックすると、地図に間違いがないか確認できます。ただ、新築の宿泊施設については、ストリートビューの更新のタイミングによっては別の建物だったり、空き地だったりすることもあります。右下に表示される『撮影日』を参考にするといいでしょう。

最後に口コミの確認です。予約している宿泊施設の口コミを過去にさかのぼって確認すれば、Bさんのような困った事態が起きるのかどうか察知できるでしょう。余裕があれば、自分が使ったホテル予約サイト以外の口コミも確認するといいと思います(図表2)」

ホテルや旅館などの宿泊施設についてはこうした対策でほぼ防げるという。一方で注意しなければならないのは、安くて便利な宿泊施設として国内外で急増している「民泊」だという。

「日本でも、民泊は旅館やホテルなどの宿泊施設に比べ、営業許可の取得が容易ですが、その実態がなかなかつかみにくいものです。外資系ホテル予約サイトなどを通じて民泊を予約するときは、いっそうの注意が必要でしょう」

■トラブル発生時の対処法とは

では、こうした対策を怠ったり、もしくは対策をとっていたにもかかわらず万一トラブルになってしまった場合、どうすればいいのだろう?

「まずはホテル予約サイトへの連絡です。ただ、外資系ホテル予約サイトは電話がつながりにくく、メールでは返信が来るまで時間がかかることが予想されます。地図どおりの場所にホテルがないといった場合は気持ちを切り替え、スマホですぐに別のホテルを予約して移動するほうがいいと思います。

その際、予約サイトにチャットによる連絡窓口があれば、『ホテルが見つからなかった』『予約が取れてなかった』といったトラブルの内容を書き込んでおくことで、トラブルの事実や証拠を残すことができて、のちのちの返金処理などで有利になります。

なお海外でも、宿泊施設などと連絡をとるための手段として『電話』は有用です。スマホでのデータ通信だけでなく、通話の方法も念のために確認しておいたほうがいいでしょう」

それでも不安がある......という人はどうすれば?

「やはり一番確実なのは、宿泊施設の公式サイトから予約することです。かつてはホテル予約サイトと宿泊施設公式サイトでは料金が大きく異なることがしばしばでしたが、最近はその差は縮小し、『公式サイトが最安値』をうたっている宿泊施設もあります。

また、公式サイトからの予約でも、独自のポイントなどの優遇もあります。『海外のホテル予約サイトは不安だから』という人以外も、いったんは宿泊施設公式サイトを訪ね、料金などを確認してみてはいかがでしょうか」

鳥海氏によると、ホテル予約サイトでのこうしたトラブルでは、国内、外資系問わず、クレジットカードで先払いした宿泊料金は返金されるという。ただ、ホテル予約サイトへの連絡や新たに宿泊施設を手配するための労力や費やす時間はゼロではないし、楽しみにしていた旅行の気分がぶち壊しになることは間違いない。

「外資系ホテル予約サイトでは『返金で終了』になると思います。一方、国内のホテル予約サイトでトラブルがあれば、『返金だけでなく損害賠償も』という話になるでしょう。ただ、そもそも国内のホテル予約サイトでそんな事態になってしまうことは、想像し難いですね」

外資系ホテルサイトを使うときのトラブル回避策は「一にも二にも、情報収集」。不安な人は、国内の予約サイト、あるいは施設の公式サイトを利用するようにしよう(図表3)。備えあれば憂いなし。冬の旅行に向けて、安心安全な旅を心がけたい。

●航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗(とりうみ・こうたろう) 
1978年生まれ、千葉県出身。食品会社勤務、城西国際大学観光学部助手を経て、2013年より帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師。航空会社のマーケティング戦略を主研究に、各航空会社への取材およびリサーチを精力的に行なう。経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオへの出演も多数