連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第20回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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ウーバーイーツは、利用者が食べたい料理などを店にオーダーするシステム。そのため「フードロス」とは無縁の存在のように見えます。ですが実際は、大量のフードロスを生み出す可能性のあるシステムとなっています。
以前、「ウーバーイーツと出前のシステムの違いとは?」でも書きましたが、ウーバーイーツは利用者が料理を注文した時点で店側が料理を作り始めます。
それなら、「出前でも注文を受けたら料理を作るので、違いはないのでは」と思うかもしれません。ところが、料理を作り始めるのと同じタイミングで周囲にいる配達員に配達依頼を出すのです。
配達員が近くにいて、その人が依頼を受ければ問題ないのですが、ウーバーイーツは配達員が自由に依頼を断ることができます。そのため、配達先があまりに遠い場合や、ゲリラ豪雨で急に大雨になってしまうと配達を断る人が増えます(私も配達を断ることがあります)。
すると別の人に依頼が行くのですが、断られるパターンが続くと今度は依頼を出すエリアが広がります(私にも5km以上先の店に受け取りに行く依頼が届いたことがあります)。ですが、遠くまで受け取りに行く配達員なんてほとんどいません。
それでも配達員を探し続けて、ある一定の時間が経過すると「マッチング不成立」となり、利用者には注文不成立の連絡が届きます。そして注文と同時に作り始めていた料理は廃棄され、店には作った料理の補償金がウーバーイーツから支払われます。
このように、ウーバーイーツの運営側が金銭を支払うことで、利用者、店、配達員ともに損は出ませんが、出前ではありえないフードロスが生まれる仕組みになっています。
なぜこのようなシステムになっているのかは、運営側に聞いても答えてくれないのでわかりませんが、おそらく配達員がマッチングしてから料理が届くまでの時間を短縮するためにやっているのでしょう。
私が配達員を始めた5年半前は、店に料理を取りに行ってもまだでき上がっていない状況が多々ありました。そのため料理を注文者に届けると「配達員が決まってからもこんなに時間がかかるの?」と言われることが多々ありました。
ですが今は、店のすぐ近くで配達依頼を受け、1分後に到着しても料理ができ上がっていることがほとんど。つい先日、個人経営の店に料理を取りに行ったところ「ウーバーの端末に『配達員を呼ぶ』のボタンがあるんだけど、料理ができ上がっていないのに間違えてボタンを押しちゃったんだよ。ごめんね。もう少し待って」と言われました。1分後に行っても料理ができ上がっているのはこういったシステムがあるからなのでしょう。とはいえ、依然、店で待機するパターンもあるので、すべての店で「配達員を呼ぶボタン」が導入されているわけではないと思われますが。
私がよく配達をしている東京の日本橋、銀座エリアは10~15階建てのマンションが多く、人がたくさん住んでいます。一方、このエリア在住のウーバーイーツ配達員は少ないようで、早朝や深夜にチェーン店に行くと、すでにでき上がっているものの、配達員が決まっていない料理がカウンターに大量に積まれている光景をよく見かけます。
そういった状況の店で料理を受け取ると、配達直後に次の依頼が届き、また同じ店へ行って、山積みされたものから何袋か持って行き、さらに配達終了後に依頼が......というループが4、5回繰り返されることがよくあります。そんな時は、私のおかげでフードロスが削減されるんだ、なんてうぬぼれながら自転車を漕いでいます。
最近はストローを紙製に変えて、「うちはSDGsに対する取り組みを積極的に行なっています」アピールをするところもありますが、SDGsの12番目の目標に「つくる責任 つかう責任」があり、その中に「2030年までに世界の食品ロスを半減する」との目標が掲げられています。
プラスチック製品を減らすことをアピールする店に大量に積まれている配達員が決まらない紙袋を見ると「SDGsってなんだろう」と考えてしまいます。
●渡辺雅史(わたなべ・まさし)
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。