渡辺雅史わたなべ・まさし
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第22回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
* * *
最近は日用品を配達することも多いウーバーイーツですが、メインで運ぶのは飲食店の料理。日持ちしないものをメインに扱っているので、他の配達業者と違って再配達というシステムがありません。
では、指定された配達先まで行って注文者がいない場合、配達員はどうするのか。そこで使用するのが「10分タイマー」です。
一軒家や1階のエントランスにインターホンのないマンションで「置き配指定」の場合は、配達先でインターホンを鳴らす必要がないので、商品をドア付近に置き、ドア周りに商品を置いた様子を撮影。注文者に画像と「商品を置きました」というコメントを添えたメールを送信して配達完了となります。
ですが、置き配指定でも1階のエントランスにインターホンが設置されていて注文者に建物内に入る扉を開錠してもらわなければならないマンションや、そもそも置き配指定ではない場合、インターホンを押しても応答がなかったら、注文者に「到着しました」というメールを送信します。
すると、配達員用の画面には「10分タイマーを起動しますか?」というコメントが表示されます。このコメントが表示されたバーを押してメッセージを注文者に送るとタイマーがスタートします。
タイマーが動き出すと、運営側から注文者に「配達員が到着したので連絡してください」といった内容の通知がされます。その通知を見て10分以内に配達員に連絡をすれば大丈夫なのですが、10分以内に連絡をしないと注文者が配送を放棄したという扱いになります。
注文者の都合による放棄のため、商品の代金や配達料は100%注文者の負担となり、配達員は所定の配達料がもらえます。そして、届けることができなかった料理は配達員が自由に処分してOKということになります。自由に処分できるので、私の場合は家に持ち帰って食べています。
前置きが長くなりましたが、今回はそんな「10分タイマー」でゲットできた食べ物の話を。
最近いただいたのは有名店の欧風カレー。ウーバーイーツのCMで「帰宅途中で注文を出せば、いいタイミングで料理が届きます」とPRしていた頃、下町エリアのマンションに届けた時のことです。
1階のエントランスのインターホンを鳴らしても注文者が出ず、メールをしても返事のないまま10分が経過。マッシュルームがゴロゴロ入ったおいしいものをいただきました。後で調べてみたところ、その日の夜、配達先周辺を走る地下鉄が人身事故で止まっていたとのこと。おそらくCMでやっていた感じで注文したものの、予定通り帰宅できなかったのでしょう。
そしてこちらは5年前の冬の話ですが、叙々苑の弁当を港区のタワーマンションに届けた時も注文者不在で、マンションの中に入れず10分タイマーをスタート。メールも電話も来ないまま5分が経過。6分、7分と過ぎると、だんだんと叙々苑弁当の口になってきます。配達員用アプリの画面を操作して注文品を確認すると「上カルビ弁当」とあります。9分を過ぎると「コンビニで白飯を追加するか?」なんてことを考えだします。そして9分40秒後、注文された方から「今取りに行きます」と電話が......。
タダでご飯が食べられるなんてうらやましい、と思う方もいるかもしれませんが、5500回以上配達して「10分タイマー」で料理をゲットできたのは7、8回。タダでご飯が食べられる確率は0.1%程度。
配達依頼が落ち着き、マクドナルドで遅めの昼食をとった直後に1個3000円のハンバーガーをいただいたり、逆にフライドチキンを大量ゲットしたものの配達依頼が止まらず、結局チキンを食べられたのは5時間後なんてこともあったので、10分タイマーで「おいしい思い」をした経験はほぼありません。
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。