配達中に遭遇した、思わず二度見、三度見してしまう変わった注意書き 配達中に遭遇した、思わず二度見、三度見してしまう変わった注意書き

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第29回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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ウーバーイーツ配達員用のアプリを立ち上げ、配達の依頼を受けると、商品の受け取り先の店と注文された方の情報を確認することができます。そこには、それぞれの住所や運ぶ商品の情報とともに、「お店側からの注意事項」「お客さまからの注意事項」が記されています。

この注意事項、書かれていることの多くは「店は2階です」とか「1階にコンビニが入っているマンションです」といった、住所だけではわからない場合の情報です。たまに「店の裏口から入ってください」「ペットがいるので置き配の際、インターホンを鳴らさないでください」など、受け渡しの際の注意もあります。

そんな注意事項の欄ですが、6000回以上配達をしていると、思わず二度見、三度見してしまうような内容が書かれていることもあります。そこで今回は、これまでの配達中に遭遇した、変わった注意書きをランキング形式で紹介します。

●変わった注意書きランキング第5位。
「店に入ったらひと言『ウーバーイーツです』と挨拶してください」

これは、東京・丸の内の地下街にある、健康志向の方からの注文が多い店のもの。「そんな当たり前のことを書かなくても」と思いつつ店に行き、店の方に挨拶すると私のスマホの注文画面を確認してから「商品はあちらの棚にあります。番号を確認して持っていってください」と、フードデリバリー配達員受け取り用の棚を案内してくれました。

帰り際、店の方に「わざわざあんな注意を書く必要はないのでは?」と聞くと「いろいろトラブルがあって」とのこと。どうやら、配達員のフリをした人に棚の商品を勝手に持っていかれる、なりすまし被害があったようです。

●変わった注意書きランキング第4位。
「受け取る際、私の注文画面を必ず見せます」

これは都内にあるホテルへ配達に行った際の注文者からの注意書き。ホテルの前で画面を確認し、料理を手渡すときに注意書きについて聞くと、「以前、ホテルの前で注文したものを受け取るために外に出ようとエレベーターに乗っていたら、『配達を完了しました』という通知が出たんです。その配達員がホテルの前にいた別の人に『ウーバーイーツですか?』と声をかけられ渡してしまったことがあって」とのこと。

以降、私は建物の外やオフィスなど、人がたくさんいる場所で渡す際は注文された方の画面を確認するようにしています。そのひと手間にイラッとされてBAD評価をつける方もいますが。

●変わった注意書きランキング第3位。
「卵黄を崩さないでください」

丼型の容器の真ん中に卵黄がのった料理が人気の店からの注意書き。私が利用している自転車は、自動車やバイクのようなサスペンションがないため、歩道と車道の間などちょっとした段差で縦に揺れてしまいます。縦揺れが起こると中央にのった卵黄が容器の縁にズレたり、衝撃で卵黄が破れて黄身が広がってしまいます。おそらく過去に注文者からクレームがあったので、このような注意書きを追加したと思われますが、だったら自分でセパレートする手間がかかりますが、牛丼チェーンがやっているように、別容器に生卵を入れて渡して欲しいな、なんて思ってしまいます。ま、そんなことは店の方にひと言も言わず、慎重に自転車を漕いで配達しましたが。

●変わった注意書きランキング第2位。
「絶対、置き配でお願いします!」

湾岸エリアのタワーマンションにお住まいの方からの注意書き。特に気に留めずにマンションへ行き警備室で入館手続きをすると、最後に「このマンションは置き配禁止なので、直接渡してください」と注意を受けました。ただ、注文者から「絶対、置き配」となっていたので、その旨を警備員さんに伝えると、こんな言葉が返ってきました。

「どうしても置き配を希望される場合は、部屋の前に荷物を置いて、その荷物が受け取られるまで、廊下の目立たない場所で見守ってください」

仕方ないので置き配をして、料理を部屋の中に入れるまで見守りました。

この配達では、置き配をしてから見守り終了まで20秒ほどでしたが、場合によっては数分かかる可能性もあります。こういうマンション内のルールは、マンションの自治会が決めるものなので、配達終了後、警備員さんに「『配達に支障が出ることがあるので、こんなムチャクチャなルールは変えて欲しい』と配達員から苦情があったことを自治会の方に伝えてください」と伝えました。

ただその後、つい先日も同じマンションに配達に行ったのですが、ルールは変わっていませんでした。

●変わった注意書きランキング第1位。
「タンクトップで来ないでください」

4年前の夏に遭遇した店からの注意書き。客に対してドレスコードを求める高級な店でも、裏口で受け渡したり、店員が外まで持ってくるなどの対応をしてくれるため、配達員の服装についてあれこれ言う店はありません。なのに、こんなことを注意するとは......。なんて考えながら店に行ったら、こぢんまりとしたどこにでもありそうな個人店。真夏だったため汗が目立つ服装の人を嫌ったのでしょうか。

他にもこの店は注意書きに「2件同時配達禁止です」と書くなど、店独自のルールをいろいろ決めていたようですが、配達員から運営に意見がいったのでしょう。この夏、久しぶりにこの店に料理を受け取りに行ったら、注意書きに長々と書かれていた文言がすべて削除されていました。

配達員を6年もやっているといろんなことに遭遇しますが、今も淡々と都内で配達を続けております。

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渡辺雅史

渡辺雅史わたなべ・まさし

フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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