今年もいろんなところでお騒がせしてしまい、本当に申し訳ございません 今年もいろんなところでお騒がせしてしまい、本当に申し訳ございません

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第30回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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今年最後の掲載ということで、今回は2023年にフードデリバリー界隈で起こった騒動について振り返りたいと思います。

一番インパクトがあったのは、配達中に崩れてしまったすしのネタを素手で乗せ直している動画の件。Xにアップされた動画はまたたく間に拡散され、ニュース番組でも報じられました。

動画が撮影されたのは、最高気温が30度を超えていた9月中旬。配達員はバイクで運んでいたようですが、汗をかく状況の中、到着後に手も洗わずに、倒れてしまったすしネタを素手で乗せ直すという行為は、同じくフードデリバリー配達員をやっている私でも申し開きはできません。

回転ずしチェーンの多くは見栄えをよくするためなのか、滑りやすいプラスチックの容器に間隔をあけて握りずしを盛り付けており、ほんの少しでも容器がななめになると、すしが寄ってしまう構造になっています。また、握りずしはワサビを間に挟んで握ることで酢飯とネタが一体化しますが、回転系のすし店はロボットが握った酢飯にワサビを入れずにネタを乗せていくので、酢飯からネタが落ちやすくなっています。これは、回転ずしチェーンがフードデリバリーで配達を始めた頃から配達員の間で話題となり、容器や盛り付けの改善を求める声も挙がっていましたが、現在も改善されていません。

芸能人のSNSの投稿も話題となりました。東ちづるさんは7月18日にXで「30~40分でお届けのはずだったデリバリーが、80分以上かかって到着」などとツイートしました。また、8月10日にはお笑いコンビ・ダブルヒガシの東さんがXに「Uberでお寿司とイカフライ頼んだら、配達員にお寿司全部パクられた」とポストしました。

東ちづるさんの件に関しては、時間通りにこない配達員が悪いようにみえます。ただ私が、これまでに注文された方に聞いた話や配達経験から推測すると、どうやら配達員が完全に決まってない段階から、到着予定時間が注文者用のアプリに表示されるようなのです。しかも、配達員の手元に依頼が届くのが到着予定時間の少し前なんてこともあるようです。さらに、店へ料理を受け取りに行っている途中で追加の配達依頼が届き、これにより遠回りをさせられることもあります。

こういった状況にも関わらず、配達員用のアプリには「この注文の配達予定時刻は何時何分です」とは表示されません。なので配達員は、安全最優先で別の注文もこなしながら時間をかけて商品を届けたと考えられます。私も同じような状況でBAD評価を受けました。

ダブルヒガシの東さんの場合は、投稿を見る限り配達員に原因があるのではと思われます。配達員がすしを食べたくてパクったのではなく、配達中にぐちゃぐちゃになって渡せない感じだったのかもしれません。

気になったのは、この後に「サポートセンターより、配達員の人をメチャクチャ怒ってくれるらしい」と投稿したこと。私も以前、配達先で揉めて運営にそのことを報告したら、サポートから謝罪の連絡と注文者への指導を行なう旨のメッセージが届きました。

その後いろいろあって、注文者と裁判をしたのですが、注文者からも「ひどい対応をした配達員を指導します」という旨が書かれたサポートからのメールが証拠として提出されました。私はサポートから一切指導されなかったので、運営側はおそらく両方に同じようなメールを送ったのでしょう。なので、ダブルヒガシの東さんの配達を担当した人は怒られていない可能性があります。

他にも、女性客にラブレターを送った配達員、軽トラックに追い越されたのにブチ切れて運転手を引きずり出して暴行を加えて逮捕された配達員、自転車通行禁止のトンネルに入っていく配達員などなど、ネットで検索すると配達員の話題がたくさん出てきましたが、どの話もマイナスのイメージを持たれるものばかり。配達員が社会に貢献した話や、ほっこりしたエピソードは出てきませんでした。

今年もいろんなところでお騒がせしてしまい、本当に申し訳ございません。

★『チャリンコ爆走配達日誌』は毎週木曜日更新!★

渡辺雅史

渡辺雅史わたなべ・まさし

フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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