能登半島地震、日航機炎上と激震が走る2024年初頭。ヤクザ業界でも射殺事件が発生し、キナ臭いムードが高まっている。しかも、ヒットマンは劣勢に立たされていた組織の大幹部だったことで、反転攻勢に入るのではないかという憶測も飛び交う。
■事件前から離反子分に殺害予告
事件は1月14日午後4時ごろ、愛媛県四国中央市のショッピングモール内のスターバックスで起きた。市内の職業不詳の男性(49)が屋外のテラス席で、一緒に入店した男に正面から胸に複数回銃撃を受け、病院に運ばれたのちに死亡が確認された。
撃った男は現場を逃走。愛媛県警は翌15日、現場に残された指紋や防犯カメラ映像から、六代目山口組と分裂抗争を繰り広げている指定暴力団・池田組のナンバー2である前谷祐一郎若頭(62)と断定し、公開手配をかけた。全国紙社会部デスクが解説する。
「被害者の男性は、前谷若頭が会長を務める功龍會の元幹部で、いわば"親子"関係でした。しかし、最近になって六代目山口組側の組織に移籍したそうです。前谷若頭は激怒して殺害予告のような発言を男性にしていたという情報もあります。
愛媛県警は発生当初から、前谷若頭の犯行とみて捜査し、商業施設での発砲ということを問題視して異例のスピード手配となりました。県警は、分裂抗争に伴う移籍トラブルが原因とみています」
■自らも被弾の過去
前谷若頭が所属する池田組は、2015年の山口組分裂を主導し、神戸山口組の立ち上げに関わった組織だ。そのため、六代目側からは激しい怒りを買い、16年には当時の若頭が六代目側のヒットマンによって射殺された。そして2020年には今回の事件を起こした前谷若頭も、銃弾を受けて全治三か月の重傷を負っている。
「前谷若頭が銃弾を受けたのは、2016年の事件の被害者の4年目の法要の直後だった。池田組本部近くの駐車場にいたところを襲われたのだが、銃弾を食らってもヒットマンを追いかける様子を撮影した防犯カメラ映像を池田組関係者が流出させた。怪我の功名で、勇猛なヤクザというイメージ戦略に成功した」(暴力団関係者のA氏)
しかし、神戸側の井上邦雄組長はこの一件に対する報復をためらった。それに不満と募らせた池田孝志組長率いる池田組は2020年7月に神戸山口組を脱退し、一本独鈷(いっぽんどっこ)として再スタートを切った。
だが、その後も六代目側に標的にされ続け、2022年には理容室で散髪していた池田組長が、サバイバルナイフを振りかざした組員に襲われそうになるなど、厳しい風下に置かれていた。
「岡山が地盤の池田組は豊富な資金力を誇る一方で、もともとは『金持ち喧嘩せず』を体現したかのように分裂抗争からは一歩引いた姿勢だった。六代目側は、そんな穏健派を標的としたわけだ。しかし、今回の事件では前谷若頭が自らヒットマンを買って出て、離反した元子分を殺害したことで、ヤクザとしての矜持を保ったとも言えます」(前出デスク)
■神戸派による反撃の狼煙か?
一本独鈷を選んだ池田組だが、時期を違えて神戸山口組から離脱した絆會や宅見組とは友好関係を築いている。また、池田組長と井上組長の関係も修復に向かい、2022年には池田組と神戸側が親戚縁組をしたとも報じられている。
「櫛の歯が欠けるように傘下組織が脱退した神戸山口組だが、池田組長が核となってかつての仲間たちと連合関係を築いている状況だね。
例えば、昨年に神戸で六代目側の組員が射殺された事件では、実行犯に絆會の組員の名前も取りざたされているけれど、犯行や逃走に関して池田組が金銭支援しているのではないかという見方も出ている。池田組長は『死ぬまでヤクザを貫き通す』と日ごろから公言しているようで、六代目側に屈する気はさらさらない。今後も、陰に陽に六代目側への攻撃を続けるだろうし、当然、報復を受けることにもなるだろう」(前出A氏)
四国で上がった狼煙(のろし)が、全国に広がっていくことになるのだろうか。今後の動向が注視される。