直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
1月1日に発生した能登半島地震。防衛省は陸海空の自衛隊を派遣して、現在も復旧・支援活動は続いている。メディアの報道だけではわからない、自衛隊の活躍を専門家に解説してもらいます!
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1月1日に発生した能登半島地震。被災現場には陸海空7000人以上の隊員が派遣されている。その支援活動の内容などを、東日本大震災に医療部隊隊長として派遣された経験のある元陸上自衛隊幹部の照井資規さんに解説してもらいます。
――災害派遣された自衛隊が、まず行なうことは?
照井 大規模災害の初動では人命の救助・救護、通信ネットワークの構築。そしてヘリコプターの離着陸と燃料補給の拠点となる支援地域の選定・構築を行ないます。今回、これまでの災害と異なるのは、支援地域が構築できないことです。
――支援地域が構築できない理由は?
照井 支援地域には数㎞範囲の平坦な土地が必要です。能登半島は起伏の激しい山岳地帯でこれに適した地形がなく、大規模なヘリ運用を行なえません。このような地形はヘリの離着陸にも適さず、孤立地域への支援活動は陸自隊員による徒歩移動に頼ることになっています。
徒歩での支援活動に従事する隊員はレンジャーや空挺資格の所有者が多く、ロープを活用した山岳地帯の移動を熟知しています。現状では最も確実かつ安全な物資輸送です。
――SNSでは「パラシュートでの物資投下は?」という声がありますが、これは?
照井 支援地域が構築できない場所ではパラシュートでの物資投下も行なえません。住宅があり投下による二次被害も懸念され、物資回収の隊員も確保する必要があります。回収する隊員をそろえるなら、徒歩で孤立地域へ物資輸送したほうが合理的なのです。
ただ、アメリカ軍は特殊部隊用として、リモート操作である程度の投下位置を指定できるパラシュートが採用されています。これなら能登半島のような地理的な条件でも物資投下が可能です。こういった装備品も災害時には生かせるでしょう。
――今後、アメリカ軍が災害派遣に本格参加した場合、どんなメリットがありますか?
照井 東日本大震災ではアメリカ海軍が空母ロナルド・レーガンを中心とする空母打撃群を展開したことにより、航空自衛隊はロシアや中国軍機に対する哨戒・スクランブル任務を継続しつつ、多くの航空機を投入できました。航空機の安定した運用にはアメリカ軍の本格参加が不可欠です。
――自衛隊の災害派遣報道で食事や風呂を提供している報道をよく見ます。これは陸上自衛隊の任務なのですか?
照井 実は海自や空自も給食や入浴支援を行なっています。自衛隊は飲料水を確保する能力が高く、このような支援活動を行ないやすいのが特徴。空自にはキッチンカーやトイレ車両もあり、それらも派遣されています。
東日本大震災からは大規模災害時に指揮系統を一元化した「災統合任務部隊」が編成されています。能登半島地震でも災統合任務部隊が編成されました。
Xで【#災統合任務部隊】のハッシュタグで検索すれば、派遣されている部隊や駐屯地が発信する、隊員たちの活動内容が確認できます。ぜひ、温かいコメントを送ってあげてください。
●元陸上自衛隊幹部 照井資規
陸上自衛隊の衛生学校の研究員を務め、東日本大震災では医療部隊隊長として岩手県久慈市に展開。震災前から岩手県災害拠点病院DMATと自衛隊の共同訓練を行ない、民間と軍事における救護・救命・治療・後送に精通する。
写真/防衛省・自衛隊(災害対策)【@ModJapan_saigai】、陸上自衛隊【@JGSDF_pr】、防衛省 海上自衛隊【@JMSDF_PAO】、防衛省 航空自衛隊【@JASDF_PAO】、陸上自衛隊 久居駐屯地【@gsdf_ma_hisai】、舞鶴地方総監部【@JMSDF_mrh】、航空自衛隊 小松基地【@JasdfKomatsu】、陸上自衛隊第10師団【@JGSDF_MA_10D】、陸上自衛隊大久保駐屯地【@JGSDF_MA_OOKUBO】、海上自衛隊 護衛艦隊【@JMSDF_EF】
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。