各都府県の20歳~34歳の未婚女性の数を1としたときの、未婚男性の数を表したもの。全国平均と比べて東北、北関東、甲信越地方の各県で未婚男性の割合がかなり多いことがわかる 各都府県の20歳~34歳の未婚女性の数を1としたときの、未婚男性の数を表したもの。全国平均と比べて東北、北関東、甲信越地方の各県で未婚男性の割合がかなり多いことがわかる
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「女性の東京圏流出」について。

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西日本ほど男性がコンドームを買わない。かつて私がコンドームのPOSデータを調査した結果だが、その理由がわからなかった。飲み会で話すと「沖縄なんてゴム無しがスタンダードだよお」と教えてくれた人がいたほどだ。

なぜ日本では西に行くほどゴムを着けたがらないのか。読者でご存じの方がいたら週プレ編集部宛で教えてほしい。私の仮説は「西に行くほど暑いから、一枚でも脱ぎたいからでは」というものだ。

私は九州の佐賀県出身で長崎や福岡、熊本にも知人がいる。だから九州男児をディスるのは自己卑下として許してほしいが、男尊女卑的な空気感はよくわかる。私が女性だったら、父親世代の九州男児とは絶対に結婚しないね。だって、家のことは何もしないんだもん。

ところで、私が肌感覚として有している九州の亭主関白ぶりについて自省を促す機会があった。昨年12月に出たきわめて面白い資料、内閣府『地域の経済2023』を読んだためだ。同資料が主題としない、あるポイントが世間から注目された。

「東北、北関東、甲信越の男性は結婚できずに余っている(大意)」と述べた箇所だ。ひでえ(笑)。しかし印象論ではなく定量的だ。同資料の指摘を読み私はハッとした。同地域からは15~29歳までの女性が、同世代の男性よりも東京圏に流出しているのだ。

いま40代の私は佐賀県から大阪大学に進んだ。しかし同級生の女性は、京都大学か東京大学に合格できそうな人でも、両親の理解を得られなかったり本人の希望だったりで九州大学に進んでいた。それが現在の東北、北関東、甲信越では、保守的な男性を差し置いて女性が東京圏に進んでいるのか! 清々(すがすが)しい! 九州はまだまだなのかも。

なお未婚女性の数を1としたとき、東北、北関東、甲信越の各県における未婚男性の数は1.16~1.35と高い。つまり女性に対して結婚できていない男性は相対的に多くいる。それに対して東京では1.04ていどだ。先に私が言及した福岡など、未婚男性は1.01しかいない。

ご丁寧にも同資料では、都市部へ進出した女性らにアンケートを取り、地元では「お茶くみは女性」「住民のつながりが強い」「世間体を大事にしていた」などの回答結果を紹介している。そんな地元から逃げたと。福岡も佐賀と同じく亭主関白度は高いと思うけどなあ、ぶつぶつ。

そこでコンドームに続き私の仮説を書いておく。東北、北関東、甲信越からの女性流出が激しく、未婚男性が多い理由について、ここまでセンセーショナルに文化的背景を強調してきたが、真面目に言えば、おそらく女性の進学先や就職先の問題が大きいだろう。地元では女性にとって魅力的な大学や専門学校が少なく、かつ働き口もない。

細かい年齢分布で20~24歳の女性がもっとも地元を離れているのを見ると、そのうち深刻なのは就職先だろう。男性であれば働き口が見つかっても、女性は都心に出ていくしかない。だから経済の好調な福岡は問題がない。

1970年代の太田裕美さんの名曲『木綿のハンカチーフ』(*)は都会に出ていく彼氏に「都会の絵の具に染まらないで」と歌ったが、現在は男女が逆転している。いまは「地元で就職したぼくを許して」と歌うべきだ。 *作詞/松本隆、作曲/筒美京平

坂口孝則

坂口孝則Takanori SAKAGUCHI

調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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