ウーバーイーツの配達中、注文者や店と揉めることがたまにあります ウーバーイーツの配達中、注文者や店と揉めることがたまにあります

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第34回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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どんな仕事でも絶対発生するのがトラブル。6500回以上配達している私にも過去何回かトラブルがありましたが、今回は注文者や店と揉めた話を書こうと思います。

以前、よく揉めていたのは「箸やスプーンが入っていない」というトラブル。現在の仕様がどのような感じなのかわかりませんが、ある時期から注文者用のアプリに「箸やスプーンをつける、つけない」を選択できる機能が実装されました。

おそらくSDGsへの取り組みなのでしょう。「テイクアウト用容器の消費拡大につながる商売をしているのに、割り箸やプラスチック製のスプーンの消費量を減らす取り組みをしても......」なんて個人的に感じていたのですが、それはさておき、この機能が実装された際、初期設定の状態は「箸やスプーンをつけない」となっていました。そのため、今までウーバーイーツを利用していた人がアプリのアップデート後にこれまでと同じ感覚で注文すると、箸やスプーンなしで届けられることになり、トラブルが多発しました。

特にオフィスへの注文が多いお昼休みの配達でのトラブルが多く、私も配達が終わって自転車で次の店へ料理を取りに行こうとしたら、注文者が追いかけてきて「てめえ、このカレー、手で食えって言うのか! スプーン取ってこい!」と怒鳴りつけられたことが何度かありました。

初めて怒鳴られたときは原因がわからず、次の配達もあるので謝ってその場を収めました。ですが、原因がわかってからは事情を説明し、設定を変えていただくようにお願いしています。それでも怒りが収まらない場合は、運営側にクレームを入れて欲しいとお願いしています。にもかかわらず「手で食えって言うのか?」と食い下がってきた方には、こちらも頭に血が上ってカチンときますし、どのみちBAD評価されるのだと思い「そうされたらいいんじゃないですか」と答えたこともあります。

後日、運営側から「配達員から暴言を受けたとお客様より連絡を受けました。状況によってはアカウント停止(=クビ)にします」といった趣旨のメールが届きました。直後に事情を綴って返信。その後もアカウント停止されることはありませんでした。

一方、店の人と揉めたのは、調理時間のトラブル。

某チェーン店へ注文品を受け取りに行ったところ、忙しい時間帯だったようで、まだ料理が出来上がっていないようでした。そこで、店の前で待つことにしました。15分ほど経ってもまだ調理が終わらないので変だなと思ったら、私よりも後に店に来た、店内で食事をする客に料理を出していました。

ドリンクだけを注文した方だったら順番が早くなっても仕方ないことですが、その方が注文したのは私と同じようなセットメニュー。しかも店に入ってから注文をしていました。調理場の方を見ると、私が運ぶ料理を作る気配はなく、次々と店に入ってくる客が注文した料理を作っています。

こういう「BAD評価を受けるのは店ではなく配達員だから、後回しにしてOK」と考える店はごくごくたまにありました(最近は見かけませんが)。そんな店の場合、クレームを入れても無視されることが多いので、注文者に直接電話をする機能を使って状況を説明。そのまま店の責任者に「なんで遅くなっているのか理由を説明してください」と私のスマホを渡して説明させると、15分待っても作り出す気配がなかった料理が5分もかからずに出来上がりました。

最大級に揉めたのが、配達時間に関するトラブル。

とある会社へ配達した時のこと。注文を受けたのは12時30分頃。指示された店までは自転車で10分ほど。スムーズに料理を受け取り、配達員用アプリの「受け取り完了」のボタンを押すと、表示された配達先は自転車で15分ほどの高層ビル。初めて行く建物でした。

高層ビルは入館手続きに時間がかかるところがほとんどです。しかも初めて行く場所の場合、その手続きをしなければならない警備員さんのいる防災センターを探すのも大変なところが多いので、ビルの前に到着してから指定の受け渡し場所にたどり着くまで15分ほどかかることもあります。

そのため、注文される方の中には防災センターの場所や入館手続きの方法を丁寧に記してくださる方もいるのですが、この時注文された方の注意書きの欄には何も記されていません。

「防災センターの場所をスムーズに見つけられなかったら受け渡しは13時を超えるな」なんて思いながら向かっていると、スマホに注文された方からのメッセージが。自転車を漕ぎながら返信するわけにはいかないので、次の信号で止まったタイミングで返信しようと思ったら、続々とメッセージが届きます。注文者からのメッセージは着信すると自動で音声を読み上げる仕様になっているため、スマホの画面を見なくても内容が伝わってきます。

「到着はいつぐらいになりそうでしょうか」
「私の昼休みは12時50分に終わります」
「一度ご連絡いただけますでしょうか」

矢継ぎ早にメッセージが届くので自転車を一度停めて、私が配達依頼を受けた時間やウーバーイーツの配達のシステム、おそらく受け渡しは13時を超えると思われる、といった内容を返信すると......。

「私は配達のシステムがわからないのですが、配達員さんの位置を確認する画面を確認ところ、この数分間ずっと同じ場所におられるようです。私の昼休みは12時50分に終わります」

先方からのメッセージを見て「『早く来い!』みたいな威圧的な言葉を使わないで相手にプレッシャーをかけるなんて、パワハラのプロだなあ」なんて思いながら、「自転車を漕ぎながらのスマホ操作は法令に違反しますので、ご連絡差し上げる際は自転車を停めております」と返すと、先方からのメッセージは来なくなりました。

そんなメッセージのやり取りもあったため、到着したのは13時10分。配達先で商品を受け取りに来たのは注文された方の部下のようでした。

その日の夕方、配達員を評価する画面を確認するとBAD評価がひとつ増えておりました。

このような感じで、普通に配達していてもトラブルは起こるもの。配達員用のアプリは配達が完了すると注文者とのメッセージのやり取りが消えてしまうので、最近はひどいメッセージがきたらすぐにスクリーンショットを撮るようにしています。

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渡辺雅史

渡辺雅史わたなべ・まさし

フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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