長野県警察本部が作成した手配書。これだけ面が割れながらも、逃亡の最中にさらなる犯行を重ねていたとみられている 長野県警察本部が作成した手配書。これだけ面が割れながらも、逃亡の最中にさらなる犯行を重ねていたとみられている
配下の組長に対する殺人未遂容疑で指名手配されていた絆會若頭・金澤成樹(本名・金成行)容疑者(55)が、3年余りの逃亡の末に逮捕された。そして、週プレNEWSが過去に報じた通り、逃亡生活の道中で新たな殺人事件を起こしたとして、逮捕状が出る事態にまで発展している。

■未明の急襲劇

凍てつく寒気に包まれた夜明け前の東北の住宅地。閃光弾の乾いた発射音とともに捜査員がアパートを急襲した――。2月1日午前4時29分、警察は殺人未遂容疑で行方を追っていた金澤容疑者を仙台市内で逮捕した。金澤容疑者は、2020年9月に長野県内で、元配下の組長を銃撃して重傷を負わせたとして、直後に殺人未遂容疑で公開指名手配となっていた。全国紙社会部デスクが語る。

「絆會のナンバー2である金澤容疑者は、かつての子分だった組長が抗争相手の六代目山口組に移籍するのを翻意させるために説得を試みましたがかなわず、激怒して組長に向けて発砲し、逃走しました。

潜行後も拳銃を携帯している恐れがあったので、警察は今回、未明の突入という強硬手段に打って出たようです。金澤容疑者は一人でいて、抵抗せずに取り押さえられましたが、その後の捜索で拳銃一丁が発見されました」

■逃亡中も殺人関与

そして、金澤容疑者の身柄確保を待ち構えていたように、逮捕直後に別の殺人容疑での逮捕状が出た。

「2022年1月に、水戸市で六代目側組織の幹部が事務所内で頭部を撃たれて射殺された事件で、金澤容疑者が関与したとして、茨城県警が殺人容疑で逮捕状を取りました。事件直前に実行犯とみられる男が洋菓子店でケーキを購入した際に応対した店員の証言や、事件後に埼玉県で犯行に使用された乗用車が発見されていて、その走行経路などをもとに金澤容疑者の犯行だと断定しました。

事件の数か月前に、絆會の幹部が、殺害された幹部らに暴行を受けて引退声明を無理やり書かされたという情報があり、その"返し"で狙ったものとみられています。水戸の事件の4か月後には絆會幹部が三重県内で銃撃され、殺害された幹部の組織に属する組員が逮捕されるという報復事件が起きています」(前出デスク)

しかし金澤容疑者の嫌疑は、これだけにとどまらない可能性がある。

「去年の4月に、神戸市内のラーメン店の店主だった六代目側の弘道会系組長が射殺された事件でも、金澤容疑者と似た風貌の男が現場の防犯カメラに撮影されていて、手慣れた犯行形態などから金澤容疑者の関与が指摘されている」(捜査関係者)

警視庁が作成した重要指名手配のポスターでは、偶然にも半世紀の逃亡の末に死亡したとみられる桐島聡容疑者の隣に配置されていた 警視庁が作成した重要指名手配のポスターでは、偶然にも半世紀の逃亡の末に死亡したとみられる桐島聡容疑者の隣に配置されていた
金澤容疑者の潜伏先のアパートは、絆會の関係会社が契約していて、組織として逃走を支援していた可能性が残る。

「仙台は、1997年の宅見組長射殺事件のヒットマンが潜伏していた土地でもあり、住吉会の根城で山口組系組織が少ないし、冬場は寒いから大都市の割に人出が少なくて隠れやすいということで選ばれたのではないか。

組織とコンタクトを取り続けていた以上は、指名手配の後の事件について、組織から指示があった可能性は否定できない。絆會は、岡山の池田組と運命共同体の関係を結んでいて、金銭支援を受けていたと言われているため、何らかの戦功を挙げたかった。弘道会の現役組長の神戸のラーメン店主は、標的としてもってこいと言える」(同)

警察の追っ手をかわし、緊迫した隠遁(いんとん)生活を続けながら新たな事件に手を染めてきたとみられる金澤容疑者。その心中を、暴力団事情に詳しいA氏はこのように慮る。

「長野の事件は殺人にはならなかったが20年近く打たれる。ならば、無期でも死刑でも同じだと覚悟を決めたのではないか。また、絆會は構成員が減って、織田絆誠代表が2017年に神戸山口組に命を狙われても復讐できなかった。ナンバー2の金澤容疑者自らが立ち上がるしかなかったのだろう」(A氏)

金澤容疑者の血にまみれた凶状旅の全容解明が待たれる。