北海道随一の歓楽街、札幌市すすきの。渡辺容疑者はかつてこの街の路上で客引きとして活動していた 北海道随一の歓楽街、札幌市すすきの。渡辺容疑者はかつてこの街の路上で客引きとして活動していた
フィリピンの入管施設に収容されながら、日本で募集した闇バイトに振り込め詐欺から広域強盗までを実行させていた渡辺優樹容疑者ら4人が強制送還・逮捕されてから、1年が経過しようとしている。警察は再逮捕を繰り返し、犯行の全容解明に全力を注いでいるが、彼らのバックと目される暴力団への突き上げ捜査には至っていない。こうした中、"ケツ持ち"として疑惑の目を向けられた組織が、着々と勢力を伸ばしている。

■風俗店のみかじめ料で組員逮捕

北海道警は先月の1月30日、組織犯罪処罰法違反の疑いで、六代目山口組弘道会に所属する福島連合の組員(42)を逮捕。2月1日に札幌市内の本部を家宅捜索した。道警担当記者が説明する。

「組員は、昨年11月に売春防止法違反で摘発されたすすきののソープランドから、みかじめ料として10万円を受け取ったとして逮捕されました。道警は、このソープ店から福島連合に年間100万円以上が渡っていたとみて調べています。すすきのの性風俗店の半数が、福島連合になんらかのかたちでカネを上納しているとも言われていて、固い収益源となっています」

収容されていたフィリピンの入館施設から日本国内の実行役に指示を出していた渡辺優樹容疑者(下)と小島智信容疑者(上) 収容されていたフィリピンの入館施設から日本国内の実行役に指示を出していた渡辺優樹容疑者(下)と小島智信容疑者(上)
福島連合は、巨大歓楽街・すすきのを押さえるだけでなく、渡辺容疑者が率いた匿名・流動型犯罪グループ(通称トクリュウ)のケツ持ち役という一面も持っているとされる。20年2月には、強盗に軸足を移す前の渡辺一派からカネを受け取ったとして、福島連合の組員が組織犯罪処罰法で逮捕され、事務所が家宅捜索されている。

「渡辺容疑者は北海道出身で、すすきので客引きやキャバクラ店を経営していた際に福島連合と関係を持ったようです。こうしたことから、渡辺容疑者らが強盗事件の指示役として浮上した際に、ケツ持ちとして福島連合の名も取りざたされました。

そして、渡辺一派の逮捕後に、福島連合の最高幹部が、六代目側の高山清司若頭の呼び出しを受けて事件への関与を尋問されましたが、両名とも『関係ありません』ときっぱり否定したそうです。渡辺一派を巡っては、フィリピンに在住の神戸山口組の周辺関係者が後見役として動いていたという見方が強いですが、事件が社会に及ぼしたインパクトがあまりにも大きかったため、警察の突き上げ捜査や民事での使用者責任に問われる事態を六代目本家として強く危惧した現われとみられます」(社会部デスク)

■ASKA事件でも...

北海道を本拠としながら、東京や仙台などにも進出しているとされる福島連合。捜査当局から厳しい目を向けられながらも勢力は伸長しているという。

「歌手のASKAに覚せい剤を下ろしていた複数のルートの一つが福島連合で、ASKAの供述をもとに売人として組員が逮捕された。この際は、ネタを売っておりながらASKAをゆすって、果てには週刊誌に情報提供していたとまで言われていてやりたい放題。

2015年から続く神戸山口組との分裂抗争では、主力の弘道会に属しているものの主戦場の西日本から地理的に離れているため影響をあまり受けていない。他の弘道会系組織が、抗争による組員の長期服役や事務所使用禁止などで活動を制限されて厳しい局面に立たされるのを尻目に、東日本を中心に勢力を拡大しているようだ」(暴力団事情に詳しいA氏)

こうした中、昨年末には福島連合で代替わりが行われた。

「福島康正会長が総長となり、弘道会での役職も舎弟頭から顧問に直った。そして、二代目会長に佐藤正和若頭が就任した。福島総長が80代と高齢であることが要因とみられますが、渡辺容疑者らの検挙後という時期的な事情を鑑みると、警察の厳しいマークをかわす狙いも透けて見えます。ただ、引退ではなくて両名とも弘道会に名を連ねるというレアケース。弘道会での福島連合の存在感の強さをうかがわせます。」(前出記者)

大物歌手の薬物事件や全国を股に掛けた強盗事件。世間の注目を浴びる事件でその名を轟(とどろ)かせることで、福島連合は不気味な存在感を放っている。