政府が「物価高に追いつく賃上げ」を求めた今春闘では、大企業中心に大幅な賃上げが続出。それを受けて日銀は異次元緩和の終了を決め、今後は物価高がさらに進むとの見方もある。だがちょっと待て! 働くオトコたちの懐事情は、本当に改善されつつあるのだろうか?
※アンケートは全国の20代、30代、40代、50代の各世代100人ずつ、計400人の正社員、契約・派遣社員、公務員の男性が回答。割合は小数点以下四捨五入。そのため合計が100%にならない場合があります
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■大幅な賃上げはごく一部の話
しっかりした労働組合が存在し、連合(日本労働組合総連合会)に加盟しているような大手企業を中心に、今年の春闘では大幅な賃上げ(ベア=ベースアップ)の実現が続々と報じられている。ただその一方で、「中小企業はまだまだ」「それでも物価高騰には追いついていない」といった指摘もある。
そんな中、日本銀行は3月19日、異次元の金融緩和の終了を表明。今後は利上げにより物価や景気がどう動くか、その影響が注目されている。
いずれにしても、「賃金と物価」が今の日本社会においてホットトピックになっていることは間違いない。
では実際のところ、働くオトコたちの「金銭感覚」は今、どうなっているのか?
インターネットでのアンケートに答えてくれたのは20代~50代の各世代100人ずつ、計400人。勤め先の規模(Q1)も年収(Q2)も適度にばらけており、さらに対象地域も全国47都道府県すべて。このアンケート結果を詳しく見ていけば、2024年春時点での「働くオトコ」の実態がよくわかるバランスになっているのではないかと思う。
また、個別にグラフ化はしていないが、各世代ごとのクロス集計をするとより興味深い結果が見えた質問も多かった。この点については本文で随時、触れていく。
まず注目すべきは、やれ副業解禁の時代だ、新型NISAスタートだといっても、副収入(Q3)がある人は36%でまだまだ少数派だということ。年間100万円以上の副収入を得ているという人は8%にとどまった。
逆に言えば、これは「給料≒収入」という人がほとんどだということでもある。つまり、賃上げの有無や金額、あるいはボーナス事情が人々の懐具合にそのまま直結し、消費の活性化や低迷につながるというのが現状だろう。
景気のいい報道が続く今春闘だが、自分の勤め先でも賃上げがあった、もしくはありそうだと答えた人は全体の36%(Q4)。1万円を超える人はわずか5%、5000円を超える人の合計も10%にとどまり、やはり大幅な賃上げが実現している企業は本当にごく一部。残念ながら、この先もまだまだ物価高に悩む人が大多数という状況は変わらなそうだ。
■食や電気料金に物価高の実感
そこで次に、【物価高】に関するアンケート結果を見ていこう。
Q5「物価高で起きた変化」を見ると、近年の物価高の生活への影響は人によりさまざまだが、「今のところ問題ない」(グラフには未記載)という人は約3割。多くの人はなんらかの節約や我慢を強いられており、約2割の人が新たに副業や投資、あるいは転職(グラフには未記載)を考えていることがわかった。
また体感として、価格が高くなったと感じる人が最も多いのは食品や外食費(Q6)のようだ。ただし、子供がいる人といない人に分けて集計してみた結果、子供がいる人は、人数がいればいるだけかかる上に節約が難しい電気料金、あるいはかなりまとまった出費になってしまう旅行、遊興費の高騰をより嘆いていることも判明した。中には「もう何もかもがありえないくらいに高い」という悲痛な声も......。
そんな中、昨年以降にした一番高い買い物について聞いてみると(Q7)、最多は家電製品。それにファッションアイテム、スマホ端末が続く。
なおグラフ化はしていないが、実は一番高い買い物の「金額」についても聞いている。10万円以上だったのは全体の28%。Q7の回答と併せて見てみると、そのうちの多くは最新の携帯端末や大型の家電製品だと思われるが、わずかに10万円以上のファッションアイテムを買ったという人もいた。高級なアウターかスーツ、バッグあたりだろうか。また、100万円以上の人も10%ほどいたが、これはほぼクルマか家だ。
ところで、物価高の苦しさがより切実にわかるのがQ8「趣味や遊び(飲食除く)に使うお金」だ。ほぼ使わない人が4分の1を超えており、月に1万円以下の人を足すと全体の半分に及ぶ。ただし面白いのが、この質問に対する答えで、未婚/既婚や子供あり/なしでクロス集計しても、目立つ差は出なかった。お金に余裕があるか、猛烈に好きな趣味がある人は、結婚しようが子供がいようが「使う」ということだろうか。
■上の世代ほど飲みに行かない人多し
次は【飲食の金銭感覚】について。まずランチの平均予算(Q9)は、けっこうバラついているが、400円台から600円までの人が最多。1000円を超える人は8%にとどまっている。
じゃあ、奮発するときはどのくらいまで払うか(Q10)。これは1000円超えの人が半分以上で、1500円オーバーも20%。これくらい予算があると、選びがいがあって楽しいランチになりそう。一方で、「奮発することはない」というシビアな回答も14%いた。
続いて、いわゆる「ラーメン1000円の壁」について聞いたのがQ11(ラーメンを食べる習慣がない人もいることを考慮し、定食も加えて聞いている)。半数以上の人は昼でも夜でも「1000円の壁」があるようだが、好きな店なら気にしない、あるいは常に気にしないという人も全体の5分の1ほどいた。
さらにQ9とクロス集計してみると、中にはランチ平均予算が400円以下なのに「ラーメン1000円の壁」はないというツワモノも全体の3%ほど。ラーメン(もしかしたら定食好きの人もいるかもしれないけど)強し!
もうひとつ興味深いのは、世代別にクロス集計すると、上の世代ほど「ラーメン1000円の壁」を感じるという人が多かったこと。50代ではなんと74%に及んだ! デフレが続いた「失われた30年」を、ずっと社会人として生き抜いてきたがゆえの節約意識なのかも。
では、飲み会についてはどうか? まず参加頻度(Q12)を聞くと、なんと「ほとんど行かない」が全体の半数以上。月6回以上(≒週1を明らかに超えるペース)で飲みに行く人は全体の5%にとどまっており、社会の変化を感じるところだ。これも上の世代ほど行かない人が多い傾向が見て取れたのだが、コロナ禍で「ふらっと飲みに行く」習慣がなくなったということなのかもしれない。
飲み会の平均予算(Q13)は、3000円以下から5000円あたりまで見事にバラけた。ただし、こちらは予想どおりというべきか、世代が上になるほど高額になっており、50代の最多は4000円台だった。たまに行くからいいところで飲みたいという「一球入魂」の意識のあらわれなのか、それとも「行くのはお金を持っている人だけ」という身もふたもない真実のあらわれなのか......。
■有料サブスクは少数派、ポイ活は多数派
その他の質問についても見ていこう。エンタメ系有料サブスクの月額金額(Q14)は、ほぼ半数の人がゼロ。確かに、無料でも楽しめるものはいくらでもあるしなあ。ただし、これも世代ごとの傾向が顕著で、20代では加入ゼロが約3割だったのに対し、50代は2倍以上の65%に及んだ。
ちなみに、グラフでは「5000円以上」でひとくくりにしてしまったが、合計1万円以上と回答した人もちらほらいて、その中には「有料サブスクに10個以上入っている」という猛者も数人。手当たり次第に入っては無料期間を過ぎても解約を忘れてしまうタイプなのか、それとも気合い入りまくりのエンタメどっぷり人間なのか、詳しく聞いてみたいところだ。
意外と加入ゼロが多かった有料サブスクとは反対に、思った以上に浸透しているのが「ポイ活」(Q15)。世代別のクロス集計をしても、どの世代でも似たような結果が出たが、自信満々に「とても積極的」と答えたのは20代が最も多かった。また、年収が高くても低くてもあまり回答に差がなかったので、やるかやらないかは性格の問題なのかもしれない。
最後のQ16では、「経済的な理由で十分にできていないこと、尻込みしてしまっていること」を聞いた(複数回答可)。これも世代別のクロス集計の結果を見ると、それぞれの世代のリアルな悩みや直面するライフステージの問題、あるいは日々感じていることがよくわかる。
そこで少し長くなるが、各項目について、挙げた人が多い世代を順に並べてみよう(もちろん統計的に誤差の範囲内というケースもあるので、参考程度に見てください)。
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●クルマや家
50代>40代>30代>20代
●いい食事
20代>50代>40代>30代
●趣味を楽しむ
20代>40代>50代>30代
●老後資金をためる
50代>40代>30代>20代
●新たな趣味や遊びの開拓
20代>50代>40代>30代
●投資
30代>50代>20代>40代
●積極的な恋愛
20代>30代>40代=50代
●結婚
30代>40代>20代>50代
●親孝行
30代>40代>50代>20代
●ギャンブル
30代>40代=50代>20代
●子供を持つ
30代>20代>50代>40代
●家族サービス・教育
40代>30代>20代>50代
●風俗店に行く
50代>40代>30代=20代
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以上、働くオトコの金銭事情・緊急アンケートの結果発表でした!