2021年からウーバーイーツで医薬品の配達が始まりましたが、最近運ぶ機会が増えたなと感じます 2021年からウーバーイーツで医薬品の配達が始まりましたが、最近運ぶ機会が増えたなと感じます

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第46回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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ウーバーイーツは名前に「eats」という文字があるように、食べ物を宅配するサービス。私が配達を始めた頃は飲食店の食事を家庭やオフィスへ運ぶだけでした。その流れが変わったのは2019年夏、コンビニエンスストアのローソンからの配達が始まってから。店内にあるティッシュペーパーなどの日用品や雑誌などの宅配が始まると、運ぶ商品の幅は一気に拡大。現在は花束や家電製品も対象となっています。

食べ物以外で最近運ぶ機会が増えたなと感じるのが医薬品です。2021年、医薬品の配達が始まった当初は医薬品を扱うローソンからの配達に限られていたためか、私が配達することはありませんでした。その後、ドラッグストアからの医薬品配達も始まり「ウーバーで医薬品が注文できる」ことが注文される方に浸透したのか、2023年の秋頃から2、3週間に1回ぐらいのペースで注文が入り、その年の年末年始には週2、3回のペースで運ぶようになりました。

配送対象となる薬は第2類医薬品と第3類医薬品に限られていますが、医薬品は24時間営業のドラッグストアでも薬剤師や登録販売者が不在の時間は販売できません。なので、体の具合が悪いなか店に出かけても薬を買えない可能性がありますが、ウーバーなら寝床でスマホを操作するだけですし、販売できる人が不在でもアプリで別の店を探すだけ。医薬品の配達はウーバーイーツを利用する人にとって、とてもいいサービスだと思います。さらに328日からは処方薬の配達も始めると運営側より通達があり、より便利なものとなったと思います。

そんな便利な医薬品配達ですが、配達員にとっては条件のいい依頼ではありません。なぜなら、置き配が禁止され、不在の場合は商品を店まで戻さなければならない制約があるからです。法律で販売方法が制限されているので、こういったルールを設けるのはコンプライアンス的に間違っていません。ただ、外に出られないほどの人に薬を直接渡すのは配達員にとって大きなリスクです。また、不在で店に戻すとなると、大きな時間のロスになります。そのため、体調が悪くて医薬品を注文しても配達員が依頼を断り、マッチングが成立しにくいのが現状です。

せっかくのいいサービスなので、受け取りの際、注文者のマスク着用を義務化し、守らなければサービスの利用を停止するとか、返品のリスクがあるので配達員に渡す報酬を他の商品より大幅に上げるなどの取り組みをして、配達員が依頼を受けやすい環境を作っていただけたらと思うのですが、現在のところ、そういう動きはありません。

そんな医薬品配達で一番印象的だったのが、2023年の年末のできごと。銀座のドラッグストアで受け取ったのは45錠入りの胃薬。「胃薬なら病気でフラフラの人が出てくることもないし、寝込んでしまってインターホンを鳴らしても出ないことはないな」なんて思いながらドラッグストアに到着。運ぶ商品が間違えていないかチェックをして「配達スタート」のボタンを押すと、表示されたのは大手町にあるオフィスビル。住所の後に記された建物名には「Uber Eats コンプライアンスセンター」。

ここは、登録に不備が確認されるなどして配達員アカウントが停止(働けない状態に)された人が、アカウント復帰のために書類を再提出する場所。システムのバグが原因で停止(=クビ)とされる人も多いため「ふざけんな!」という配達員の罵声がよく飛び交う場所でもあります。2023年12月、年の瀬にそんなところへ運ぶ大量の胃薬。コンプライアンスセンターの人がミスをしたわけではないのに、怒りを受け止める窓口の方は大変だなと感じながら胃薬を渡しました。

配達員が医薬品の配達をしたがらない現在の状況が続くと利用者からの不満が増え、コンプライアンスセンターのような直接意見を受ける場所のスタッフが疲弊すると思います。もし、運営の方でこの記事を読んだ方がいらっしゃったら、配達員が注文を断らないようなシステムを作っていただけないでしょうか。よろしくお願いします。

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渡辺雅史

渡辺雅史わたなべ・まさし

フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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