平和な日本で、手榴弾が炸裂する異常事態が発生した。事件の舞台は、山口組分裂抗争の激震地・岡山。抗争のギアがまた一段と高まってきた情勢だ。
■岡山の暴力団関係先で爆発
事件は4月18日夜、岡山県倉敷市で発生。けが人はなかったが、契約社員の女性(61)方の窓ガラスが3枚割れ、散乱した破片によって外壁も損傷するという事態となった。全国紙社会部デスクが語る。
「被害を受けた女性方は、六代目山口組から離脱して抗争状態にある池田組幹部の関係先でした。人をめがけて手榴弾を投げたわけではないので、示威行為による犯行とみられます。今回の抗争においては、事務所や居宅に対する車両特攻が頻発していましたが、破壊力をより増した手榴弾が使われたことに警察当局は警戒を強めています」
■ターゲットは間もなく離脱
ターゲットとなった幹部は、この事件直後に池田組を脱退したと伝えられる。従前から、組織の運営方針を巡って執行部と反発していて、事件を機に離脱の腹を固めたようだ。
「事件当初は抗争の一環で六代目側が起こしたとみられ、特に愛媛県で池田組の前谷祐一郎がかつての子分で六代目側に付こうとした男性を射殺した事件の報復ではないかという見立てがありましたが、池田組内で浮いていたこの幹部を離脱させるために狙ったのではないかという憶測も流れています。また、池田組の内部犯行という線も疑われていて、犯人探しは難航しているようです」(前出デスク)
標的の人物を即座に爆殺できる手榴弾。その使用例は珍しいわけではない。
例えば、2010年には六代目側の山健組本部事務所前で、関東の元暴力団組員が手榴弾を投擲(とうてき)して爆発させ、事務所や近隣住宅の窓ガラスなどを損傷させた。また、80年代の山一抗争においては、タイから日本へ航空機で手榴弾を密輸しようとした山口組系の暴力団組員が、機内のトイレで誤って手榴弾の安全ピンを抜いてしまい、そのまま機内のトイレに放置。その後に爆発してあわや墜落という事態に陥り、乗員乗客14人が重傷を負うという事件を起こしている。そして、あの組織も...
■工藤会は暴排クラブへ投擲
「特定危険指定暴力団・工藤会系の組員が03年8月、暴排運動に積極的だった男性が経営する北九州市内のクラブ『ぼおるど』に手榴弾を投擲。従業員の女性の頭に当たって壁に跳ね返ったのちに爆発して12人が負傷する事件が起きています。
手榴弾自体は不十分な管理状態だったので不完全爆発でしたが、トイレを粉砕するほどの爆発ですさまじい衝撃でした。もし、完全に爆発していたら複数の死者が出ていてもおかしくない。
暴力団が手榴弾を使用する際はパフォーマンスの目的が強いですが、明らかに殺傷を狙った犯行です。工藤会を巡っては、08年にもトヨタ自動車九州小倉工場での爆発事件など、他にも手榴弾事件での関与が疑われています」(捜査関係者)
■カチコミでは評価されない情勢に
示威行為の定石手段だった拳銃によるカチコミや車両特攻から、手榴弾へと進化した今回の事件。暴力団事情に詳しいA氏は次のようにみる。
「ヤクザが使う手榴弾は、基本的に米軍からの横流しで入手自体は難しくない。カチコミで捕まれば10年ぐらい打たれるが、手榴弾でも10年ちょっとであまり変わらない。
そのうえ、相手に与える心理的ダメージは大きい。また、六代目側では、大勢は決しているので、いまさら車両特攻やカチコミでは仕事として評価されないという話もある。
対立組織の幹部は自宅に籠城しているので、手榴弾の方が家屋への破壊力も強い。これからは手榴弾を使った犯行が増えていくのではないか」
2011年に福岡県警がホームページ上で「手榴弾に注意!」と題した啓発文を掲載して、「そんなもの普通に落っこちているものか」とネットユーザーから揶揄(やゆ)された。しかし、いまや手榴弾の脅威は社会に確実に忍び寄っているのかもしれない。