ハイブランドから医薬品、家電にゲーム機まで! ひとりで1億円以上も購入するケースも! ハイブランドから医薬品、家電にゲーム機まで! ひとりで1億円以上も購入するケースも!

中国人観光客を中心に行なわれているという免税購入した商品の転売行為。最近ではこの免税品転売を巡って、国内企業が国税から追徴課税されるという事態にも発展。免税品の転売スキーム、そして日本の免税品制度の問題点などを徹底解説です!

■免税品購入額は行政予算並み!

6月4日、ドラッグストア大手のダイコクドラッグが中国人観光客に対して不適切な免税販売を行なっていたとして、大阪国税局から約3億円という消費税の追徴課税をされていたことが報道された。

過去にも同様の事案で、Appleの日本法人であるアップルジャパンは約140億円、近鉄百貨店は約8億円という追徴課税が発生している。この追徴課税の裏にあるのが、中国人を中心とした訪日観光客による"免税品の転売"だという。

免税品の転売の実態とは? 中国のIT、ビジネスに精通するジャーナリストの高口康太さんに聞いてみた。

――この免税品の転売には、どのような問題があるのでしょうか?

高口 訪日外国人が日本国内で買い物をする場合、デパートや大手家電量販店などでは商品価格に対する8~10%の消費税が免除される、免税販売を行なっています。税込で11万円なら訪日外国人は10万円で購入することが可能。

この免税制度を悪用しているのが、免税商品の転売になります。そもそも日本国内で使用や転売をしないことが免税販売の条件になっているのに、「転売前提」で購入が行なわれているのが現状。転売を行なう場合は、消費税を支払う必要があるのです。

――不適切に免税購入されているのは具体的にどのぐらいの金額に上るのですか?

高口 財務省と国税庁が中心になって発表した資料によれば、2022年から23年に訪日して1億円以上の免税品購入があったのは374人で購入総額は1704億円。彼らが免税品を適正に国外へ持ち出した事実は確認できず、1704億円分の消費税も支払われていません。

このような問題があり、ダイコクドラッグや百貨店が追徴課税される事態となりました。22年には7人の中国人グループが免税品を約77億円分も購入したケースもあったほどです。

――では、訪日中国人たちにはどのような転売スキームがあるのでしょうか?

高口 まず、中国のSNSから日本で商品を購入する"買い子"の募集を行ないます。例えば、「日本旅行でお小遣い稼ぎ! 〇〇店の免税コーナーで〇〇を50万円分購入。謝礼1万円」という内容です。

引き受けた場合は、買い子側へ即、免税品の購入代金が送金されます。そして買い子は指定された商品を購入し、回収業者がネットの個人売買や中古買い取り店へ転売するシステムです。つまり、免税分の10%が利益となるのです。

2022年、免税要件を満たしていない販売を行なったとしてAppleの日本法人であるアップルジャパンは東京国税局より、約140億円の消費税を追徴課税されることに 2022年、免税要件を満たしていない販売を行なったとしてAppleの日本法人であるアップルジャパンは東京国税局より、約140億円の消費税を追徴課税されることに

中国ではiPhoneシリーズは新製品が登場するたびに転売商材として定番となっている 中国ではiPhoneシリーズは新製品が登場するたびに転売商材として定番となっている

――なぜ、中国人が多く関わっているのでしょうか?

高口 中国人なら必ず利用しているSNSアプリに『WeChat』があります。ここで動員して、金銭のやりとりもアプリ内で可能。また、中国人の利用するコード決済は、日本への旅行者限定で【〇〇デパートでの買い物なら10%還元!】といったキャンペーンを行なっています。

このキャンペーンも買い子にとって"おいしい収入"となります。なので、有名百貨店で扱われる時計やバッグなどのハイブランド品、品薄のゲーム機や家電商品などの高額商品が転売商材となっているのです。中国のSNSやコード決済と日本の免税制度を悪用した闇のエコシステムが完成されているのです。

――そもそも中国のコード決済は日本で利用できる?

高口 百貨店や家電量販店はもちろん、スーパーやコンビニでも利用できます。日本では14年にインバウンド需要を見込んで消費税免税制度の改正を行ない、これにより免税品を取り扱うお店が増えました。そして、多くのお店が中国人用のコード決済端末を採用したのです。

――では、日本の免税制度の問題点とは?

高口 多くの国では空港から出国時に免税額が還付される事後免税制度を導入しています。一方、日本の場合は購入時にその場で免税される即時免税制度。

空港だけでなく、スーパーや大手家電量販店でもこのような免税制度が採用されているため、免税品をどこでも購入することができます。それもあり、免税品の転売が増えた経緯があります。

5月1日、大手家電量販店のビックカメラグループは、転売につながる免税品販売を防ぐ独自のレジシステムを導入したことを発表。これまでは会計時に販売スタッフが不審に感じた場合に免税会計を断っていたが、今後は同社独自の基準を上回る免税購入があった場合はレジ端末からアラートが出る仕組みとなっている(写真提供/ビックカメラグループ) 5月1日、大手家電量販店のビックカメラグループは、転売につながる免税品販売を防ぐ独自のレジシステムを導入したことを発表。これまでは会計時に販売スタッフが不審に感じた場合に免税会計を断っていたが、今後は同社独自の基準を上回る免税購入があった場合はレジ端末からアラートが出る仕組みとなっている(写真提供/ビックカメラグループ)

――このほかにも免税転売が増えたと考えられる理由は?

高口 もともと中国人の間では「代購」という、日本で大量購入した日本メーカーの商品を中国に発送して転売する行為が一般的で、これはしっかり儲かる商売でした。

しかし、近年は中国に進出した日本メーカーが"正規品"の販売を行なうようになり、こちらのほうが価格も安く偽物をつかまされる心配もありません。代購が成り立たなくなってきたことも、国内での免税品の転売が増えた理由のひとつでしょう。

――現在、日本政府は2025年以降をメドに、訪日外国人に対して一定額以上の免税品購入があった場合、空港での現物確認後に消費税を還付する事後免税制度の導入を目指しています。これは中国人には効果ありですか?

高口 転売グループは抜け道を見つけそう(笑)。制度が複雑化してまじめな観光客だけが損をする結果にならないよう、デジタル化で手続きを簡素化することが必須です。

――現在、店舗側が独自のレジシステムや口頭での注意で対応している訪日外国人の免税品購入。これは政府の迅速な対策が必要です!

写真/Natsuki Sakai/アフロ Rodrigo Reyes Marin/アフロ AP/アフロ VCG/アフロ

直井裕太

直井裕太なおい・ゆうた

ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。

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