渡辺雅史わたなべ・まさし
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第57回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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ウーバーイーツのアプリは配達員用、注文者用ともにスマートフォンのGPS機能と連動しています。そのため、注文された方は配達員が現在どこにいるのかを、マッチングしてから配達完了までの間、マップ上で確認することができます。
この機能があることで、商品受け渡しの際に注文者からよく「なんで、配達途中に長い間止まっていたの?」と、聞かれることがあります。また、配達の最中にチャット機能を使って「配達員さんの現在位置がまったく動かないのですが」というメッセージがくることもあります。
原因のほとんどは「店が混雑する時間帯で料理が出てくるまでに時間がかかった」「入館手続きが複雑なビルやタワーマンションだった」のどちらかなので、聞かれた場合はその旨をしっかり伝えます。
ですが、たまに注文者が「トイレに入っていて出ることができなかった」「帰宅前にウーバーを注文したら、急用ができて自宅に戻れなくなった」という理由もあります。その場合は「10分タイマー」というルールがあるので、「前の配達先で不在だったため、ウーバーのルールに従って10分待機をしていました」と伝えます。
こんな感じで、たいていの場合は理由をしっかり説明することで納得していただけるのですが、ごくごくたまに、理由を説明すると怒られそうなケースもありまして......。今回はそんな、配達遅延にまつわる話です。
そこそこあるのが、置き配サービスが始まってから起きている問題。
配達員用のアプリは、店で商品を受け取って「配達開始」のボタンを押すと、届け先の住所、置き配か直接受け渡しかといった情報が表示されます。ですが「直接受け渡し」の指示をしている人の中には、配達員への注意メモの欄に「直接受け渡しと書いていますが、置き配でお願いします」という指示を書く方もいます。
また、配達先のマンションでインターホンを鳴らした際「ドアの前に置いといてください」と言われることもあります。こういった場合は、アプリ上に「直接受け渡し」と表示されていたとしても、ドアの前に商品を置きます。
ですが、中にはこんなケースが。建物の入口で部屋番号を押し「ウーバーです」と答えたら、建物の入口の自動ドアを無言で解錠したのに、部屋の前に到着してインターホンを押したら何の反応もありません。「直接受け渡し」となっているのを確認して再びインターホンを押しても反応がありません。
建物の入口のドアを解錠してくれたので在宅しているはずなのにと思いつつ、仕方ないので10分タイマーを作動させ、しばらくしたらドアが開き「わざと出ないんだから、置いて帰れよ!」と言われました。
ウーバーは主に食べ物を運ぶサービスなので、注文された方の指示なく勝手に商品を置き、その商品が盗まれてしまった場合、配達員が責任を問われる可能性があります。なので「空気を読む」というような行動はとれず、10分タイマーを使うしかありません。
この時は、次の配達先の料理も一緒に運ぶ2件同時配達をしていたので、この遅延により2件目の方にはご迷惑をおかけしました。置き配を希望される方は、その意志をアプリを通じてなり、インターホン越しなりでハッキリ伝えていただけるとありがたいです。
新しい機能を導入したために大混乱というパターンもあります。
チェーン店の中にはフードデリバリー配達員専用ロッカーを設置している店があります。店の外壁に扉と注文番号を入力する液晶画面のあるこのロッカー。店に入る必要がないため、商品の受け取りに大変便利なものです。
ですが、先日行った店のロッカーがあったのは、店の裏側の路地に面したところ。路地にあること自体は問題ないのですが、その場所はいい感じにビル風が吹き込む風の通り道。そのため、液晶画面に注文画面を入力してロッカーの扉が解錠されても、風の勢いで扉がすぐに閉まってしまいます。
一度扉が閉まると解錠機能がリセットされるため、再度注文番号を入力しても扉が開きません。仕方ないので大通りに面した店まで行き、お客さんの間をぬってカウンターへ。事情を説明してなんとか商品を受け取ったのですが、ロッカーの解錠作業や店の正面まで行って商品を受け取る作業に時間がかかり、7、8分ほど時間をロスしました。
そんな「風」のせいでロッカーの扉が閉まるトラブルが続出したためか、しばらく経ったある日にその店に商品を取りに行くと、配達員用ロッカーはなくなっていました。
一番困ったのはYouTuberらしき人への配達。
配達先のマンションの前に到着する直前に次の配達依頼が入り、次の商品の受け取り先を確認しつつマンション入口のインターホンを押して指定の部屋へ。部屋の前でインターホンを押すと、スタッフらしき男の人が出てきて「撮影しているので、こちらが合図を出したらインターホンを鳴らしてください」とのこと。
5分以上待たされた上、商品を渡そうとしたら「インタビューに答えていただけますか」と聞かれ、何やらいろんなことに巻き込まれそうな感じがしたので「次の配達があるので」と言ってその場を立ち去りました。なんだかんだで10分ほど時間をロス。次の注文の方に迷惑をかけました。
コロナの頃はウーバーに関する動画が結構ありましたが、最近はウーバー関連の動画を上げても再生数が稼げないのでしょう。こういったパターンの面倒ごとには以降巻き込まれていません。
商品をこぼさず運ぶ、交通事故が起こらないよう安全運転をする。そんな理由で遅くなるなら注文された方に申し開きができるのですが、今回書いたようなことになると事情を説明しても納得いただけるようなものではないので、2件配達や次の配達が確定している時はいつも「配達先で面倒なことに巻き込まれませんように」と念じながら、届け先の部屋のインターホンを押しています。
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。