渡辺雅史わたなべ・まさし
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第62回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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ダイエット中でカロリーを気にする時期にお世話になるだけではなく、夏バテ気味でコッテリしたものを体が受け付けない時にもありがたい存在なのがサラダ。
特にサラダ専門店の商品は野菜の量も多く、低脂肪&ボリューミーであっさり食べられるものから、トッピング次第では満足感のあるガッツリ系まで種類が豊富。さらにドレッシングもノンオイルでもしっかり味のあるものがラインナップされています。
こんな感じで自分好みにカスタマイズできることから、サラダ専門店の商品を運ぶ機会は年々増えているのですが、夏バテになる方が多くなるこの季節はさらに注文が増えます。
今回は、そんなサラダの配達のお話です。
専門店のサラダの一番の特徴は野菜の多さ。直径25cmほど、高さ12cmほどの容器に野菜やトッピングの具材が盛り込まれます。容器は紙製で中身が見えないため、どのような感じで盛り付けられているのかはわかりませんが、6年前に初めて受け取った際、「サラダなのにズッシリしているな」と感じたのを今でも覚えています。
そんなボリュームあるサラダを配達する際に店から渡されるのが、紙製の大きなサラダボウル以上にボリューミーな紙製の手提げ袋。大きな容器を入れるためには大きな手提げ袋が必要だというのは理解できますが、そのサイズは配達員が普段背負っているリュックをひと回り小さくした程度の大きさ。しゃれたデザインの袋なので、折り目の入っている部分以外を折り曲げるのは、はばかられる感じもします。
この巨大手提げ袋に入れる文化はサラダ専門店では当たり前のようで、少なくともこれまで私が配達したサラダ専門店の商品にはビニール製のレジ袋を使っている店はありません。また、最近はタコスを売りにしている店が専門店のようなボリュームのあるサラダを販売、ウーバーによるデリバリーを行なう店も増えていますが、そういった店でも巨大でおしゃれなデザインの紙製の手提げ袋を渡されます。
以前、この連載で触れたように、配達員は日々BAD評価におびえながら運んでいるので、リュックの中に手提げ袋を無理やり入れて、変な折り目をつけてしまうとBAD評価をつけられてしまう可能性があります。そんなわけで私は、涼しい季節は自転車の前カゴにいれてサラダを運んでいます。
ですが、深夜でも25度を下回らない日が続くこの季節に同じことをすると、暑さで野菜がしなしなになる可能性があり「シャキシャキしたサラダを味わえなかった!」とBAD評価をつけられる恐れがあります。そのため、この季節は手提げ袋をリュックに詰め込み、「BAD評価がつきませんように」と祈りながら配達しています。
この祈りが強くなるのがダブル、トリプルの配達の時。こちらも以前「ウーバーイーツ配達員がBAD評価をつけられる最大の要因? 恐怖の3件同時配達」で触れたのですが、ウーバーでは最大3件の商品を同時に配達することがあります。冒頭で触れたとおり、サラダの配達が増えるこの季節は、サラダ専門店から複数件の同時配達の依頼が結構届きます。店から渡されるのは巨大な手提げ袋ふたつ。手提げ袋を折らなければリュックの中に入りません。
手提げ袋の中に入っている紙製のサラダボウルにしっかりしたフタが取り付けられているので、サラダボウルだけ取り出してリュックに入れ、手提げ袋を自転車の前カゴに入れて配達。商品を渡す際に手提げ袋に入れて渡す方法なら問題を解決できますが、SNS上にさまざまな動画がアップされるこのご時世、たまたま通りかかった事情を知らない人が、袋にサラダボウルを入れる様子を動画撮影してアップしたりすると大変なことになります。
というわけで、私が夏のサラダのダブル、トリプル配達の際にやっているのは、おしゃれな手提げ袋に折り目をつけてリュックの中に詰め込み、BAD評価がつかないよう強く祈ること。
注文される方のほとんどは、ちゃんとサラダが届けば問題ないと考えている、もしくは私の祈りが届いているためか、BAD評価をつけずに注文者用のアプリを終了されているようです。ですが、たまにBAD評価をされる方がおり、過去にはダブルの配達でどちらもBAD評価といったこともあり、少しへこみました。
とはいえ、6年半配達してBAD評価が多いことが原因でアカウントを停止された経験はありません。過度にプレッシャーを感じると、普段は絶対失敗しない作業でミスをして、それが原因でBAD評価されてしまうこともあります。なので、手提げ袋に折り目がついてBAD評価というのは、「しかたないか」程度の気の留め方にして配達をしています。
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。