世界各国から500人を超えるセクシー系のお姉さんが大集結!! 世界各国から500人を超えるセクシー系のお姉さんが大集結!!

8月9日から3日間にわたり開催された台北国際成人展。世界各国から500人以上のセクシー女優やポルノスターが集結し、若者を中心に20万人以上が来場してビジネスとして大成功。

なぜ台湾のアダルト業界は活気があり、若者を引きつけるのか? テンセントやバイトダンスなど中華圏の超大手企業を数多く取材するジャーナリストの高口康太さんが台湾のアダルト界隈を徹底取材です!

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■台湾アダルト業界の現状とは?

日本のAV女優が乗った皿が回転ずしのレーンで流れてくる!?

このやたらとインパクトのある動画がバズったのは昨年夏のこと。台湾のアダルトイベント、台北国際成人展(Taipei Red Expo、以下、TRE)で撮影されたものだという。いったいなんでこんな〝奇祭〟が生まれたのか!? この謎を解き明かすべく、今年も行なわれたTREに突撃取材を敢行してきた。

TREの象徴的存在がこの巨大回転ずしレーン! なぜすしデザインなのかは謎だが、次々登場するAV女優たちに参加者のテンションは爆上がり。憧れの人を写真に収めようとする男たちが殺到 TREの象徴的存在がこの巨大回転ずしレーン! なぜすしデザインなのかは謎だが、次々登場するAV女優たちに参加者のテンションは爆上がり。憧れの人を写真に収めようとする男たちが殺到

現地に到着してまず、規模のデカさにビビらされた。台北南港展示センター2号館はアジア最大のコンピューター見本市「コンピューテックス台北」も開催された会場だ。日本でいうなら東京ビッグサイトや幕張メッセのような、台湾の顔ともいうべき施設でアダルトイベントが開催されていることにまずびっくり。

会場は台北南港展示センター2号館。台湾を代表する超一流の展示会場だ 会場は台北南港展示センター2号館。台湾を代表する超一流の展示会場だ

そして開場前からの大行列にまたびっくり。並んでいるのは男性が中心だが、一部には若い女性の姿もあり、カップルで参加している人もいた。年齢層は10代、20代が大半。

Xのフォロワーが20万を超える台湾のAV評論家の一劍浣春秋氏によると、メインの参加者は学生で、そのため開催時期も大学の夏休みに合わせている。

ただ、お金を使うのは20代、30代の社会人が中心なのだとか。いずれにせよ、高齢化が進む日本のAVファンと比べると劇的に若いことは間違いない。

英語圏のポルノ動画配信サイトや個人も出展。各サイトのアカウントを作成すれば、ポルノスターと記念撮影できる 英語圏のポルノ動画配信サイトや個人も出展。各サイトのアカウントを作成すれば、ポルノスターと記念撮影できる

個人出店者のチェキ付きの着用済み水着も販売 個人出店者のチェキ付きの着用済み水着も販売

課金をすれば日本のAV女優を撮影できるブースも登場して人気となっている 課金をすれば日本のAV女優を撮影できるブースも登場して人気となっている

会場内には、大きなステージが2ヵ所あるほか、大量の個別ブースが詰め込まれている。そのほかにもサインブースやグッズ販売コーナー、トレーディングカード販売機などがずらり。あの回転ずしレーンも健在だ。刺し身のオブジェが飾りつけられた、3m近い高さのタワーの周りをすしレーンがぐるぐる回っている。

朝のオープニングは日本のAV女優の入場から始まる。レッドカーペットに数人ずつ入場。激しい音楽が流れる中、ノリの良いMCが招き入れ、観客が大歓声......という流れが延々と繰り返される。何せ80人もいるのだ。

ステージ上に並んだ女優たちはひとりずつ挨拶していくが、台湾華語(中国語)の発音が上手な人が多い。台湾コンサートでの日本人ミュージシャンのドへたな中国語挨拶よりも数段上だ。TREは今回で5回目、ほかにもAVイベントは多く、独自に勉強している人が多いようだ。

さらに、欧米のポルノスターが約20人、台湾や香港のグラビアモデル、インフルエンサーが約400人。合計500人が出演するというからその物量たるや恐るべし、である。

屋台感が強めの中華圏エロインフルエンサー 屋台感が強めの中華圏エロインフルエンサー

こちらは台湾人のグラビアモデルのブース。1枚約500円の電子チケットで各種サービスを提供。「握手」約2500円から、「膝の上に座ってゆれる」「没入奶香深呼吸(オッパイに顔を押しつけて深呼吸)」といった過激サービス約7500円までお値段はさまざま こちらは台湾人のグラビアモデルのブース。1枚約500円の電子チケットで各種サービスを提供。「握手」約2500円から、「膝の上に座ってゆれる」「没入奶香深呼吸(オッパイに顔を押しつけて深呼吸)」といった過激サービス約7500円までお値段はさまざま

もちろん参加者の数も猛烈に多い。主催者によると、3日間で20万人が来場したのだとか。売り上げは非公開とのことだが、一番安いチケットでも約5800円、単純計算でも10億円以上の売り上げとなる。実際にはその数倍に達しているのではないか。

というのも、一番安いチケットではAV女優を生で見られるだけだが、高額チケットを買うと、「女優マッサージ」「愛情診察室(お話し会)」「親密接触」「指定女優との親密接触」といった特典がついてくる。最高額のプラチナチケットは約2万2000円となかなかのお値段だが、高い順から売り切れとなっていた。

AV女優の渚恋生。2ショット撮影ブースは大人気。頑張って日本語を覚えて話してくる台湾ファンがかわいいのだとか AV女優の渚恋生。2ショット撮影ブースは大人気。頑張って日本語を覚えて話してくる台湾ファンがかわいいのだとか

さらに会場内でも有料サービスが販売されている。AV女優ふたりとの記念写真、チェキと着用済み水着のセット、AV女優トレーディングカードなど盛りだくさんだ。

いいお値段だが、若者たちは気にせず課金を繰り返す。

「確かに3日分ぐらいのバイト代が吹き飛びましたけど。日本までの飛行機代考えたら安いっすよ!」「河北彩伽ちゃんが来てくれたんですよ! 年1回だけのイベントだし、来年も来てくれるかはわからない。ケチケチしてる場合じゃないっすよ!」。参加者に話を聞くと、ひたすらに熱い言葉が返ってきた。

さて、各種サービスやグッズが販売されている中、意外にも販売されていないアイテムがある。それがアダルトビデオだ。DVDやブルーレイどころか、作品のポスターすら置いていない。

主催企業LCテックのエリック・ホワンCEO、ここまでのビッグイベントを作り上げた超やり手 主催企業LCテックのエリック・ホワンCEO、ここまでのビッグイベントを作り上げた超やり手

「TREの特徴はAV女優をアーティストとしてパッケージ化したことです」と、主催企業LCテック(雷麒科技)のエリック・ホワン(麒瑾)CEOは取材に答えた。なるほど、レッドカーペットを通っての登場やAV作品を前面には押し出さない展示など、AV女優たちはセレブ芸能人的な扱いを受けている。

親密接触やお話し会も、女優ごとのブースの前にファンが行列を作る様子はアイドルグループの握手会と同じ。台湾の若者にとって、AV女優たちは推し活の対象になっている。

会場にはカップルの参加者もいたが、アーティスト化することで、露骨なエロが避けられていることも一因だろうか。加えてAV女優が参加しやすくなるという要因もあるという。露出度の高い衣装で登場させるだけでは嫌がられるが、芸能人としてファンに歓待されるとなれば話は別だ。

TREに参加したAV女優の渚恋生も「大きな会場で、スターみたいな扱いを受けて、びっくりしました。日本語を覚えて、一生懸命話してくれるファンもいて。かわいいですよね。また、来年も呼んでいただけるように頑張ります」と話していた。

台湾のAV評論家、一劍浣春秋。1日8時間のAV視聴を仕事とする鉄人 台湾のAV評論家、一劍浣春秋。1日8時間のAV視聴を仕事とする鉄人

「芸能人的な扱いを受けることはAV女優にとっても刺激的な体験で喜ばれている。台湾での認知度が上がれば、スマホゲームのCMに出られるなど、新たな道も開ける」(一劍浣春秋氏)

日本市場のほうが台湾よりもはるかに大きいのに、これだけの数のAV女優たちが台湾を訪問するのはそれなりに稼げるとともに、「楽しい仕事」という側面も重要だという。AVメーカーにとっては日本のファンの高齢化が進む中、しっかりお金を落とす若者ファンを獲得する狙いもある。

■巨大イベント開催にはさまざまな困難が!?

このAV女優の芸能人的扱いはTREの〝発明〟だ。台湾には台湾成人博覧会(Taiwan Adult Expo、以下、TAE)という別の大型AVイベントもある。

「TAEはAVメーカーが参加の主体ですが、このTREは女優にフォーカスした点が違います。後発ですが、今では台湾最大のアダルトイベントになりました。作品のPRはできなくても、女優の知名度が上げられるという意味でありがたいイベントです」と日本のAVメーカー、トータル・メディア・エージェンシーの陳唯専氏は指摘する。

AVイベントの集客力を決めるのはどれだけ人気女優を集められるかにかかっている。アーティスト化というコンセプトで成功したエリックCEO、やり手である。

「説得する相手はAV女優やそのプロダクションだけではありません。日本と台湾の政府など、最初は誰もが疑っていた。女優たちを台湾に連れていって何をやらせるつもりだ、なんて言われました。粘り強く説得を続け、開催実績を積み重ねることでここまでたどり着いたのです」(エリックCEO)

その言葉どおり、TREは年々規模を拡大している。日本のAVメーカー・桃太郎映像出版の浅野國一代表は、過去参加した他社の話を聞いてこれならばと参加を決めたと明かした。

日本では会場が借りられず大規模なAVイベントが開けない。こんな大規模イベントが開ける台湾は緩いのか、はたまた性に寛容なのかなどと想像していたのだが、AV女優を引きつける戦略と粘り腰の交渉でここまでこぎつけたというのだから恐れ入る。

台湾は毎年大規模なLGBTパレードが開催され、アジア初の同性婚合法化を達成するなどリベラルなイメージもある一方で、1987年まで38年間にわたり戒厳令が敷かれていた、お堅い独裁体制という歴史もあった。

民主化後もすぐに社会が変わったわけではない。エロを見たい、エロで商売したいという、人々の熱い思いが少しずつ台湾社会を変えてきた。特に転機とされるのが2006年と14年だ。

中華民国刑法にはわいせつ物頒布罪が規定されており、AVの販売や配信は立派な違法行為だ。だが06年の司法解釈で、暴力、虐待、獣姦などの「ハードコア」だけが禁止対象で、それ以外の「ソフトコア」はおとがめなしとなった。これによって台湾ではAV販売が事実上「合法化」された。

ただ、「AVには独創性、芸術性がないため著作権なし」との判例があり、海賊版が販売され続けた。アダルト店だけではなく、台湾名物の夜市にまで激安海賊版を販売する露店が多数出没するなどの無法地帯となった。

これにブチ切れた日本AVメーカーは11年にNPO法人知的財産振興協会(IPPA、現在は適正映像事業者連合会と改称)を結成。法廷での戦いを繰り広げた。

裁判所の依頼を受けた大学教授がAVをがっつり鑑賞し芸術性の有無を認定、それを逆恨みした海賊版AV販売組織がIPPA関係者を襲撃するという、ドラマを超えた展開を繰り広げながらも、14年に著作権を認定する初の判決が下され、次第にAVの著作権保護と正規版配信の流れが広がりつつある。

AV合法化、海賊版との闘い、そして、その先に行き着いたAV女優やメーカー、台湾政府を口説き落としての巨大イベント開催。TREが今にたどり着くまでには大河ドラマ的な歴史があったのだ。

台湾アダルト大河ドラマにはまだ先がある。それが台湾独自のアダルト産業の発展だ。

「現時点では日本AVの人気が圧倒的です。作品作りの歴史も長いし、女優の質も高い。何より、台湾のファンは日本AVを長年見続けてきたので、台湾の監督のセンスよりも日本人監督のセンスに慣れています」(一劍浣春秋氏)

開場直後のセレモニーでは80人のAV女優がステージ上に集結 開場直後のセレモニーでは80人のAV女優がステージ上に集結

台湾グラビアモデルの記念撮影ブース。モデルは透明な小部屋からアピール。1500円払うと2ショットが撮れる。外から丸見えなのでさらし者感あり 台湾グラビアモデルの記念撮影ブース。モデルは透明な小部屋からアピール。1500円払うと2ショットが撮れる。外から丸見えなのでさらし者感あり

台湾のAVメーカー、渡邊傳媒の陳渡邊代表は合法化後、ロマンを追ってAVの世界に身を投じた。TREにも出展したが、日本のトップ女優と同じイベントに出演することで台湾での存在感を高めるのが狙いだという。

また、400人もの台湾人グラビアモデルたちも次世代の台湾アダルト産業の担い手たちだ。過去のTREは日本のAV女優中心だったが、より広い会場に変えて彼女たちのブースを増やしたという。

ブースの内容は握手2500円、顔を踏む4000円、顔面騎乗1万円など、どぎつい接触サービスが中心。だがあまり集客できずに暇を持て余している人も多く、ブースの中で弁当をかき込んでいる姿も見られた。なんとなくアジアの屋台感が漂ってくる。

ただ、彼女たちでもバリバリ稼いでいこうというのが主催者である、やり手のエリックCEOの戦略だ。彼は、グラビアモデルが極どい写真や動画を販売できるサイトも運営している。簡単に加入できて、ポルノ販売で報酬を得られる。

「ポルノ界のウーバー」を目指しているというエリックCEOいわく、LCテックはテックカンパニーとのこと。次世代の台湾アダルト産業はデジタル技術と共にある。

販売サイト以外でも、日本AV女優と台湾グラビアモデルの写真が掲載されている雑誌を販売しているほか、年内にはモデルの人気投票イベントも計画しているという。

今はまだ地下アイドル的な存在の台湾ポルノ・グラビアモデルだが、数年後にはまったく違う姿に変貌しているかもしれない。

高口康太

高口康太たかぐち・こうた

1976年生まれ。ジャーナリスト、翻訳家。中国の政治、社会、文化を幅広く取材。独自の切り口から中国や新興国を論じるニュースサイト『KINBRICKS NOW』を運営。著書に『幸福な監視国家・中国』(梶谷懐との共著、NHK出版新書)、『なぜ、習近平は激怒したのか』(祥伝社新書)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)など。

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