直井裕太なおい・ゆうた
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。
昭和・平成時代に乱開発されるも、現在ではほぼ住人がいなくなってしまった超郊外型の住宅地である"限界ニュータウン"。首都圏だけでなく日本全国どこにでもあるという限界ニュータウンのあれこれを紹介です!
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首都圏近郊といっても、通勤通学には徒歩+バス+電車で120分以上。昭和・平成時代に乱開発された〝限界ニュータウン〟こと圧倒的に郊外型の分譲住宅街。これらの土地や一戸建て住宅、さらには限界別荘地などを2017年から取材を始め、自身のブログやYouTubeチャンネルで情報を発信しているのが吉川祐介さんだ。
限界ニュータウンはどのように開発されたのか? その現状とは? さらには、超格安で購入することもできるというこれらの物件の活用方法などを、実際に限界ニュータウン住みである吉川祐介さんにお聞きします。
――吉川さんが限界ニュータウンを取材することになったきっかけとは?
吉川 そもそもは自分の家を探していたんですよ。その頃はタクシー運転手をやっていて東京に住んでいたのですが、同僚には千葉県から通っている人もいました。それこそ5LDKの一戸建てを500万円で買ってるんですよ。
それで結婚を機会に千葉で安い物件を探し始めたのがきっかけです。不動産情報サイトを見て、安い物件があったら不動産業者を通さず直接見に行く。そんな感じで千葉県八街市周辺の物件を回っていたのですが「こりゃなんなんだ!」と思う土地や建物が多かったんです。
――それは、どのような状況だったのでしょうか?
吉川 バブルの不動産ブームの余韻で建てられたと思われる一戸建てはあるけど、ほとんどが空き家。そして、草が生い茂った謎の空き地ばかり。
これらは不動産情報サイトにもあまり載ってなくて、いろいろと調べてると、どの不動産も昭和・平成時代に、土地や一戸建てを〝首都圏通勤範囲〟とうたって販売。でも、実際には2時間以上もかかる場所もあります。とにかく利便性が悪く、住人がどんどん減る。これが限界ニュータウンだったのです。
――吉川さんが暮らす千葉県山武郡横芝光町のある住宅街を訪れると、畑の中にポツンと数軒の家がある状態で周囲に草が生い茂る空き地だらけ。まごうことなき限界ニュータウン! このような不動産情報サイトに載ってない物件をどうやって探すのですか?
吉川 私の場合は土地の位置や地番がわかる公図やGoogleマップをチェックしたり、昭和・平成時代の住宅販売の新聞チラシから探します。限界ニュータウンは千葉に限らず全国にありますからね。
めぼしい物件を見つけたら、法務局から登記簿を入手し、物件の所有者に〝購入希望〟の手紙を出します。ただ、64区画の分譲地の所有者に手紙を出しても、返信は3分の1ほど。宛先不明で戻ってくるのがほとんどなんです。
――それ一般人がやるにはハードル高すぎ! 最近は「ジモティー」なんかでも超安の不動産が売買されています。
吉川 「ジモティー」は不動産の知識がないとちょっと難しいですね。普通の人なら「フィールドマッチング」や「みんなの0円物件」といった不動産のマッチングサイトを利用するのがいいでしょう。
――吉川さんは独自の手段で一戸建てや5000円の別荘、自宅近隣の土地、さらには私道まで購入しています。ただ、吉川さんのようにブログやYouTubeで情報発信するわけではない一般人にはハードルが高そう。ズバリ、限界ニュータウンや分譲地の購入に向いていない人は?
吉川 まず、家族で住みたい!と思っている人は無理ですね。学校が遠く、高校へ通うようになると親が毎日駅まで送迎する必要があります。近所に友達もいないし、イオンモールもありません。あと、お酒好きで飲みに行きたいって人も無理。そもそも店もありませんから(笑)。
――逆に限界ニュータウン暮らしを楽しめる人は?
吉川 例えば、クルマが趣味ならガレージとかも造れますし、オーディオやDJだって夜中に音楽を鳴らしても苦情が来ることはありません。深夜に洗濯機をガンガン回しても大丈夫です。
あと、DIYが趣味って人も向いてますね。やはり、住宅そのものがボロボロであっても、それを自力でリフォームすることを楽しめると思います。
友人もリフォームが趣味で、僕の家を無償で直してくれています。失敗しても問題ないので、新しいリフォーム技術を試せるんですよ。スローライフとして草刈りなどの庭仕事、畑仕事を楽しみたい人にもオススメです。ただ、僕自身は趣味もないし、庭仕事だって好きじゃないんですよ。
――じゃあ、なんで限界ニュータウン住みなんですか?
吉川 僕、高校時代からバックパッカーみたいなことをやってて、就職も進学もせずにいたら実家を追い出されちゃったんですよ。こんな人はもう、普通の出世街道は歩めないじゃないですか。その結果が限界ニュータウンなんですよ。人として300万円ぐらいの家を買うのが精いっぱいですから(笑)。
――いやいや! でも最近は社会問題に切り込むジャーナリスト、ノンフィクション作家としてメディアに露出していますよね。
吉川 全然そんなんじゃないんですって! 大学で講演をしたら「どこの新聞社に勤めてたんですか?」って聞かれましたけど、そもそも大学すら行ってませんから。ただ、調べ事をするのが楽しくって、それで限界ニュータウンや分譲地を掘り下げて取材していったら、こんなふうになっちゃっただけなんですよ。
――最近はYouTuberとしても活躍していますよね。
吉川 取材して文章をブログにアップするか、動画にするかでいったら、圧倒的に文字が好きですよ。でも、収益はYouTubeのほうが全然上。なので、生活のために動画の比率が増えてますが、取材の労力は一緒なんですよ。
――最後にお聞きします。限界ニュータウンを取材していて変化を感じることは?
吉川 限界ニュータウンは家の価格が安いので、一般的な不動産業者がビジネスとして中古住宅の売買を行なうのは厳しい物件です。
その一方、これまで草が生い茂っていた限界分譲地には新築の家が増えてきました。現在、不動産ブームで物件価格が上昇しており、結局その価格を削りやすいのは土地代なんですよね。
ただし、近所の人が「もう15年ぐらい誰も住んでないよ」って言うボロボロの空き家も、登記簿を調べてみると4、5回は所有者が変わってるんです。つまり、「いい投資物件、ありますよ!」と悪徳不動産業者にそそのかされて買っちゃう人もまだいるんですよ。
なんか、昭和・平成の不動産ブームと同じ土地で同じことが繰り返されつつあるのかなと感じています。
――趣味人にはオススメの限界ニュータウンですが、投資目的の購入はダメ絶対です!
ライター。尊敬する文化人は杉作J太郎。目標とするファウンダーは近藤社長。LINEより微信。生活費の支払いは人民元という国境を越えるヒモおじさん。ガチ中華はブームじゃなくって、主食です。