あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「不祥事対応」について。
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国民民主党代表・玉木雄一郎さんが、39歳の元グラビアアイドルとの不倫を報じられた。なんとうらやましい。書き間違えた。なんと痛手か。ご本人は報道をおおむね真実と認めた。奥様にも伝えたという。
奥様から叱責(しっせき)されたエピソードはほんとうかわからないが、まあ家族の問題だろう。お相手の容姿や人柄について書き連ねるのはやめたほうがいい。
その後、玉木さんの職場である国会の憲法審査会にもお相手の方が出入りしていたとの報道まで出たが、本稿ではその件には深入りしない。以下、一般論として記す。
私は不祥事によって投票行動や消費行動が変わることがない。結果さえ出してくれれば経営者や政治家の私生活がどうであっても構わない。
トランプ次期米大統領は不倫などのスキャンダルで有名だが、「米国の経済を前進させてくれるならなんでもいいよ」とプラグマティズム的に多くの米国民は受け入れている。玉木さんについても、少なくとも当初のいわゆる不倫報道のみの段階では、同様の立場を取る人が多かったかもしれない。
それにしても、国政政党の党首は必要に応じてSPがつく立場だ。記者も不祥事やスキャンダルを探そうと張っていたはずで、以前から密会の噂があったらしい。脇が甘いともいえるし、それでも会いたかったなら人間的ともいえるかな。
ここからはあらためて一般論。企業等の不祥事発生時の得策は、私が思うに「完全無視」か「徹底謝罪」のどちらかだ。前者は説明不要だ。無視するだけ。
ただ、立場上無視できない場合もあるだろう。その際は徹底した構想が必要だ。
具体的には①謝罪と反省、②原因分析と理屈抜きの後悔、③再発防止策、④ペナルティの4要素が詰まっている必要がある。たとえば「部下へのハラスメントの謝罪会見」を行うのであれば、
「申し訳ございませんでした。上司の立場からやってはいけないことでした。社内外の関係者にご迷惑をおかけしたこと、心よりお詫(わ)びするとともに、反省をしています(①)。原因は〇〇にあり、冷静に考えればわかることをやってしまったのは、私の人間的弱さゆえです。ただただ後悔しています(②)。再発防止策として〇〇を考えており、また進捗(しんちょく)はご報告する予定です(③)。なお、謝って済むはずではないと思いますので、責任者と相談し〇〇という処分を受けることにしました(④)」
といった発言が考えられる。とくに重要なのが②と④で、②は聞き手に「たしかにそうだよなあ。俺だって人間だから間違いくらい犯すよなあ」と思ってもらうのが重要だ。
そして④だが、会社の不祥事の際によく記者から「辞職なさるおつもりはありませんか」という質問が飛ぶものの、「会社は株主のものですが、株主からこの処分を受け入れるよう言われました」と説明すれば、それ以上の追及はありえない。
肝要なのは、そこで全部ゲロってしまうことで、追加の不祥事が出ても問題がないようにせねばならない。隠蔽(いんぺい)はメディアの餌になるからね。
ところで、追及するメディア側の不倫状況はどうか。記者の不倫を調査する第三者機関が誕生すれば、日本は大きく変化するだろう。もちろんメディア側は無視するだろうけど、部数はさらに落ちるだろうな。