渡辺雅史わたなべ・まさし
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第78回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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レンタル自転車を使った冬のウーバーイーツ配達は皆さんの想像以上に冷える仕事です。
スピードが出るバイクのほうが冷たい空気に思いっきり当たるので、配達中の体感温度は厳しいものになると思われます。ですが、エンジンをかけていればバッテリーを経由して電力が得られるので電熱ウェアなどを着て配達することができます。
スマホ充電用のバッテリーを持ち歩けば電熱ウェアは使えますが、朝から晩までフル稼働するためにバッテリーを3個持ち歩いおり、ウェア用にさらに何個か持ち歩くとなると持ち運ぶのに大変な量となりますし、毎日の充電も大変です。
また、自分の自転車を使えばハンドルカバーを取り付けることができます。スマホを操作することが多い配達は、手先の防寒対策があるかないかだけで仕事のキツさが大きく変わります。
私も冬場は着用したままでスマホ操作ができて防寒効果の高い裏起毛の手袋を使って配達していますが、それでも配達を始めて1時間も経たないうちに指先がキンキンに冷えてしまいます。
そんな厳しい環境でも配達が続けられるのは、Googleマップを活用してよさげな休憩ポイントを探し出す手法を身につけたから。
そこで今回は、フードデリバリー配達員はもちろん、一般の方にも役立つかもしれない、体が芯まで冷え切った時のオアシスの探し方を紹介します。
東京都内は銭湯が多いので、「銭湯」と入力するだけで都心部でも自転車で10分から15分ほどで到着できるところが出てきます。ですが、体がガチガチに冷え切った状態だとぬるめのお湯でも熱湯のように熱く感じてしまい、入ることができません。
あと、これは東京都内だけかもしれませんが、銭湯を利用する方の多くは熱めのお湯が好みのようで、40度から42度に設定するところは少数派。45度ほどに設定しているところもあるので、冷え切った体で入ることは不可能です。
そんな時は日なたにある公園のベンチに座って休憩するのが一番ですが、真冬の昼間は公園に通う常連さんや地域猫が座っていて席が空きません。また夜間にベンチで座っても体は冷える一方です。
そこで、体を温めてくれる無料のスポットが地下鉄の線路の上にある通気口。特に東京メトロ銀座線、丸ノ内線、東西線、日比谷線、都営地下鉄浅草線など50年以上前に作られた路線は、地下の浅い場所や道路のすぐ下を走っていることが多く、通気口の金網の上に立っていると電車が通るたびに温かい空気が上がってきて快適。
なので、体が冷えた時はGoogleマップで歴史のある地下鉄路線がどこの道路の上を通っているかをチェック。現地に行って歩道上に通気口で体を温めています。
配達中、体を温めてくれるのはうどん屋のダクト。大量のお湯を使ってうどんをゆでている釜の上には大きな換気扇があります。この換気扇で吸い上げられた温かい蒸気は店の外にあるダクトから排出されます。夏場は地獄ですが、冬場は温かな湯気がモクモクと出る天国のようなスポット。
冷え切った上に乾燥した手をダクトから出る湯気に当てると指の感覚がよみがえってくる癒やしの場所です。お店に迷惑がかかるのでGoogleマップで店を検索していくようなことはありませんが、冬はうどん屋からの配達依頼を積極的に受けるようにしています。
寒くなると頻繁に行きたくなるのがトイレ。Googleマップに「トイレ」と入れて検索すると公衆トイレの位置がズラッと出てきますが、公衆トイレは日陰や風通しのいい場所など寒いところに立地しているところが多く、この時期に用を足すのはつらい場所。
そこで調べるのは役所の支所、出張所や図書館、図書館などの公共施設。東京都内は面積の狭い区でも区役所の出張所が少なくとも2、3ヵ所あります。また、区が図書館を運営しているところも多いです。
さすがに長居するのはマナー違反なので、我慢できなくなった際はGoogleマップで調べて訪れ、自転車置き場に自転車と大きなリュックを置いてから建物へ行き、総合案内の方にひと言断りを入れてトイレを借り、終わったら総合案内にひと声かけたり、売店があるところでは一品購入しています。
食事を兼ねた休憩でよく訪れるのは、中華ファミレスの「バーミヤン」。中華のメニューが売りのこのレストランの特徴は、ドリンクバーに多彩な茶葉が用意されていること。急須も用意されていて、それに茶葉を入れてお茶を淹れるシステムになっています。
この急須に茶葉を入れずにお湯だけを満たすと、冷え切った手を温めるのにぴったりのアイテムとなります。フタがついているので寒くて手が震えてもテーブルにお湯がこぼれる心配はなく、いつまでも温かな急須は感覚を無くした指にぬくもりを与えるのにピッタリのアイテム。小籠包などの温かい食べ物とドリンクバーで600円程度なので体を温める休憩場所として最適です。
体を冷やしすぎると体調を崩してしまう季節。今回紹介したことが皆さんのお仕事にとって使えるアイデアかどうかはわかりませんが、参考にしていただけると幸いです。
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。