いきなり自分のフルネームを言われてドキッ!! いきなり自分のフルネームを言われてドキッ!!
非通知で「オレオレ」と語り、ターゲットは高齢者というイメージだった電話詐欺。今は闇バイトが増えた影響もあり、若者でも引っかかりそうな手で迫ってくるという。その手口と対策をあらためて聞いてみた!

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■携帯電話に番号通知でかかってきた!

ここ週プレ編集部に悩める者がいた。―41歳、男性、会社員。

「先日、080から始まる知らない番号からの着信を取ったところ『警視庁捜査2課の○○です。×山△男(自分の本名フルネーム)さんの電話ですか』とかかってきました。

警視庁というフレーズや、なぜ俺のフルネームを知っている!?とドキドキしながら、『そうです』と答えると、『新潟県警での捜査であなたの名前が挙がっています』と言われ、このあたりで冷静に『なぜ新潟?』となり、いぶかしげに『はい?』と答えたところ、ガチャッと向こうから電話を切られてしまいました。

調べてみると今はやっている電話詐欺の手口のようですが、なぜ俺に? そしてフルネームまでバレていることにモヤモヤしています。電話詐欺の最新の手口や対策を教えてください」

この相談に答えてくれたのは、ノンフィクション作家で犯罪ジャーナリストの石原行雄氏と、元特殊詐欺主犯として逮捕服役、現在は犯罪撲滅活動家のフナイム氏。

――電話詐欺=高齢者宅を狙うものというイメージがありましたが、今は携帯電話にかけるものも増えているのでしょうか?

フナイム 警察官を騙(かた)る詐欺は昔からある手口で、確かに以前は高齢者の自宅を狙って電話をかけていました。ですが、今は個人のスマホに電話をかける手口に変わってきています。

個人のスマホの番号などの情報はさまざまなところで売買されており、簡単に入手でき、なおかつ圧倒的にリストの母数も多いため、詐欺に引っかかる可能性のある人が増加します。今後も増えていくと考えられます。

電話詐欺はコスパやタイパがいい 電話詐欺はコスパやタイパがいい
石原 電話詐欺はコスパやタイパがいいんです。口座振り込みやレターパックでの現金送付をさせることができれば、電話一本で済む。

高齢者向けのオレオレ詐欺のような劇場型詐欺は息子役、被害者役、警察役など何人もの役が必要なものもありますが、警察からの電話のパターンはひとりで済ませられる可能性もありますので。

――最近はやっている闇バイトと関係あるのでしょうか?

フナイム 闇バイトと大いに関係しています。電話詐欺にはさまざまな役割があります。

・電話をかける【かけ子】(闇バイトが多い)
・お金の受け取り口座を準備する【口座屋】
・自身の口座を売ったり、貸したりする(闇バイト)
・口座から現金を引き出す【出し子】(闇バイト)
・スマホのSIMを契約する(闇バイト)

少なくともこれだけの人間が関わっています。

石原 この黒幕のトップには暴力団がいて、指示役は半グレと呼ばれるトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)。そして、実行犯は先の説明のように闇バイトです。

今ニュースになっている強盗を行なうグループと構成はまったく同じで、実施する内容が違うだけ。強盗を行なっているグループが詐欺電話をしている可能性もあります。そこでカモだと思われると、次は強盗のターゲットにもなりえるので注意が必要です。

――闇バイトの蔓延(まんえん)で急増しているのですね。

石原 そのほか、年末年始にも急増します。理由はふたつで、年末は借金の返済期日が設定されていることが多いので、闇バイトの応募者=捨て駒が増える。

そして、金融機関の休業などを懸念して現金をまとめて自宅に置いておく人が増えるので、郵送してほしい、現金を受け取りに行くなどの詐欺がしやすくなるのです。

年末は借金の返済期日が設定されていることも多く、闇バイトが増えて詐欺電話も増える 年末は借金の返済期日が設定されていることも多く、闇バイトが増えて詐欺電話も増える
――ターゲットはどうやって選ばれるのでしょう?

フナイム 詐欺師たちはリストの上から順番に電話をかけているので、リストだけでは相手がどんな人物かわかりません。電話をしてからターゲットにできるかを判断します。ちなみに、ターゲットにしやすい人は、

・話を聞く人 
・怖がる人 
・詐欺師の言うとおりにしてくれる人 
・ググったり調べない人 
・人に相談しない人 
・プライドの高い人 
・守りたいものがある人 
・連絡がしっかり取れる人 
・約束を守る人

です。このような揺さぶりには毅然(きぜん)とした態度を取ることが重要です。

■電話からお金を引き出す手口とは!?

――非通知だと無視するのですが、今回は080から始まる番号が通知されていたので出てしまいました。

石原 指示役は捨てスマホ(SIMカード)をたくさん持っています。おっしゃるとおり、非通知の電話は警戒されて出られないことが多いため、今は番号をさらして電話をしてきます。

また、電話番号の偽装表示もできます。『スプーフィング』という方法で、プログラミングで実現させたり、海外の違法サービスの悪用でもできる。オレオレ詐欺では、息子の自宅の電話番号を偽装表示させた例もあり、巧妙になっています。

――ちなみに、私は途中で切られてしまいましたが、冒頭の『新潟県警』のくだりの後どういう手口を使ってお金をだまし取るのでしょう?

石原 とにかく焦らせて正常な判断力を奪うことが基本なので、さまざまな方法でそれを仕掛けてきます。

『口座が悪用されている恐れがあるので、今すぐ新潟まで出頭してください』など不可能なことを言い、『そんな遠くに行けない』と返すと、『このままだとぬれぎぬでも犯罪者になってしまいます。示談金を支払えば解決します』『口座が悪用されていないか確認するために、一度こちらの口座にお金を振り込んでください』などというウソをついてきます。

そこで引っかからなければ、金融庁や銀行員など別の役が登場する劇場型シナリオに変わっていく流れも考えられます。また、『電話だけだと信じられない』と言うと、LINEのIDでつながって、偽物の逮捕状や警察手帳の画像を送ってくることもあります。

LINEまでつなげ、偽の逮捕状の画像を送って示談金を振り込ませる手口も LINEまでつなげ、偽の逮捕状の画像を送って示談金を振り込ませる手口も
――なるほど。あと、何より気持ち悪かったのが、電話番号とフルネームがひもづいてバレていること。どこから情報が漏れるのでしょう?

石原 個人情報保護法ができてから20年以上たっていますが、残念ながら個人情報はダダ漏れなのが現状です。

法に抜け穴が多く、取り締まりも甘い。情報を持ち出されたり、ハッキングされたりした企業は被害者という見え方で『ご迷惑をおかけして申し訳ありません』と謝罪するだけで済む状況で、ありとあらゆる名簿が流出しています。

そのほか、名簿会社に企業の従業員名簿や学校の卒業名簿などを小遣い稼ぎで売る人も少なくありません。1件数円~数十円程度ですが、学校の名簿で200~300人分なら1万~2万円にはなります。

また、不動産会社が持つ名簿であれば、勤務先、役職、家族構成、資産額なども流出し、狙われやすくなります。ほかにも、訪問販売で高級羽毛布団を購入した人のリストなども出ていて、それはイコール資産があって人を信用しやすいターゲットのリストでもあるので、高値で取引されます。ネット上では、アンケートサイトを装って個人情報を取るなどの手口も考えられます。

学生時代の名簿やネットアンケートなどあらゆるところから、名前と携帯番号などの個人情報が漏れる恐れがある 学生時代の名簿やネットアンケートなどあらゆるところから、名前と携帯番号などの個人情報が漏れる恐れがある
――つまり、いつ詐欺電話がかかってきてもおかしくないという状況なのですね......。では、最後に詐欺電話がかかってきたときにやるべきこと、やってはいけないことを教えてください。

フナイム やってはいけないのは、執拗(しつよう)にバカにしたり、『通報する』など相手の感情を逆なですること。住所がバレていて、宅配ピザが届くなどの嫌がらせをされたという事例もあります。最悪の場合、強盗のターゲットにされる可能性も考えられます。

では、するべきはというと、

・毅然とした態度で、相手の名前、住所、会社名や所属先、連絡先を聞き、確認してこちらから折り返しますと伝える。 
・聞いた情報を必ずGoogleなどで検索する。 
・相手のペースに乗らない。

これだけで相手は嫌がり、電話を切ります。不可能とわかれば、二度とかかってこないはずです。

皆さんもご注意を!