配達員の心が試される「追加配達」案件 配達員の心が試される「追加配達」案件

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第87回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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ウーバーイーツの配達には、ひとつの店の商品をひとつの配達先に運ぶ配達の他に、ふたつの店の商品を配達する2件同時配達、さらに3件同時配達というのもあります。このような「同時配達」に関しては以前「ウーバーイーツ配達員がBAD評価をつけられる最大の要因? 恐怖の3件同時配達」で書きましたが、今回はその変形版とでもいうべき「追加配達」について紹介します。

配達員が専用のアプリを立ち上げて待機していると、運営から配達の依頼がやってきますが、その依頼を受けて、受け取り先の店や配達先まで移動している時に舞い込んでくるのが「追加配達」です。

通常、配達料は「¥320」などと金額だけ表示される 通常、配達料は「¥320」などと金額だけ表示される

通常、配達で得ることのできる配達料は「¥320」と金額だけ表示されます。

金額の前に「+」の表示が出る追加配達 金額の前に「+」の表示が出る追加配達

一方の追加配達は「+¥314」と金額の前に「+」の表示が出ます。

この追加配達を受けると、現在の配達にプラスして新たな配達を行なうことになります。例えば、Aの店からaの家まで商品を届ける依頼を受注して店まで向かっている最中にBの店からbの家まで商品を届ける追加配達を受けた場合はこんな感じになります。

●本来のルート 
・Aの店→aの家 

●追加配達を受けた場合のルート 
・Aの店→Bの店→aの家→bの家 
もしくは 
・Aの店→Bの店→bの家→aの家 

簡単に言うと、最初に注文された方の家まで行くのに遠回りをすることになります。

また、料理を受け取って配達先へ向かう途中に追加配達が入る場合もあります。その場合はこのような流れとなります。

・Aの店→aの家に行く途中の場所→Bの店→aの家→bの家 
もしくは 
・Aの店→aの家に行く途中の場所→Bの店→bの家→aの家 

追加配達は、なるべく大回りにならないよう配慮されていると思うのですが、場合によってはとんでもない時間のロスとなり、最初に注文された方からBAD評価を受ける可能性があります。そのため私は「商品を受け取って注文された方への配達を始めたら、追加配達を受けない」ルールを一応、自分の中で決めています。

ですが「一応」と書いた通り、ルールを適用しない場合がふたつだけあります。

ひとつ目は長期間タイプのクエストの達成条件が目前に迫っているとき。

クエストというのは運営側が指定する配達回数を時間内に達成すると得られるボーナスで、ランチタイムやディナータイムなど短期間タイプのクエストと、月曜日から日曜日の1週間という長期間タイプのものがあります。私に出された1月20日から27日の長期間タイプのクエストはこのようなものでした。

配達員に対して運営が設定する「クエスト」の画面 配達員に対して運営が設定する「クエスト」の画面

1週間で70回配達すると5250円、それに15回追加で配達すると1125円、さらに25回追加で配達すると1875円のボーナスがもらえるというものです。

追加15回の1125円や追加25回の1875円はゲットできなくても諦められる金額ですが、クエストの期限まで残り数時間で配達回数が65回を超えていた場合は70回で5250円のために遠回りでも依頼を受けてしまいます。

もうひとつのパターンは提示される配達料がとんでもなく高額の場合。追加配達は320円の配達を行なっている時に「+¥182」など、配達料に少し上乗せされるだけのパターンが一般的です。ただ、ごくたまに350円ほどの配達をしている時にこんな表示が出ることがあります。

「+¥865」

年末年始などの注文が殺到する時期であれば、短距離の配達でもこのような金額の依頼が来ることはありますが、350円ほどの依頼を受けるほど注文が少ないタイミングでの追加配達は、自転車配達員にはほとんど振られることがない5km以上の長距離を運ぶ、もしくは配達員がまったくマッチングせず注文者のストレスが溜まっている可能性が高い案件。

場合によっては最初の配達先、追加配達先の2件から「到着時間が遅い」BAD評価を受ける可能性があります。ですが、安い依頼ばかりの中で突然現れる大きな数字はとても甘美なもの。心の弱い私は、数字を見た瞬間に配達先などの情報をあまり確認せず、つい「承諾」のボタンを押してしまいます。

ちなみにこの追加配達はリュックの中に1件、もしくは2件の商品が入っている状態であれば入ってくる可能性があるようで、知り合いの配達員に聞いたところ「年末年始の配達員が足りない時期、2件目の配達から3件目の配達に向かう際、追加配達の依頼が入りまくって、全部の依頼を受けたら本来3件目で配達するはずだった人のところになかなかたどり着かなかった」と話していました。

「マッチングしたら早く商品を届けろ」という注文された方のお気持ちもわかります。運営側の「依頼を受けるかどうかは配達員の自由」というルールも承知しております。ですが、絶妙な金額で追加配達を提示されると......。追加配達は人間の心が試される案件です。

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渡辺雅史

渡辺雅史わたなべ・まさし

フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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