友清哲ともきよさとし
ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
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40業種の年収・ボーナス・ベア有無を大公開&働く男500人にアンケート!!
「大企業に賃上げが広がれば、自然と中小企業や自営業者にもその波が広がる」と信じられているが、それってホント? ここ数年の春闘では歴代最高水準の回答を得ているのに、実質賃金はいまだマイナス。そんな不思議なニッポンのリアルな賃金事情を全力調査!!【みんなの給与明細 2025年 春闘ど真ん中Ver. Part1】
※本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。また、すべて個人に対する取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません。
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「大企業神話は崩壊した」といわれて久しいが、果たしてホントか? 実態に迫る!
●朝日新聞 記者(女/20代半ば)
<年収>670万円
<冬のボーナス額>85万円【前年比】→
<ベアは?>なし
入社2年目の警察担当。若手が警察を担当するのはどこの新聞社も同じで、事件があったら記事を書くのが基本的な仕事だが、警察と良好な関係を構築してネタを流してもらったり、事件の捜査状況をこっそり教えてもらったり、地道な努力が非常に重要。
2年前に赤字になり、経営状況は決して芳しくないが、だからといって経費や出張費についてうるさく言われることがないのはありがたい。若い人材の流出を恐れてか、若手の待遇もいい。しかし、読者の感情に訴えかける「エモい記事」を電子版に出しすぎていたり、記事が全体的にリベラルすぎるのは気になる。
●大塚商会 DX推進(男/30代半ば)
<年収>900万円
<冬のボーナス額>110万円【前年比】↑
<ベアは?>なし
担当領域はDX推進。例えば顧客の各事業の成長性や効率性、利益率などの詳細を可視化してリポートをするのが役割。大手らしく、かなり伸び伸びと働かせてもらっているので不満はないが、業務フローを整備しきれておらず、休みを取ったときに代わりがいないのは難点。
業績は良好。2024年度初めて売り上げが1兆円を突破し、全社員に10万円の特別ボーナスが出た。DX関連事業の好調が主な理由。また、Windows10のサポート終了が近いということで、パソコンの売り上げが増えているのも追い風か。23年度はインフレを受けて5000円のベアがあった。
●NHKディレクター(男/20代半ば)
<年収>800万円
<冬のボーナス額>100万円【前年比】↑
<ベアは?>なし
報道や制作の現場でディレクターをやっている。2~3年に1度の頻度で部署異動があり、制作班はドラマや音楽、エンタメ系の番組を担当することもある。一方、報道班は政治、経済、社会などジャンルごとにきっちり担当が分かれている。ただし人の少ない地方局の場合は、もう少し柔軟にジャンルを越境している。
華やかな業界ではあるが、一般的な民間企業と比べて縦割り行政の色合いが強く、上次第で方針がころころ変わるのは不満。
特に会長が替わるとデジタル化の方向性なども一気に変わり、局員は振り回されてばかり。官僚的、公務員的なNHK独特の体質が、局員の働きにくさにつながっている面は強いと思うが、これは諦めている。
業績についてはNHKの場合、ほかに指標がないのでいまだに視聴率で判断するしかないのが実情。番組の質で業績を測る尺度を設定しようとか、番組に対する好感度を指標とする案が出ているようだが、進んでいる様子はない。
知名度の高い企業ではあるが、反感を買っている側面も強い。NHKの視聴者センターに苦情を言う人間がどこにいるかわからないので、「外で酒を飲むときはうかつにNHKと名乗らないよう気をつけましょう」と上層部から言われている。
●メガバンク支店営業(女/40代前半)
<年収>890万円
<冬のボーナス額>110万円【前年比】↑
<ベアは?>あり
都内の某ベッドタウンの支店で営業を担当。付き合いの長い富裕層を相手にすることが多く、資産が億を超える人を集中的にケアしている。地域の富裕層は高齢者ばかりなので、銀行に出向いてもらうより、自分から訪問して金融商品などを勧めたほうが効率的だ。
ただし最近、闇バイト強盗や証券会社社員の強盗未遂事件などが相次いだせいで、自宅に来られることを警戒する顧客が増えていて営業がやりにくい。また、顧客の子供世代の金融リテラシーが上がっているため、「無駄な商品を買うな」と厳しく言われている顧客も多い。
そこで注力し始めているのが遺言・相続の支援サービス。生前に遺言を作るサポートをして、相続発生時にそれを執行。相続専門の税理士と連携して納税まで支援する。
富裕層の相続は資産や各種口座が至る所に散らばっていることが多く、膨大な手間がかかるから、すべての作業を丸投げできるこのサービスは心からオススメできる。まあ、銀行側は手間の割に儲けが少ないのだが。
業界全体として、銀行は斜陽といわれた時期は脱した感があるが、若くて優秀な人材の流出は止まっていない。そのせいで、すさまじい勢いで支店の統廃合が進んでいる。
●プライム上場の商社 IT企画部(女/20代後半)
<年収>740万円
<冬のボーナス額>33万円【前年比】→
<ベアは?>あり
昨年から関連会社に出向し、社内システムの選定や、その使い方のレクチャーなど、DXに関するなんでも屋のようなポジションにいる。
輸入メインの企業なので昨今の円安は逆風だが、輸出事業の利益率が高いのでむしろ儲かっている。ただ、大手ならではの雰囲気に対して、「ぬるい職場でつまらない」「頑張らなくても潰れないからやりがいがない」と、若手がもっとギラギラした同業他社に行ってしまうパターンが多い。
自分は転職したいと思ったことはないが、早く本社に戻りたいと思っている。多少のミスは許される空気があるので、居心地はいい。
●ゼネコン 現場監督(男/40代前半)
<年収>1100万円
<冬のボーナス額>100万円【前年比】↑
<ベアは?>なし
ホテル建設の現場監督として、作業の進行管理や取りまとめを主に担当している。ホテル建設ラッシュでここ数年は忙しく、沖縄などリゾート地を転々とするのはいいが、夏の現場は酷暑で本当に大変。でも、大きな施設が完成するのはうれしいしやりがいがある。
最近は女性の登用に積極的だが、フィットするのが難しく、結局は人手不足のしわ寄せが自分たちに来る。
先日管理職に昇格して基本給は上がったが、残業代が出なくなり、年収は大きく変わらなそう。しかし業績は良好で、ホテルバブルはまだまだ安泰。待遇にもおおむね満足している。
取材/井澤 梓 伊藤将史 佐藤 喬 田口ゆう 友清 哲 西田哲郎 東田俊介 室越龍之介 茂木響平
ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
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