事業がヒットし引く手あまた! やっぱり給与もガッポガッポなのか!? 事業がヒットし引く手あまた! やっぱり給与もガッポガッポなのか!?

「大企業に賃上げが広がれば、自然と中小企業や自営業者にもその波が広がる」と信じられているが、それってホント? ここ数年の春闘では歴代最高水準の回答を得ているのに、実質賃金はいまだマイナス。そんな不思議なニッポンのリアルな賃金事情を全力調査!!【みんなの給与明細 2025年 春闘ど真ん中Ver. Part4】 

※本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。また、すべて個人に対する取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません。

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■この世の春を謳歌! 今を時めくテーマ企業

●キャラクタービジネス 営業(女/40代前半) 
<年収>720万円 
<冬のボーナス額>100万円【前年比】↑ 
<ベアは?>なし 

アニメや漫画、ゲームなどの版権を管理する、ライセンス代理店的な業務が中心。人気キャラクターを扱っているおかげで、新卒採用や転職市場ではやたら人気があるが、社風としてはみんなのんびりしていて、ギラついた人材は少ない。

さほど大きな会社じゃないのに手がける領域が幅広いので、隣の部署が何をやってるのかまったくわからない。そのため異動があると覚えることが多すぎて、離職があるとするとたいていそのタイミングとなる。まあ、離職者は少ないが。

給料は安いしあまり上がらないが、居心地がいいので辞めようとは思わない。

●M&A仲介 コンサルタント(男/30代後半) 
<年収>1300万円 
<冬のボーナス額>80万円【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

会社を売りたい企業と買いたい企業をマッチングする仕事。M&Aといっても、上場企業同士の大規模なものから、後継ぎのいない零細企業が第三者に売るパターンまでさまざまだが、自分の会社は主に後者。

意外と専門知識は不要で、経営難で情緒不安定になった経営者の電話対応をしたり、理不尽なクレームに頭を下げたりというのが業務の7割を占める。

成果報酬があり、それも割と高給な業界なので人気があるが、悪質な業者がニュースを騒がせたこともあり、インセンティブは減少傾向にある。今後は免許制の導入など国の規制が厳しくなることも予想される。

●Web広告代理店 ディレクター(男/20代後半) 
<年収>400万円 
<冬のボーナス額>40万円【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

企業のオウンドメディアを中心に、SEO(検索エンジンで上位に表示されるよう工夫すること)記事のディレクションを担当している。具体的には、ライターにSEO記事を外注し、受け取った原稿のクオリティチェックや誤字脱字の確認など、編集者のような作業が中心。

自分は障害者雇用で、最初の1年半は障害者のみの部署で働いていたため、仕事は非常に少なく、数日に1本だけ記事をチェックすればいいという楽な状態が続いていた。その後、健常者中心の部署に異動すると、ページ閲覧数などを確認したり、クライアントと打ち合わせをしたりと、さまざまな業務に忙殺されるように。

なお、障害者雇用の人たち全体を見ると、8割はバックオフィスのサポートをやっている印象。たいていの企業と同様、給与は障害者も健常者も同じ。ただ、障害者にはどうしても、できる仕事とできない仕事があり、結果として実績に差が生まれ、昇進が遅れて待遇に差が生じることはある。

業績は上がっているが、利益はそこまで伸びていない。SDGsやトランスジェンダーについての研修を積極的に行なったり、地方創生に貢献しようというコンセプトで地方の人をかなり採用していて、コストが大きいようだ。

●データセンター管理 システムエンジニア(男/20代後半) 
<年収>480万円 
<冬のボーナス額>45万円【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

大手の子会社で、データセンターのシステム構築や運営管理をする部署にいる。仕事はほぼすべて親会社やグループ企業からの受注なので、商談のようなものもなく、特にAI特需といったこともない。

また、社内データ管理の改善や、データセンター活用の啓発、セキュリティ対策の啓蒙活動なども業務に含まれる。グループの中には人件費高騰や円安などに苦しめられている会社もあるようだが、自社にはあまり影響はない。

コロナ禍から始まった在宅勤務制度がまだ残っており、週1程度の出勤でOK。やりがいも意欲もないが、おかげで転職願望もない。

●教育コンテンツ販売 営業(男/30代後半) 
<年収>600万円 
<冬のボーナス額>なし【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

動画編集のスキルを身につけられるコンテンツを販売している。本来なら独学で習得できる編集ソフトの使い方を数十万円で教える内容で、いわゆる情弱向けビジネス。本当に稼げる人は有料講座は受けない。修了しても案件にありつくのは難しいはずだし。これは自分自身も副業としてフリーで講師業をやっているからこその実感だ。

動画編集はニーズが拡大しているイメージがあるかもしれないが、ほどなく供給過剰になると予測している。今は黙っていても勝手に教材が売れているが、バブル崩壊後を見据え、身の振り方を考えなければと真剣に思っている。

●住宅メーカー エンジニア(男/40代前半) 
<年収>460万円 
<冬のボーナス額>40万円【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

大手ゼネコンの名を冠する子会社。親会社がそこそこ高い平均年収を公開しているため、自分たちも高給取りだと対外的には思われがちだが、とんでもない話。競合他社の待遇がいいので完全に人手不足だし、給料も安くてなかなか上がらない。それでいて残業が多いので、みんな不満たらたら。

同じく人手不足に悩む親会社への転籍が可能という噂はあるが、成功者がおらず信憑性に乏しく、自分もチャレンジできずにいる。

住宅など不動産の高騰により景気のいい業界ではあるが、競争が激しいのであまり恩恵は感じていないのが実情だ。

取材/井澤 梓 伊藤将史 佐藤 喬 田口ゆう 友清 哲 西田哲郎 東田俊介 室越龍之介 茂木響平

友清 哲

友清 哲ともきよさとし

ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
Instagram【satoshi.tomokiyo】

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