最後は、希少すぎる職業が登場。給与はもちろん、業務内容も興味深すぎる! 最後は、希少すぎる職業が登場。給与はもちろん、業務内容も興味深すぎる!

「大企業に賃上げが広がれば、自然と中小企業や自営業者にもその波が広がる」と信じられているが、それってホント? ここ数年の春闘では歴代最高水準の回答を得ているのに、実質賃金はいまだマイナス。そんな不思議なニッポンのリアルな賃金事情を全力調査!!【みんなの給与明細 2025年 春闘ど真ん中Ver. Part7】 

※本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。また、すべて個人に対する取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません。

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■まず出会えないお仕事の実態に迫る! 激レア職業

●東京大学 特任研究員(男/30代前半) 
<年収>360万円 
<冬のボーナス額>なし【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

医師免許と博士号を保有しているが、現在は臨床を行なっておらず、動物実験が中心の研究業務を担っている。研究職は業績を上げられなければ後がないので、雇用が不安定なのが大きな欠点。自分の場合は医師という退路もあるが、ほかの研究者は大変だと思う。

学生時代の同期と集まると、同程度の学歴やスキルを持っている人たちと比べて自分の給与が低いことを実感させられる。しかし、そういう待遇を覚悟の上で研究者になったので不満はない。ただ、若手研究者の待遇が数十年前からほとんど変わっていないのは問題だと思う。

●探偵(男/40代前半) 
<年収>300万円 
<冬のボーナス額>なし【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

探偵事務所に勤務している。依頼内容はさまざまで、不倫調査は張り込みや尾行が大変だが、結果が出たときの達成感は大きい。盗聴されていると企業から依頼を受け、株主総会に参加して盗聴器を捜したこともある。

最近増えているのは社内調査で、休職している社員が実はほかの企業で働いているケースがあった。ギャラは稼働1時間につき1万円程度で引き受けている。泊まり込みの不倫調査だと数十万円かかってしまうが、それでも依頼は絶えない。

ちなみに探偵にはなぜかパワーストーンをつけている人が多いが、それは運に左右される仕事だからか。

●猟師(男/30代後半) 
<年収>42万円 
<冬のボーナス額>なし【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

活動できる季節が限られているため、純粋な狩猟での収入は少なく、夏の間はキャンプ場や山小屋の雑務を請け負ったり、アイスクリーム工場で働いたりしている。また、地域の協議会が食肉処理施設や林業の手伝いを募集することもあり、細かな山仕事がけっこうある。

マタギが狩猟だけで生計を立てられていたのはせいぜい第2次世界大戦ぐらいまでで、当時は毛皮の需要が高く、コート用の毛皮をとることで高い報酬を得ることができた。最近は全国的にシカやイノシシが増え、駆除の仕事が少し増えている。害獣駆除は1頭で1万5000円になる。

●高齢者向けデリヘル 代表取締役(男/50代前半) 
<年収>700万円 
<冬のボーナス額>なし【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

高齢者を対象とした、デリヘルサービスを運営している。アナログ世代が相手のため受付は電話で行なっているが、着信を見て折り返しても、20時以降は就寝していてつながらないことがよくある。

キャストと高齢者をアテンドするのは楽しい仕事。うちはキャスト自体も客として扱っており、スタッフは自分だけ。だから、なんでもすべて自分で決定できる醍醐味もある。今のところ仕事になんの不満もない。

普通のデリヘルが稼げないので移籍してくるキャストも多く、つまりデリヘル業界は縮小傾向なのだろう。しかし、高齢者デリヘルは右肩上がりで絶好調だ。

●占い館勤務の占い師(女/60代前半) 
<年収>1000万円 
<冬のボーナス額>なし【前年比】→ 
<ベアは?>なし 

占い館に来場する客をタロットで占うほか、広報活動の一環としてメディアの取材などに応じることなどが主な仕事。客は女性がメインなので恋愛相談が大半で、占いへの依存度の高い人がとても多い。

困ってしまうのは、精神的に不安定な客ほど占いの結果に対する逆恨みが強いことで、ネット上に悪口を書かれることもしばしばある。

なお、近所に精神科病院があるため、カウンセリング代わりに利用する精神疾患の人や、ひきこもりの子を持つ親なども割と頻繁にやって来る。時には政治家や著名人がお忍びで、自分の子の障害について相談に来るなど、占いは意外と福祉的な側面も強いのかもしれない。

売り上げは施設と折半。自宅で占っていたときのほうが実入りは良かったため不満ではあるが、自宅時代はストーカーに悩まされたので、致し方ない。

コロナ禍でも電話鑑定をやったおかげで客足を維持できたが、最近、同じエリアに最新のAIを導入した占い館ができたため、前年度と比べて売り上げが落ちてしまったのが残念(昨年は1500万円)。

ちなみに人々が不安になるからなのか、不景気なときほど占いの相談が増える傾向がある。それゆえこちらは稼げるというのは皮肉だ。

取材/井澤 梓 伊藤将史 佐藤 喬 田口ゆう 友清 哲 西田哲郎 東田俊介 室越龍之介 茂木響平

友清哲

友清哲ともきよさとし

ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
Instagram【satoshi.tomokiyo】

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