相次ぐネズミ混入のニュース。繁華街を猛スピードでダッシュする姿を見かけたことはあるけど......。その生態はあまりよく知らない。というわけで、ネズミに関する素朴な疑問を聞いてみた!
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■飲食店あるある!? ネズミ被害の悲鳴
ネズミの被害が相次いでいる。今年1月に牛丼チェーンのすき家で味噌汁に混入していた事実が発覚。3月にもフードデリバリーで配達された袋に入っていたという騒動が起きた。実はあなたのすぐそばにもいるかもしれない〝害獣〟ネズミ。その生態をあらためて調査してみた!
まずは、飲食店のネズミ被害の実例をご紹介。
「夏にエアコンが使えなくなり業者を呼んだところ、ネズミに電気配線をかじられていたことが発覚。ダクトの穴からエアコンの中に数匹が侵入し、断熱材もボロボロになるまでかじられていたとのことです」(中華料理店)
「古いビルの1階なので覚悟はしていましたが、テーブルの上に置いていた未開封のパックジュースに穴が開き、中身がこぼれていたことでネズミの侵入を確信。市販の粘着シートや毒エサを置いてみたものの捕まえられず、業者に駆除してもらいました。侵入経路の壁の穴も修理が必要だったため1週間休業させられました」(スナック)
「換気扇に巻き込まれてネズミが死んでいました。お客さんからにおいの苦情があり部屋に入ったら、確かに臭い。業者に死骸を取ってもらいましたが、なんだかにおいは消えていないような気がします」(カラオケ店)
生理的に苦手な人からすると想像するだけでも鳥肌が立つ話だが、そもそもネズミの危険性ってなんだろう? 害獣駆除サービスを行なう「駆除ザウルス」の建築・環境衛生事業部部長、内田 翔氏に話を聞いた。
「ネズミがかじったり、糞尿をかけたりした食べ物を知らずに口にすると、サルモネラ菌で腹痛や下痢などの症状が出たり、レプトスピラ菌で発熱や嘔吐などの症状が出る可能性があります。
また、ネズミが出た場所にはダニが大量発生することもよくあります。ネズミ1匹につき1000匹のダニが寄生しているといわれていて、ネズミが走り回りながらダニをまき散らしていくのです。
さらに、ネズミは人間を恐れて近づかないのであまりないと思いますが、万一ネズミに噛まれたときは鼠咬症という発熱を伴う感染症になる危険性もあるので、必ず病院に行く必要があります」
ネズミはダニまみれ。それを落とし、人に発疹などの影響を及ぼす
■食べ物目当てだけじゃない!? 生態に関する疑問
危険性がわかったところで、ここからは一問一答形式で一気にネズミの生態に関する疑問を聞いていこう!
――なぜ人間のいる場所にわざわざ来るのでしょうか?
「実は食べ物以外が目当てであることも多いんです。カラスなどの天敵から身を守ったり、冬であれば暖かい寝床を探していたり。出産するために巣を作れる場所を探していることもあります。また、すんでいた建物が取り壊されると近所の建物が引っ越し先の候補となるようです」
――どんな飲食店に出やすいのでしょう?
「ネズミは油が好物なので、油をよく使うラーメン店や中華料理店からは駆除依頼が多いですね。また、肉よりも穀物が好きなので、小麦粉や豆類を扱うそば店、パン店などにも集まりやすいようです。
ちなみに『チーズが好き』というのは物語の世界だけの話です。おびき寄せるためのエサとして使ったことはありません」
――実際、食べ物に混入するケースは多いのですか?
「かなり珍しいケースかと思います。大人のネズミは警戒心が強いので、今回の飲食店での混入は子ネズミの仕業でしょう」
1回の出産で5、6匹が生まれる。赤ちゃんは悔しいがちょっとカワイイ
――ネズミにも種類があるのでしょうか?
「日本ではドブネズミとクマネズミの2種が主に生息しています。ドブネズミは大きく、クマネズミは小さくてよく動き回ります。街中でよく見かけるのはクマネズミです」
――出やすい季節はありますか?
「寒さに弱いため冬は暖かい場所を求めており、屋内で見かけやすいとも言えますが、夏も元気に活動するため季節を問わず現れると思います」
――ネズミはどこから屋内に侵入するのでしょう?
「ネズミは500円玉くらいの穴があれば建物に侵入できます。頭さえ通れば入れちゃうんです。古い建物はどこかしらに隙間や穴があるものなので、やはり入りやすい。新しくても配管が多いと入りやすかったりします。
もちろん1階の被害が最も多いですが、2階くらいまでは外壁を登れてしまいます。高層階は被害が少ないですね」
――もし身近に出てしまったら、ワナとして仕掛ける「毒エサ」は有効ですか?
「はい。われわれも駆除する際に毒エサを使うことが多いです。ただ、『スーパーラット』という、毒エサが効かないネズミも存在します。毒エサを妊娠中に食べて死ぬ前に出産すると胎児はその毒に耐性を持って生まれてくるという説があります」
――一度ワナに気づくと、もう同じワナにはかからないというのは本当ですか?
「捕まらない現場はまったく捕まらないので、学習能力と記憶力が高いのは事実だと思います。ちなみに捕まえられない場合は嫌がらせをして出ていってもらい、それから侵入経路をふさぎます」
――嫌がらせとは? ネズミが嫌いなものってなんでしょう?
「火事の察知能力が高いため、煙をたくと不安になって出ていきます。市販のネズミ用燻煙剤もそれなりに効果が期待できます。ハッカ、カプサイシンなどの刺激臭も苦手ではありますが、トウガラシ1本を置いたところで効果はほぼないため、身近なものでの対策は難しいでしょう」
――猫を飼うのは対策になりますか?
「猫はネズミを捕まえるので、部屋の中にネズミが出にくくなる可能性はあります。ただ、天井裏や床下にいる場合は関係ありません。以前、猫を5匹飼っているお宅からネズミの駆除依頼がきました」
――ネズミが出る家はゴキブリが出ないというウワサは本当ですか?
「確かにネズミはゴキブリを食べるので、出にくくなります。ネズミは警戒心が強く賢いため、人がいる時間帯は出てくることが少ない。最近ゴキブリを見かけなくなったなと思ったら、裏にネズミが潜んでいるかもしれません」
――もしや家にいるかも。発見のコツはありますか?
「サインは『かじられた跡』『フン』『足跡』の3つ。かじられた跡が一番わかりやすいですね。フンは黒く、お米のように小さい。足跡は掃除をせず埃がたまっている所に点々とした跡が見えることが多いのと、ネズミの通り道が黒くなる『ラットサイン』もあります。
人間も同じ所を触り続けているとだんだんそこが手あかで黒くなりますが、ネズミも汚れた足で毎日同じ経路で出入りするため、通り道が真っ黒になっていくんです」
――ちなみに、駆除を依頼したらどんなことをしてもらえますか?
「家の場合は被害状況を見て、どこから入ってきたかまずルートを調べます。そして捕まえる、追い出す、フンを掃除する、巣を取る、消毒、侵入経路をふさぐなどの処置を行ないます。捕まえたり、穴をふさいで終わりというわけじゃなく、家をネズミが入る前の状態に戻してあげることが大切です。
店舗の場合は完全に侵入経路をシャットアウトできないケースもあります。ひとまずは厨房やお客さんから見えない所にワナを仕掛けて、定期的にチェックし、被害を最小限に抑えるという方法を取ることが多いです」
できれば一生見たくはないけど、もし出てしまったら速やかに駆除依頼を!