「悪い組ではなかった」という見方が支配的だが、この分析は、一見、冷静に見えて結局シローティー(素人)だと思う。確かにオーストラリアを思えば最悪ではない。が、十分にキツイ。韓国を見てくれ。うらやましくて泣けるぞ。
C組には地味な実力派が揃っている。コートジボワール、ギリシャ、コロンビア。ビッグネームの伝統国ではないが、FIFAランキングは低くない。っていうか高い。問題はしかし順位ではない。相性と根性と国民性だ。サッカー以前のメンタルの部分で、どこまでガツンとカマせるか。
コートジボワールはすなわちドログバだ。泥なドリブル。グバなヘッド。怖い。なので、闘莉王を呼ぼう。何しろ故郷に錦の晴れ舞台だ。感激屋のあいつは死ぬ気で頑張るはずだ。そう。必要なのは死ぬ気だ。あるいはもう一歩踏み込んで殺す気だ。闘莉王はそれを持っている。ドログバさえツブせれば勝機はある。正気なんか要らない。その意味でも闘莉王をぜひ。頼む。
ギリシャは、評判を聞くに、堅守カウンターの亀の子チームらしい。とすると、ウチにとってはモロに苦手な相手だ。実のところ、わがサムライブルー(←直訳すると「鬱役人」だぞw)は、調子ぶっこいた強豪国にはわりと強い。先日のオランダ、ベルギー連戦や、チーム結成当初のアルゼンチン&フランス戦を見ても明らかな通り、舐めてかかってくる相手には相当に良い闘いをすることになっている。
が、ギリシャはそういうチームではない。イレブンは、欧州屈指の失業率と底なしの経済危機で鍛え上げた鉄のメンタルを持っている。悪妻の迫害を哲学に昇華したソクラテス以来の伝統で、とにかく逆境には滅法強い仕様だ。ってことはウチとしては、逆にあんまり追い詰めない方が得策だ。勤勉に守ってチマチマ攻める。休まない、止まらないブラック企業作戦だ。で、ロスタイムに決めて逃げ切るサービス残業シュートで劇的勝利だ。岡崎が決めてくれるだろう。
最終戦のコロンビアには、正直、勝てるイメージが湧かない。南米のズルくて激しいフッチバルに、ウチの国の世襲官僚(←サムライね)蹴球がどうやって闘えば良いというのだ。2トップのファルカオとバッカは強烈。メデジンでラリラリな中盤も変幻自在。勝つプランがない。ってなわけで大切なのは、前の2戦で勝ち点を積み上げ、コロンビア戦を消化試合としてこなす戦略だ勝利は必ずしも要らない。それゆえ主力も出さない。1、2戦をたっぷり休んだ控え組が、飄々(ひょうひょう)としたパス回しで相手を攪乱(かくらん)できれば上出来だ。私見を述べるに、遠藤のコロコロパスと今野の侘(わ)び寂(さ)びディフェンスが効果を発揮してくれるはずだ。引き分け上等。2勝1分けで、見事決勝トーナメント進出だ。
3戦を通じて言えるのは、経済力では圧倒的にウチの国が優位だということだ。これは、案外バカにならないプラスポイントかもしれない。前泊のホテルで着こなす私服や、街中での観光で、成金趣味を全開にして相手国を圧倒したいところだ。本田には純金の総入れ歯ぐらいの変身をお願いしたい。大丈夫。勝てる。
●小田嶋 隆(おだじま・たかし) 1956年生まれ。近著に『ポエムに万歳!』(新潮社)。浦和レッズファンとしても知られる