サッカー日本代表、本田圭佑がACミランに移籍して以来、イタリア・ミラノでは“狂騒曲”が続いている。
デビュー戦となった12日(現地時間)のサッスオーロ戦では、1点ビハインドからの途中出場で試合の流れを変え、現地メディアから絶賛された。
『ガゼッタ・デロ・スポルト』紙のパオロ・ファルコリン記者もこう語る。
「弱小チームに逆転されるという難しい場面でデビューを強いられたミランの選手はそうはいません。それなのに本田は非常に冷静で、混乱していたチームに秩序まで与えた。非常に高いプロ意識を持っていることに驚かされました。本田が入ってからのミランの動きは目に見えてよくなった。同点には追いつけなかったが、1点を返すことができたのは決して偶然ではありません」
次戦のイタリア杯・スペツィア戦でホーム、サン・シーロでのデビューを飾ると、セリエA初ゴールを奪取。続くベローナ戦では、一転して厳しい評価を下されたが、これも名門ACミランの新10番に対する期待の裏返し。ミラノでは、常に本田が話題の中心にいる。
この“ホンダ狂騒曲”には、今季のミランの惨状の裏返しという面もあるようだ。
リーグ戦はサッスオーロ戦まででたったの5勝。首位ユベントスには勝ち点30も離される一方、降格圏からは勝ち点6しか差がない。不振の原因はケガ人が多いこともあるが、「開幕前から優勝争いは無理といわれ、目標もモチベーションも見いだせない。だからサッスオーロ戦のように、集中力、注意力が散漫なプレーが出てしまう」(前出・ファルコリン記者)というのだ。
ファルコリン記者は、ミランの苦しい現状と、本田を熱烈に迎え入れたサポーターの心情をこう説明する。
「ミランは危機的状況にあります。しかも懐(ふところ)具合が苦しく、以前のように高額なスター選手を買うこともできない。そんなチームにサポーターはかなりの不満を持っており、彼らの気持ちを高揚させることができるなら、どんなチャンスも逃したくはないのです。本田は黄金期のミランを彩(いろど)ったようなスーパースターではないかもしれないが、いい選手だし、イタリアでもその名をよく知られていた。彼の加入を華々しく演出することで、暗いムードを吹き飛ばし、未来に希望を持たせようというのがミランの狙い。彼の名前の入ったユニフォームがたくさん売れているのは『救世主になってほしい』というミラニスタの期待の表れです」
セリエAで通用するのか?というレベルではなく、名門ACミランの“救世主”として期待されている本田。今は伝説の始まりなのかもしれない。
■週刊プレイボーイ5号「本田圭佑は“ミランの救世主”になれるのか!?」より