日本ボクシングコミッション(JBC)は2月7日、興毅、大毅、和毅の亀田三兄弟が所属する亀田ジムの吉井慎次会長と嶋聡マネジャーのライセンス更新を許可しない、と発表した。事実上の亀田ジム“国外追放”である。

この処分は、昨年12月に行なわれたWBA・IBF世界スーパーフライ級王座統一戦において、IBF王者である大毅が試合に敗れながら王座を保持した一件が直接のきっかけとなっている。

さらに亀田ジム関係者が過去5回もJBCから処分を受けている上、ライセンスを保有していない三兄弟の父・史郎氏の強い影響を受けていることも加味され、異例の厳罰が下されたのだ。今回の処分により、三兄弟のボクサーライセンスも自動的に失効することとなった。

ライセンスを失ったボクサーは、JBCの管轄地である日本で活動することができない。三兄弟が選手生活を続けるには、国内のほかのジムへ移籍するか、あるいは海外で活動するしかない。ただし、JBCは移籍先に関して「実績があり、信頼のおけるジム」であることを条件としており、史郎氏の影響力排除に断固とした態度で臨む構えだ。

どちらの道を選ぶにしても、従来とは異なる環境に放り込まれることになるわけだが、仮に三兄弟が国内でのジム移籍を選んだ場合、どのような事態が想定されるのだろう。ボクシングライターの原功氏が語る。

「まずメリットとしては、新たなジムで指導を受けることで、これまで彼らが確立してきたボクシングの土台に違う角度からの肉づけがなされ、よりレベルアップするという効果が期待できます」

しかし、これまで強い結びつきのあった父親の後ろ盾を失う影響は小さくなさそうだが……。

「確かに不安ではあるでしょうが、3人とも、もう10代の子供ではありません。しかも史郎氏はすでに大阪に戻っていて、三兄弟とは意識的に距離を取っている。本人たちの心がけ次第で父親離れはできるはずです」(原氏)

では、海外での活動を選んだ場合に考えられるシナリオは?

「三男の和毅がプロデビューの地とするなど、亀田家はメキシコに強力なコネクションを持っていて、現地のプロモーターとも密接な関係にあります。しかもメキシコのボクシング界で亀田三兄弟の名はかなり知られていて、商品価値も高い。世界王者として大きな試合を組むことだけを考えれば、日本国内でのジム移籍より、むしろメキシコでの活動を模索するほうが彼らにとってプラスに働くと思いますね」(原氏)

ただし、いいことずくめというわけにもいかない。

「貨幣価値が違いますから、日本で受け取っていたほどのファイトマネーはメキシコでは期待できません。また、活動拠点を置くとなるとそれなりに出費もかさむので、コスト的に引き合うかどうかの心配があります」(原氏)

結局のところ、どちらの道を選ぶのが、彼らにとってより良い選択なのか。

「和毅はそこそこ話せるとはいえ、興毅と大毅はスペイン語が堪能というわけではない。しかも興毅はすでに家庭も持っています。活動拠点として確かにメキシコは魅力的ですが、生活の中で彼らが直面するであろうさまざまなストレスを考えると、日本国内でジム移籍をするほうが、腰を据えてボクシングに打ち込めるのではないでしょうか」(原氏)

とはいうものの、興毅、大毅はかつての協栄ジム所属時代、何かとトラブルを起こしてきた過去がある。三兄弟受け入れの名乗りを上げる“実績ある”ジムが、そう簡単に現れるとも思えないのだが。