いよいよJリーグ開幕が迫ってきたけど、先日、僕はガンバ大阪の宮崎キャンプを訪れてきた。

目的は選手や監督、コーチ陣の前で話をするため。旧知のフロントの人間から「ハッパをかけてほしい」との依頼をいただいたからだ。

実は、ガンバがJ2落ちした昨年もそうした機会をいただいて、「ノルマはJ2で優勝してのJ1復帰。ただ、油断すると足をすくわれるよ」という話をさせてもらったんだ。彼らは見事にノルマをクリアしたね。

ただ、本来ガンバはJリーグを引っ張っていかなければいけないチーム。J2優勝に満足してもらっては困る。何しろ日本代表の中心である遠藤と今野がいて、飛躍を期待される若手の宇佐美もいる。そして、なんといっても再来年には約4万人収容の新スタジアムがオープン予定だ。それだけの規模のサッカー専用スタジアムを持てるのは、いまだに陸上競技場が主流の日本では本当に贅沢なこと。スタジアムに見合った魅力的なチームにならなければいけない。

だから、せっかくの機会なので、今年もいろいろ言わせてもらった。

なかでも僕が一番強調したのは、「謙虚な気持ちで戦え」ということ。J2では勝って当たり前。相手を見下ろして戦えた。でも、今度は相手のレベルが違う。甘く考えていたら、また痛い目に遭うよ、と。名門ガンバの看板を背負いつつも、今年がJ1初挑戦の徳島と同じく、がむしゃらになって戦わなければいけない立場なんだよと活を入れさせてもらった。

あとは個人目標をつくるということ。例えば、昨季途中に欧州から復帰した宇佐美は、18試合で19得点というすごい成績を残した。欧州では苦労したけど、やはり彼はそれだけの力を持った選手なんだ。ただ、欧州挑戦や日本代表を再び目指すなら、J1でも同じくらいの数字を残さないとダメ。

そこで、僕は彼にこう言ったんだ。「隣のチーム(セレッソ大阪)には、あなたと同じ髪の毛の色(金髪)をしたすごく人気のある日本代表FW(柿谷)がいる。でも、まだブラジルW杯出場メンバーは決まったわけじゃない。だから、絶対に彼に数字で勝つ。(日本代表の)ザッケローニ監督があなたを選ぶかどうかはわからないけど、あなたが結果を出したら、私は『なぜ宇佐美を代表に選ばないのか』と声を上げる。でも、結果を出さなかったら、そうした世論は生まれない。とにかく結果を意識しよう」とね。

仕事柄、講演など人前で話す機会は多いけど、選手たちはみんなしっかりと聞いてくれていたんじゃないかな。宇佐美も最前列に座っていた。僕の言葉に少しでも刺激を受けてくれたらうれしいよ。

ちなみに、(ガンバの)野呂社長にも「隣のセレッソがフォルランを獲ったんだから、ガンバも対抗しないとダメ。実現する、しないは別にして、香川(マンチェスター・ユナイテッド)にレンタル移籍のオファーを出したらどう?」と注文をつけさせてもらった。

スケジュールの都合で練習は見られなかったけど、遠藤や今野に聞くかぎり、調整は順調に進んでいる様子。ガンバは開幕戦で浦和、第4節に広島といった優勝候補との対戦がある。そこで勢いに乗り、いい流れで4月12日のセレッソとのダービーに臨み、Jリーグを盛り上げてほしい。

(構成/渡辺達也)