昨季は尋常ではない数のケガ人に悩み、“ヤ戦病院”と揶揄(やゆ)されたままリーグ最下位に沈んだヤクルト。小川監督は、「とにかく故障者を出さないように心がけた。それが最大の収穫だったかもしれない」という自虐ジョークでキャンプを総括したが、周囲の記者は誰も笑えなかったという。
「マジな話、全体的に軽めのメニューにしていたんです。だからケガしなかったのも当然といえば当然かも(苦笑)。でも、ホントに『ケガ人が少ない』というだけで雰囲気も明るかったですよ」(スポーツ紙・ヤクルト担当記者)
笑うなかれ。そもそもヤクルトというチームは、みんながちゃんと働けばAクラス争いを十分できるチームなのだ。7年ぶりにチームへ帰ってきた高津投手コーチもこう語っている。
「投手に関しては、基礎トレーニングに時間を割き、じっくり鍛えてきました。投げた球数は少ないかもしれませんが、シーズンを通して戦える体にはなっていると思いますよ」
先発陣でいえば、昨季はエースの館山が右肘の手術で0勝、由規も0勝(登板なし)。このふたりが実力どおり、合わせて25勝くらい挙げていれば、Aクラスは狙えた。
「由規は肩の故障で2年間休んでいましたが、今季は夏までに復帰確実。二軍キャンプの終盤には140キロ台後半の球速をマークしていました。館山もマイペース調整ながら、キャンプ中に一軍合流。小川監督も『館山は投げられさえすればOK』と語っているとおり、十分に計算できる状態です」(前出・ヤクルト担当記者)
さらに、新戦力としてはドラフト1位の即戦力ルーキー・杉浦も高評価だ。
「最速150キロのストレートとキレのあるスライダーが武器で、先発ローテ入りが濃厚。うまくデビューできれば、10勝はいける」(パリーグ某球団スコアラー)
今年は打線もスキなし!
昨季、新人ながら16勝を挙げて孤軍奮闘だった“ライアン”こと小川も、2月中旬の練習試合に登板して好投。対戦した中日の谷繁監督からは、「よく考えた投球をしている。2年目らしく研究している跡が感じられた。おごりがない」とホメられるなど、2年目のジンクスも心配なさそうだ。村中、石川という実績ある左腕コンビも健在で、先発の頭数はかなり豊富になる。
リリーフ陣にも新戦力台頭の気配がある。新人では、「サイドスローでクセがあり、楽しみな投手」(伊藤投手コーチ)というドラフト3位の秋吉が期待の星。3年目の古野、2年目の江村も力をつけてきた。
打線のほうでは、1年ごとに打撃フォームを変えては失敗してきた畠山が、今年は今のところ好調。昨季は足の故障で夏場にリタイアしたミレッジ、毎年のようにケガで長期離脱する川端、俊足の1番候補・山田らも、ここまで順調にきている。
「繰り返しますが、ケガがないことが最大の朗報。今季はいけそうな気配です」(前出・ヤクルト担当記者)
そして攻撃の中心はもちろん、昨季60本塁打という大記録を樹立したバレンティン。オフに夫人ともめて拘束され、法廷闘争に持ち込まれた精神的なダメージが心配されるが……。
「いえ、それがむしろ“クスリ”になったんじゃないかと思います(笑)。彼の性格からして、もし昨季の活躍を引きずったまま今季を迎えていたら、間違いなく手抜きに走っていた。あの騒動のおかげで、さすがに気を引き締めてキャンプに臨んでいましたからね。昨季と同じ成績を期待するのは酷ですが、ホームラン30本から40本、100打点を残してくれたら、十分に優勝争いに加われる。ほかにケガ人が多発しなければ、ですが」(ヤクルト関係者)
ヤクルトファンは、応援の前に、お祓(はら)いに行くべし!