3月8日、埼玉スタジアム2002で行なわれたJリーグの浦和vs鳥栖戦で、浦和ゴール裏の観客席入場ゲートに「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が掲げられた。

隣に日の丸の旗が並べられていたこともあり、この横断幕を目にした一部のサポーターは、試合前からツイッターで「差別的だ」とつぶやき始めた。さらに現場にいた浦和の運営スタッフに対し、横断幕を外すよう抗議した人もいたが、結局、撤去されたのは試合が終わった後だった。

浦和は当日のうちにクラブ公式サイトで「事実確認のうえ適切な対応に取り組んで参ります」と声明を発表。翌日には横断幕を掲げた当事者を特定して事情聴取を行ない、その人物から「差別的意図はなかった」との証言を得たことをJリーグに報告している。

一方、Jリーグはこの騒動から4日後の12日に初めて村井満チェアマンが記者会見を開き、翌13日にはJリーグ史上初となる無観客試合(23日の清水戦)という処分を下すことを発表した。 今回の“事件”は、どんな点が問題だったのかを整理しよう。

まず考えるべきは、「JAPANESE ONLY」という英語自体、差別的な意味を持つのかについて。というのも、試合当日の現場で、「浦和が外国人選手による補強を積極的に行なわないことに対する皮肉」だと感じた浦和サポーターもいたというからだ。

そこで、翻訳家にして、サッカー専門サイト『Goal.com日本版』の記者、そしてJリーグ事情にも詳しいイギリス人のベン・メイブリー氏に、問題の横断幕をどう受け止めたのか聞いた。

「英語のネイティブの感覚からすれば、あの言葉の解釈はひとつしかありません。『日本人以外はお断りだ』という明らかに差別的、排他的な意味合いです。“人々の目に触れさせてはいけない言葉”なのです。当事者への無期限入場禁止、浦和への無観客試合という今回のペナルティは適切でしょう。イギリスでも同様の処分が下されますから」

浦和やJリーグの対応の遅さや中途半端さの理由は?

ただし、どうにも首をひねらざるを得ないのが、当初の浦和やJリーグの対応の遅さや中途半端さだという。

「横断幕をすぐに撤去できなかったこともそうだし、浦和の公式サイトに出た声明の『差別的と解釈されかねない発言と行為がありました』といった言い回しに見られるように、どうも事態の深刻さを理解できていなかった印象を受けます。

そしてJリーグにしても、断固とした差別反対のコメントを試合の直後に発信しなかったですよね。あれにはがっかりしました。サポーターを教育するという意味でも、『絶対にあってはならないことだ』と、即座に、そして声を大にしてアピールすべきでした」(メイブリー氏)

そこには日本ならでは、Jリーグならではの事情が影響しているようだ。サッカージャーナリストの後藤健生氏が語る。

「プロリーグ発足から20年以上がたち、クラブもリーグも、サポーターの暴力問題に対しては対処法がほぼ確立されました。しかし、今回起こった人種差別という現象に関しては、どう対応すればいいのかわからなかったというのが実際のところでしょう」

では、今後Jリーグの各試合会場は、前例のないトラブルなどに対してどう対処していくべきなのか?

「文化や政治の面にも理解の深いマッチコミッショナーなりが、『これはオーケー』『これはダメ』と現場で素早く判断していくことが重要です。そうした個別の決定を積み重ねていくことで、一貫性のある基準というものが出来上がってくるのです」(後藤氏)

もちろん、一番望ましいのは、スタジアムからトラブル自体がなくなることなのだが……。