大物助っ人フォルランと日本代表の柿谷のコンビがどんな魅力的な攻撃サッカーを見せてくれるのか―。

今季開幕前にかつてないほど注目を集めたセレッソ大阪。ところが、Jリーグ開幕から約1ヵ月、順位表の上位にこそいるものの、試合内容はどうもパッとしない。

特に、フォルランが低調だ。運動量が少なく、途中交代も多い。試合中、周囲の選手が「フォルランに点を取らせよう」と気を使っているのは明らかで、フォルラン自身もそれに応えようとしているんだけど、噛(か)み合わない。期待が大きかっただけに、「あれ?」と思っているファンも多いはず。

まず問題なのは、本人のコンディション。もともと前所属クラブで試合間隔が空いていたところに、セレッソへの合流も開幕直前と遅れた。いくら南アフリカW杯得点王とはいえ、もうすぐ35歳のベテラン。しかも、今季のセレッソはアジア・チャンピオンズリーグを並行して戦う過密日程だ。無理すれば故障にもつながる。やはり、もう少し準備期間が欲しかった。

とはいえ、それはある程度予想できたこと。まじめな性格の選手だし、6月開幕のブラジルW杯に向け、これから徐々に調子を上げてくるだろう。

むしろ僕が気になるのは、フォルラン個人の状態よりも、チーム全体の状態。昨季までのセレッソは、しっかり守って、ボールを奪ったら素早く相手DFラインの裏を狙うカウンター主体のサッカーをやっていた。縦に速い柿谷を生かすサッカーだ。

ところが、今季からチームを率いるポポヴィッチ新監督は中盤でしっかりパスをつなぐサッカーに切り替えようとしていて、それがまだチームに浸透していない。

時間をかけてパスをつなげば、その間に相手の守備は整う。しかも、柿谷の1トップだった昨季と違い、今季はフォルランも最前線にいるので、柿谷が窮屈そうにプレーしている。

思い切ってフォルランの位置を下げてはどうか?

フォルランと周囲の連係など、時間が解決してくれる部分もあるだろう。ただ、個人的には、思い切ってフォルランの位置を下げてはどうかと思う。ボールに触る回数が増えればフォルランもリズムをつかめるし、相手の守備がフォルランに引っ張られれば、その裏にスペースが生まれて、柿谷もプレーしやすくなるはずだ。

フォルラン獲得はフロント主導で行なわれたもので、おそらくポポヴィッチ監督のリクエストではない。たとえるなら、冷蔵庫にある素材でピラフを作ろうとしていたら、突然、贈り物として高級なステーキ肉が届いたようなもの。そこでどんな料理を作るか、シェフ(監督)の腕の見せどころだ。

そのセレッソ以外では、僕はW杯メンバー23名入りに向けて、チームというよりも選手個人の猛アピールに期待していたんだけど、ここまで目につくのは川崎の大久保くらいだね。ゴールという結果を出しているのはもちろん、闘志をむき出しにしてプレーしているのが素晴らしい。いい意味で日本人にいないタイプだ。あとは鳥栖の豊田くらいかな。残された時間は少ないし、可能性は低いかもしれないけど、ほかの選手も最後まで諦めずにアピールしてほしいね。

開幕前の予想どおり、飛び抜けて強いチームは見当たらず、早くもだんご状態。今季も優勝争いは最後の最後までもつれそうだ。

(構成/渡辺達也)