12球団中11番目。遅まきながら、やっと阪神タイガースにもチアリーディングチームがお目見えすることとなった。その名も「タイガースガールズ」。応募者約200人から厳選された17人の精鋭たちだ。
彼女たちがデビューを果たしたのは地元開幕戦となる4月1日の中日戦。美脚を高く振り上げるラインダンスを披露してスタンドを悩殺したかと思えば、トラッキーもびっくりの華麗なバク転を決めて盛り上げるなど、その活躍ぶりはなかなかのもの。
虎ファンの反応も上々だ。
「超ミニであんなに高く脚を上げたりして、いや~、よかった! 自分の隣の席に怖い顔をしたおばちゃんがいなかったら、もっとデレ~っとした顔で見物できたんやけどなあ」(20代・男性)
「けっこうかわいいコがいてるんでビックリ。甲子園の人気者になると思うわ」(30代・男性)
スポーツ紙の虎番記者が、「タイガースガールズ」発足の経緯をこう説明する。
「2005年のリーグ優勝からもうすぐ10年。金本、赤星らV戦士が次々と引退してしまったのに、その穴を埋める若手のスター選手が出てこない。おかげで平均観客動員数も、5年前の約4万2000人から約3万8000人へと減ってしまった。そこでファンを楽しませて観客離れを食い止めようと、『タイガースガールズ』が結成されたというわけです」
なのに、そんな盛り上がりに水を差すようなつぶやきが……。
60代のある古参虎ファンが心配する。
「実は今から36年前の1978年、阪神はほかの球団に先駆け、プロ野球界初のチアリーディングチームを結成しているんです。ところが、このチームはたった1年活動しただけで、解散に追い込まれてしまった。今回の『タイガースガールズ』がその二の舞いにならなければいいんですが……」
チアガールは応援の華。その存在で選手もファンも活気づくはずなのに、どうしてわずか1年で解散になってしまったのか?
チアガールは縁起が悪い?
阪神OBで元監督の藤田平(たいら)氏に聞いてみた。
「理由はふたつ。ひとつは当時、まだ相撲の土俵と同じように、野球のグラウンドも女人禁制の聖なる場と見なすファンが圧倒的だった。そのため、チアガールの評判も芳(かんば)しくなかったんです。ふたつ目はチームの絶不調です。この年はチーム状態が最悪で、球団史上初の最下位に転落することに。すると、ファンから『のんきにチアガールが踊っている場合か』だの、『チアガールそのものが縁起悪い』といった批判が上がり、結局、1年で解散になったというわけです。ここ数年間で他球団がチアリーディングチームを次々と結成しているのに、阪神がなかなか腰を上げようとしなかったのは36年前の苦い体験がトラウマになっていたからなのでしょう」
確かに、この年のタイガースはろくでもなかった。成績は全球団に負け越しの41勝80敗9分で、勝率はわずか0・339。優勝したヤクルトに30・5ゲームもの大差をつけられるありさまだ。
虎ファン御用達の喫茶店「まる虎(こ)ぽーろ」(大阪市北区)の盛林文男マスターが、この年の阪神の負けっぷりをこう回想する。
「当時の後藤次男(つぐお)監督は甲子園近くの自宅から自転車で球場に通っていて、負けた後の帰り道はゲンを担いで別のルートで帰ることにしていた。ところが、あまりに負けが込みすぎて、とうとう最後には家に帰るルートがなくなってしもうたんや。有名な話やで」
その結果、虎ファンの怒りの矛先がチアガールに向き、チームは解散に追い込まれてしまった。つまり、虎ファンにとって阪神の絶不調とチアガールはワンセット。不吉な取り合わせなのだ。
そして、36年ぶりにチアガールが復活した今年、阪神ファンの悪い予感が再びうずき始めている。
「オープン戦は3勝10敗3分のブービー。シーズン開幕後もリーグのワースト失点記録を塗り替えるなど開幕ダッシュに失敗。おまけに、主力の西岡が味方選手と衝突して、試合中に救急車で搬送されるという凶事も起きた(肋骨[ろっこつ]骨折で長期離脱)。戦力的に見て、今季の阪神はBクラスどころか、最下位になってもおかしくない」(前出・虎番記者)
このままではシーズン後、再び虎ファンから「縁起の悪いチアガールは即解散!」なんて声が上がりかねない。
チアガールに罪はない。かれんな彼女たちの姿を来シーズンも拝めるよう、阪神ナインは奮起すべし!
(取材/ボールルーム)