欧州チャンピオンズリーグ(CL)のベスト4が出そろった。準決勝の組み合わせは、レアル・マドリード(スペイン)vsバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、アトレティコ・マドリード(スペイン)vsチェルシー(イングランド)。率直に言って、例年以上のワクワク感があるね。
その理由は、なんといっても古豪アトレティコの存在。実に40年ぶりとなる準決勝進出だ。今季はスペインリーグでも首位(第33節終了時点)。勢いは本物だよ。
選手の知名度や近年の実績でいえば、アトレティコはほかの“強豪”に見劣りする。ところが、決勝トーナメント1回戦で本田が所属するACミラン(イタリア)を一蹴すると、続く準々決勝でも優勝候補の一角、バルセロナ(スペイン)を見事な試合運びで倒した。 長年、同国のレアルとバルセロナの“二強”の後塵(こうじん)を拝してきただけに、サポーターの盛り上がり方もスゴかったね。たとえて言うなら、阪神が数十年ぶりに甲子園で優勝を決めたかのようなお祭り騒ぎだ。
今季開幕前にはエースのファルカオを引き抜かれるなど、ひとりで試合を決めるスーパースターはいない。その代わり、全員がよく走り、球際では激しく戦う。守備は鉄壁だ。そして、組織的なプレスでボールを奪うと一気にカウンターを仕掛ける。そうかと思えば、ピッチを幅広く使ってつなぐプレーもできる。相手をリスペクトしながらも、決して臆病なだけのサッカーはしないんだ。
チームをつくり上げたのは就任3年目、元アルゼンチン代表MFでクラブOBのシメオネ監督だ。
まるでシメオネが11人いるような感じ
シメオネといえば、1998年フランスW杯で、イングランドのベッカムを執拗(しつよう)にマークして、彼を退場に追い込んだ場面を覚えている人も多いだろう。飛び抜けた技術はないものの、したたかで、90分間ハードワークを厭(いと)わず、どんな相手にも果敢に立ち向かう。今のアトレティコを見ていると、そんな選手ばかりなんだよね。まるでシメオネが11人いるような感じだ。結果も出ているし、選手も監督の目指すサッカーに共感しているのだろう。プレーに迷いがなく、一体感を感じる。
準決勝のチェルシー戦もチャンスは十分ある。ここにきて優勝を意識して動きが固くなる可能性もあるけど、逆に言えば、失うものは何もないわけだから、思い切ってプレーしてほしい。
そして、決勝でレアルとのマドリード・ダービーが実現したら最高だね。CL史上初めてとなる決勝でのダービーマッチ。試合の舞台はリスボン(ポルトガル)だけど、当日のマドリードの街の雰囲気がどうなるのか。僕にも想像がつかない。チェルシーとバイエルンのファンには申し訳ないけど、世界のサッカーファン的にも一番盛り上がるカードじゃないかな。
最後に、そのアトレティコに負けたバルサについて。いよいよひとつの時代が終わったのかもしれない。長らくプレーしてきた主力選手が衰えを隠せなくなってきた。今季加入のネイマールが頑張っているものの、結局、メッシを徹底マークされると厳しくなる。大胆な世代交代を進めようにも、移籍ルール違反に伴うFIFA(国際サッカー連盟)からの移籍禁止処分(今夏と来冬)で補強には頼れない。来季以降、しばらく低迷期に入るかもしれないね。
(構成/渡辺達也)