2年前の夏、高校2年生ながら甲子園で奪三振記録を2年前の夏、高校2年生ながら甲子園で奪三振記録を樹立し、満を持して今季、楽天入りした松井裕樹(ゆうき)。キャンプ、オープン戦では150キロの速球と鋭く落ちる変化球を武器に、投げるたびに好結果を残し、辛口の星野仙一監督でさえ、

「文句のつけようがない。開幕投手だって冗談じゃなくなるぞ」

とベタ褒め。さすがに開幕はエースの則本(のりもと)に譲ったものの、当然のように先発ローテーション入りし、「ケガさえなければ新人王は当確」(スポーツ紙デスク)というほどの前評判だった。

ところが、いざ開幕すると3試合で15四球と、別人のようにコントロールが定まらない。3連敗の後、「次が最後のチャンス」(星野監督)と言われて臨んだ4月23日の西武戦も、なんと初回に押し出しを含む5四球……。一部報道で“ノーコン病”という厳しい見出しが躍るなど、周囲の評価もかなりグラついてきている。

やはり、いくら高校生相手に三振を奪えても、プロとしては実力が足りないのだろうか?

「というより、球団も星野監督も、彼にプレッシャーをかけすぎです(苦笑)。いくらスーパールーキーといっても、まだ高校を卒業したばかりの18歳。選手として“完成品”ではないんですから」(スポーツ紙・楽天担当記者)

何しろ楽天は、大エースとして君臨していた田中が昨オフにメジャーへ流出。いろんな意味で、その“穴埋め”に必死なのだ。

「戦力として、田中の穴を少しでも埋めてほしい。牽引(けんいん)役が抜けた投手陣の刺激剤にもなってほしい。活躍して観客動員にも貢献してほしい……。そんな思惑があるなか、松井はキャンプから抜群の投球を見せた。球団や首脳陣の期待感もどんどん膨れ上がっていきました」(楽天担当記者)

不調は決して“想定外”ではない

ただ、一方で現在の不調も決して“想定外”ではないという。

「理由は明らかにフォームの乱れです。キャンプでは誰もが褒めるいいフォームでしたが、オープン戦の後半からバランスが崩れ、リリースポイントがバラバラになってきた。そのため制球が定まらず、球速も落ちてしまっているんです。

本来なら実戦経験うんぬんの前に、早めに二軍へ落として下半身を鍛え直し、投げ込ませるべきだった。それなのに開幕ローテ入りしてしまったため、崩れたフォームのまま投げ続けざるを得なかったわけです」(楽天担当記者)

同情すべき点はまだある。松井は初登板からの3試合、コボスタ宮城、札幌ドーム、ヤフオクドームと、すべて違う球場の慣れないマウンドで投げた。特に札幌のマウンドは非常に硬く、「新人には荷が重い球場」(パ・リーグ某球団スコアラー)。しかも、この3試合で合計わずか4得点と、味方打線の援護もなし。これだけマイナス要素が重なり、監督から「ラストチャンス」と言われれば、ビビるなというほうがムチャだろう。

23日の登板後、星野監督は「もう一回、ピッチングのABCからやってもらう」と、ついに松井の二軍落ちを決断した。

「彼はとにかくマジメで、周囲にも気を配り、責任を背負うタイプ。だからこそ星野監督も気に入ったんですが、せめてもう少しワガママでヤンチャだったら、あれほどプレッシャーも感じずに済んだのかもしれません。

ただ、ここまでの投球にも光るものはあった。19回3分の1を投げて23奪三振と、かなりのハイペースで三振を取れているんです。フォームを戻して四球さえ減らせれば、十分に期待できると思います」(前出・スポーツ紙デスク)

今回の二軍落ちは、本来の姿を取り戻すためのいい機会。実力を疑う声を黙らせるためにも、頑張れ、スーパールーキー!

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