いよいよ5月12日のブラジルW杯代表メンバー23人の発表が迫ってきた。

ご存じのとおり、過去の大会ではメンバー入りをめぐり、事前の予想を裏切るドラマがいくつもあった。なかでも、1998年フランスW杯のカズ(三浦知良)、2002年日韓W杯の(中村)俊輔の落選には驚かされたよね。どんな理由があるにしても、その国のトップクラスの選手が外れるというのは世間に与えるインパクトが大きいし、なんとも言えない気分になる。

ブラジルでも、02年日韓W杯の際、人気選手であるロマーリオ(94年アメリカW杯のMVP)のメンバー入りをめぐり、大騒ぎになったことがある。ロマーリオは南米予選の後半で不調だったチームを救う活躍を見せ、ファンの期待も高まった。

ところが、本大会メンバーからは落選。運動量の少なさやわがままな性格が問題視されたんだ。本人は会見で号泣し、当時の大統領もコメントを出すなど物議を醸した。それでも、賛否両論があったなかロマーリオを外す決断をして、本大会で優勝という結果をきっちり残したスコラーリ監督は見事だったね。

もっとも、今回の日本代表のメンバー発表でサプライズが起こる可能性は少ないだろう。ザッケローニ監督が就任してから約3年半、その間の選手選考、起用法を見れば、主力選手に対する監督の信頼は相当に厚い。香川、柿谷、遠藤など所属クラブで調子を落としている選手も多いけど、最後の最後であっと驚くようなメンバーの入れ替えをするとは考えにくい。

波乱が起こるのは、ケガをしている選手たちの回復が遅れた場合

波乱が起こるとすれば、長谷部、内田、吉田らケガをしている選手たちの回復が遅れた場合だろう。日本の現実的な目標は決勝トーナメント進出。それを叶えるためには、初戦(6月14日のコートジボワール戦)の結果が重要な意味を持つ。その初戦にベストコンディションで臨めない選手は、メンバーから外すべきだ。戦力として計算できない選手をベンチに入れるわけにはいかないからね。そこは情を抜きにしたシビアな判断が求められる。

ちなみに、コートジボワールのヤヤ・トゥーレ、コロンビアのファルカオなど日本の対戦国にも、ケガで本大会に間に合うかどうか微妙な主力選手がいる。ただ、上位進出を目指す強豪国の場合、決勝トーナメント以降を見据えたメンバー選考をするケースも多い。仮に彼らが初戦に間に合わない状態だったとしても、メンバー落ちはしないかもしれない。

日本のメンバーについての希望を言えば、ぜひ大久保を選んでほしい。ザッケローニ監督が長らく招集していないことから、メディアは彼を“サプライズ候補”扱いしているけど、今の充実ぶりを見れば、大久保をW杯に連れていくのは当然の選択だ。サプライズでもなんでもない。昨季の国内リーグ得点王で、今季も順調にゴールを重ねている。そんな選手を代表に選ばないなんて、ブラジルなら大騒ぎだ。

動きがキレていて、結果も出している。スタメンでも途中出場でも、ワントップでも2列目の左サイドでも持ち味を発揮できる。守備の面では香川や清武よりも計算できる。何よりもW杯のような大舞台では、彼のように“ケンカのできる”選手が絶対に必要。同じく気持ちで戦う岡崎とのコンビで前線をかき回してくれたら、何かが起こるかもしれないという期待を持てるんだけどね。

(構成/渡辺達也)