6月開幕のブラジルW杯での活躍が期待されるセレッソ大阪のストライカー、柿谷曜一朗(24歳)がさえない。
昨季はJリーグで得点ランク3位となる21得点をたたき出したのに、今年は第10節終了時点で無得点という低空飛行ぶりだ。
いったい、柿谷に何が起きているのか? 週プレは“セレ女”と呼ばれる女性ファンの声を聞くべく、セレッソの練習場を訪れた。
この日は主力選手たちが海外遠征中で不在とあって、女性ファンの数も10人ほど。いつもと違って超少数だ。だが、遠征メンバー以外の練習もしっかりチェックするコアなセレ女だけあって、その分析は鋭かった。
「昨季の曜ちゃんは『がむしゃらボーイ』って感じで、必死にゴールを目指していた。サッカーが楽しくてたまらんという感じ。でも、今季は違う。プレーが妙にオトナになってしまったという印象です」(専門学校生・Aさん)
なぜ、そんなことになってしまったのか?
セレ女たちが挙げた柿谷不調の原因はふたつ。
ひとつは今季から指揮を執るポポヴィッチ監督の采配。そして、もうひとつは、なんとフォルランの存在だというのだ。
ウルグアイ代表のFWフォルランは2010年南アフリカW杯の得点王&MVP。今季、セレッソが推定6億円の年俸をはたいて獲得した超大物選手だ。
「フォルランがあかん。もうええ年齢(34歳)のせいか、どうにも運動量が少ない。ゴール前でじっとしてる。その分、同じFWの曜ちゃんが下がって守備したり、ボールをつないだりするプレーをしてるから、点を取れんのも当然やわ」(Aさん)
「昨季は最後に決めるのは曜一朗とチーム内で意思統一できていた。でも、今季はフォルランがべったりとゴール前にいる。超大物だけに、ほかの選手たちもまずはフォルランにボールを出そうという流れになっている。それでフォルランがゴールを決めてくれたらええんやけど、けっこう外すからたまらん(苦笑)。曜一朗にしたら、ボールが来んわ、点は取れんわで、踏んだり蹴ったりの状況やと思う」(大学生・Bさん)
“6億円の置物”と呼ばれるフォルラン
こうした声について、スポーツ紙のセレッソ担当記者は「おおむね正しい」とうなずく。
「柿谷の調子自体は決して悪くない。なのに、得点ゼロなのは、昨季とはチームでの役割やポジションが大きく様変わりしたためでしょう。今季のセレッソはフォルラン、柿谷のツートップ布陣なのですが、実際にはフォルランがゴール前に陣取り、柿谷はその後方で守備をしたり、ボールをつなぐシーンが目立つ。つまり、実質的にはフォルランのワントップで、柿谷は1.5列目の攻撃的MF役を務めているのです」
そして、セレ女の指摘どおり、ポポヴィッチ新監督の采配も、柿谷不振の一因となっている。
昨季のセレッソはしっかり守り、ボールを奪ったら、すぐさま相手DFの裏側を狙うカウンターサッカーに徹してきた。この戦術が、トラップが巧みで縦に速い柿谷とマッチし、柿谷はゴールを量産することができた。
「ところが、ポポヴィッチ監督の理想は中盤でしっかりパスをつなぐ、全員攻撃全員守備のサッカー。しかし、フォルランはゴール前でひたすら得点だけを狙い、ほとんど動かない。なのに、ポポヴィッチ監督はフォルランを外さない」(スポーツ紙記者)
心配なのは、柿谷がこのままの調子だと、ブラジルW杯を戦う日本代表にも悪影響が及びかねないという点だ。
「ストライカーに大切なのは、好機への“嗅覚”。得点に絡めない今の状況が続けば、せっかく日本代表メンバー23人に選ばれても、本番で活躍できるかどうか、危ぶまれます」(スポーツ紙記者)
前出の大学生・Bさんがこう話す。
「夏まで待てば、フォルランのコンディションも上がって、曜一朗とフォルランの関係も噛(か)み合うようになるかも……。って、そのときにはブラジルW杯は終わってしまっているんやけど!」
昨季のように柿谷ワントップの布陣に戻し、運動量の少ないフォルランは当面、スーパーサブとして起用する。セレッソはそんな選択も考えてみるべきかも。
(取材/ボールルーム)