2015年から新型ターボエンジンをマクラーレンに供給することで、エンジンサプライヤーとしてF1にカムバックするホンダ。

「マクラーレン・ホンダ」といえば日本に空前のF1ブームを巻き起こした「ホンダ最強伝説」を象徴する存在であり、復活のニュースに心躍らせた往年のF1ファンも多かったに違いない。しかし、その道のりはかなり厳しいようだ。

あるイギリス人ジャーナリストが語る。

「ホンダのエンジン開発が大幅に遅れているというのは、F1のパドックでも公然のウワサとなっているよ。その状況にマクラーレン側は頭を抱えているらしい」

今シーズンから導入された新しいF1エンジン規定は、1.6LのV6ターボ。これにブレーキング時の運動エネルギー回生と、熱エネルギー回生で得た電気で駆動する電気モーターを組み合わせた、一種のハイブリッドエンジンだ。

これが相当にやかいなシロモノだったようで、今季、エンジンを供給しているメルセデス、ルノー、フェラーリの3社のうち、開幕前に新エンジンをモノにできたのはメルセデスだけ。昨年の王者、ルノーですらトラブル続出で、テストすらまともに走れない状況に苦しんでいた。

「F1の新しいエンジン規定は、正直、自動車メーカーの想像を超えるほど複雑なシロモノです。そのため、自社開発にこだわったルノーとフェラーリは大苦戦。メルセデスがなんとかそれをモノにできたのは、アウディのル・マン24時間レース用マシンにハイブリッド技術を供給しているウイリアムズの子会社に開発協力を委託したからですよ」

こう語るのは、名前の一部を伏せることを条件に登場してくれた元F1ドライバーのタ●・イノウエ氏。

マクラーレン・ホンダは3年くらい勝負にならない?

「ホンダのエンジン開発がかなり遅れているというウワサは僕も確かに聞いています。当然、マクラーレンはかなり焦っていて、今年の1月、マクラーレンのCEOでチーム代表でもあったマーティン・ウィットマーシュが突然解任されたのも、ちゃんとリサーチせずにホンダと契約した責任を取らされたからのようです」(タ●氏)

ホンダは今年1月、栃木県さくら市にF1エンジン開発の新拠点を構え、イギリスの「前線基地」も6月の稼働を目指しているが、エンジン本体の開発は予定どおりには進んでおらず、なんと、肝心のエネルギー回生システム開発をパートナーのマクラーレンに事実上「丸投げ」してしまったというウワサも聞こえてきた。

F1参戦の大義名分である「エネルギー回生」をホンダが自前でやらないというのがホントなら「ちょっとなぁ……」というのが正直な気持ち。だがマクラーレンとしても、この状況をただ、指をくわえて見ているわけにはいかないのだろう。

何しろ、メルセデスという今シーズン最強のエンジンを捨てて、来年からはホンダエンジンに替えなくてはいけないのだ。しかも、メルセデス、ルノー、フェラーリの3社が今年1年、実戦で経験とデータを積み重ねられるのに対して、ホンダは1年目。ライバルたちと同等に戦えるという保証はどこにもない。

「正直、マクラーレン・ホンダは3年ぐらい勝負にならないだろう……という見方が一般的になっています。実は今、マクラーレンが必死にフェルナンド・アロンソを獲得しようとしているんですが、さすがのアロンソもそれを理由に移籍を躊躇(ちゅうちょ)しているみたいですね」(タ●氏)

1988年から1992年までの5シーズンで通算44勝をマークし、ドライバーズ&コンストラクターズ王座獲得4回という圧倒的な強さを誇った「マクラーレン・ホンダ」。栄光の日々が復活する日をファンは待ち望んでいる。

■週刊プレイボーイ21号「マクラーレンが日本人ドライバー?の怪情報を追う!!」より