わかっていたけど、あらためて驚いた。日本代表のW杯メンバー23人発表以降の、世間のサッカーへの関心の高まりはすごいものがあるね。

普段はサッカーなんて見向きもしないテレビのワイドショーやバラエティ番組まで代表の話題を取り上げている。いかにも熱しやすく冷めやすい日本人らしいなと思うし、W杯後の反動が恐ろしくもあるけど、代表の頑張りによってひとりでもサッカーを好きになってくれる人が増えるといいね。

さて、その日本代表が国内最後の試合となるキプロス戦(5月27日・埼玉)を迎える。いわゆる壮行試合だ。

そこで思い出すのは4年前のこと。南アフリカW杯直前、やはり日本は国内で壮行試合を行ない、韓国相手に0-2で惨敗した。アジアのライバルに点差以上の力の差を見せつけられ、満員の埼玉スタジアムは静まり返った。その後、当時の岡田監督はそれまで継続して取り組んできた攻撃サッカーをあきらめ、極端な守備サッカーに方向転換したんだ。よくも悪くも、あの壮行試合は重大なターニングポイントになった。

とはいえ、今回は4年前のような事態が起こる可能性は限りなく低い。相手のキプロスはFIFAランキング130位と格下。この一戦にかけるモチベーションも特にない。おそらく観光気分で来日している。勝つのは当たり前の相手だ。

それでも日本にとって重要な試合であることには変わりないし、結果はもちろん、内容も求めたい。いいサッカーをして、活躍すべき人が活躍して、ファンを安心させてほしいね。

大久保はワントップで起用してほしい

具体的な注目ポイントはふたつ。ひとつは故障を抱えていた主力選手のコンディションがどこまで戻っているか。具体的には長谷部、内田、吉田の3人がW杯初戦に100パーセントの状態で臨めるか。その見極めだ。スタメンで起用し、後半途中まで運動量を落とさずに以前のようなプレーができれば合格。もし、それが難しいようなら、今後のスタメン入れ替えも考えるべきだろう。

もうひとつはサプライズ選出した大久保の起用法だ。調子のいい彼が、今の代表に入ってどこまでできるのか。その可能性を確かめる貴重な機会だ。だからこそスタメンで、できればワントップで起用してほしいね。もし途中出場だとしても、それなりの出場時間を与えるべきだ。

逆にもし大久保を1分も使わないで、Jリーグで不調の柿谷を先発させて引っ張るようなら、W杯本番でも大久保の出番は期待できない。つまり、ザッケローニ監督は彼を“客寄せパンダ”として利用しただけということになる。 壮行試合で相手も弱い。日本が早い時間帯にポンポンと得点を奪ったら、その後は緊張感に欠け、埼玉スタジアムはまるでアイドルのコンサートみたいな雰囲気になってしまうだろう。

仕方のない部分もあるし、それを全否定するつもりもないけど、たとえ勝っていても、内容が悪ければブーイングをするサポーターもいていい。そういう厳しい声も愛情表現のひとつの形だからだ。みんながみんな、「頑張れ、頑張れ」と甘やかすだけではチームのためにならないし、何よりW杯はそんな甘い気持ちで勝てるような大会ではない。だから、僕はこのキプロス戦もいつもどおり厳しい目で見守るつもりだよ。

(構成/渡辺達也)