日本サッカー協会(JFA)とアディダス ジャパン社(アディダス)との、日本代表オフィシャルサプライヤー契約の延長をめぐる交渉が破談になった、と一部メディアが報じた。
アディダスとJFAとの間には現在、2015年3月末までの8年間で総額160億円という契約が結ばれている。この間、各カテゴリーの日本代表が使用するユニフォームをはじめとした用具はアディダスが提供し、その代わりアディダスはユニフォームの市販化など、代表グッズでビジネスを行なえる。しかし、現行契約が来年満了するのを控え、優先交渉権を持つアディダスが、23年までの契約延長に向けてJFAと話し合いを重ねてきたものの、期限までに交渉がまとまらなかったのだという。
確認のため、JFAの広報に報道の真偽について聞いてみたのだが、「こちらでは何も発表していません」との返答。だが、破談はどうやら事実らしい。スポーツ紙日本代表番記者のA氏が言う。
「JFAが、かなり強気に契約金をつり上げたようです。今や代表ユニフォームや関連グッズなどの販売はビッグビジネスだし、各媒体を通じた代表選手の露出によって、計り知れない広告宣伝効果もある。JFAはそれを知っているからこそ、前回を上回る莫大(ばくだい)な金額をふっかけたのですが、さすがのアディダスも『そこまでの額は……』と二の足を踏んだようです」
今後は、交渉を希望する全メーカーに門戸が開かれる。そして、どうやらアディダスに代わってオフィシャルサプライヤー契約を結ぼうと、猛アタックしているメーカーがあるらしい。スポーツ用品業界関係者のB氏が語る。
「ナイキです。彼らは超有名選手、チームとの契約を次々に結び、派手なイメージ戦略を展開したおかげで、サッカーの分野でも各国でどんどんシェアを拡大してきました。しかし、世界有数の巨大マーケットである日本においては、彼らが期待するほど伸びていない。というのも、日本代表人気のおかげで『サッカー=アディダス』のイメージががっちり出来上がっていて、ずっとアディダスの後塵を拝しているのです。この状況を打破すべく、ナイキは威信をかけて、契約締結に動いています」
何しろ世界最大手、カネならある。現にナイキは、フランスサッカー協会に従来の5倍の契約金を提示し、11年以降のサプライヤーの座をアディダスから奪い取った実績を持っているのだ。
アディダスが急転直下の契約更新も?
そうすると、間近に迫ったブラジルW杯がアディダスのユニフォームで臨む日本代表最後の大舞台? つい先日なでしこジャパンが出場を決めた来年夏のカナダ女子W杯では、彼女たちの胸に“スウッシュ”マークが躍ってそうだってこと?
ところが、アディダスが急転直下の契約更新という目もまだ大いにあるのだという。
「彼らは、日本でのサッカー人気がさほど高くない頃から、JFAとサプライヤー契約を結んできました。当時は、JFAのほうが『契約してくれるだけでありがたい』という立場。そんな苦しい時代を支えてくれたアディダスに対する恩義やシンパシーを、特に古参幹部たちは強く感じています。サッカー人気確立後ですが、かつてサプライヤー契約の更新時、ナイキがJFAに札束攻勢を仕掛け、ほぼ合意したことがあります。しかし、上層部からの鶴のひと声で、結局アディダスとの契約が延長されたのです」(前出・A氏)
「最終的には今回もお偉方の意向が働き、アディダスの側も当初の提示額に何割か上乗せした形で、双方の話がまとまるんじゃないでしょうか」(前出・B氏)
結局、ナイキは今回もただの当て馬になりそうってこと?